紫色から始まる~エピローグ③

保美江「どう? 私の作品は?」

いつの間にか保美江さんが私達のそばに立って、満足げにナム子達を見つめている。

保美江「うんうん、あの生地とラインにして正解。二人とも本当に良く似合ってる。着る人が輝いて、初めて服は活きるのよ。ああ、嬉しすぎて私泣いてしまいそう」

「ほら、保美江さん泣かないで」

そう言って白いハンカチを差し出したのは、

ユンジ「……テテちゃん?!」

テテ「ヌナ、お久しぶり」

ユンジ「うわぁ、背が伸びてる……え、ジンに追い付きそう」

ジン「もう追い抜かれたよ……ん? いつから保美江さんって呼ぶようになったの?」

テテ「こないだの誕生日。ボクは嫌だって言ったんだけど、そんな大きな体で『ママ』って言うのは格好悪いから、って言われて」

保美江「当たり前でしょ。自分の息子達には、格好良い男でいて欲しいんだもの」

テテ「ママって呼ぶのが格好悪いの?」

保美江「格好良くないでしょ。母親を『ママ』って呼んでる男は、いつまでも親離れが出来なくて、モテなさそうだもの」

テテ「モテてるけど」

保美江「本当にモテるのはこれから。ちゃんと一人で生きていけるようにならないと、大切な人が出来てからじゃ遅いのよ。今のうちから訓練をしなくちゃ。その第一歩が、私の名前呼びよ」

テテ「……」

分かったような分からないような、何とも言えない顔でジンの顔を見るテテ君。

出会った頃の天使の面影を残しながら、大人の入口に立とうとしている彼を、もうテテちゃんとは呼べないな。

イチゴジュースを見つけて目を輝かせるその顔は、あの頃と何も変わらないのだけれど。

保美江「そのワンピース、よく似合ってるわ」

保美江さんが爪先から顔までじっくりと眺めて、満足そうに呟いた。

ユンジ「ありがとうございます。ジミンに勧められて、一目で気に入ったんです」

保美江「こちらこそありがとう。おめでたい席に着てきてくれて、本当に嬉しいわ。その子(服)も喜んでる……ジンはちゃんと暮らせているかしら。あなたに負担をかけてない?」

ユンジ「負担なんて……いつも助けられてます」

保美江「自分の趣味に夢中になると周りが見えなくなる時があったから、そこが心配だったんだけど、大丈夫かしらね」

ユンジ「大丈夫です。彼と一緒にいると心地よくて落ち着きます。ずっとこのまま一緒にいたいです」

保美江「……ありがとう。これからもジンをよろしくね。ああ、今日は嬉しい事がいっぱいで、本当に涙が出そうだわ」

保美江さんの睫毛にじわりと涙が滲む。

「ハニー、泣かないで。せっかくの美人が台無しだよ」

さっきまで主役二人にピッタリ付いて写真を撮っていたジョングクさんが、いつの間にか保美江さんの隣に立っていた。

ユンジ「ジョングクさん、お久しぶりです」

ジョングク「ユンジちゃんお久しぶり。ジンとは上手くやってる?」

ユンジ「はい」

ジョングク「うんうん、幸せそうな顔してる」

え?!

ジョングク「ジンの事になると、全部顔に出るよね」

それ昔ナム子にも言われたような……。

「おっと時間だ。ハニー行くよ、仲人は忙しいね」

そう言って、保美江さんの手を引いて行ってしまった。

相変わらずパワフルな人達だ。

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