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柔軟でありたいとは思う

角がなく緩やかなカーブを描く、
まるでふくらはぎの中に入っていたかのような
オオクワガタと似た平坦の良さを感じる
ただの石がそこにあった。

これは辞職した先輩の机に長く置かれていたもので、いつの間にか手元にあった。
深みがあると、時の経過とともに
愛着は増加傾向にある。
掴んでも掴みきれず、
ちょっと掴んだ気になると
たちまち離したくなくなる。

インテリアという業界でほぼ10年働いた。
自分に合ってないと思っていたが、
歳をとるごとに型に合わさるように
体と頭が少しずつ変わっていく。
興味という熱にやられると柔らかくなり、
より型に収まりやすくなる。
熱されれば情報や技術の浸透は凄まじく、
逆に冷えて固まれば、
他を寄せ付けず、立ち尽くすのみだ。

欠片と呼ぶべきゴツゴツしたそれは、
重力に身を委ねて崖を転がりながら、
鋭利な部分を連続的に折り、
止まったところで川に洗われ、
気が付けば温かい手の中にあった。
強く放たれたそれは回転力の熱を得て、
洗われ続けた激流に初めて
抵抗するように跳ねた。
そしてまた重力に従って、
沈んでゆく。

このまま抵抗しなくていいのか、
崖から転がる時も葛藤していたが、
結局そのまま行き着くとこまで行き着いて、
あの時の回転力をどうやって得るか考えている。
いっそ粉々になって宙を巻いたいと思うほど、
軸のない意志無し男である。

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