紫色から始まるⅡ②

……?

顔に息が吹きかかる。

薄く目を開けると、目の前に小さな男の子の顔があった。

?!

私と目が合うと嬉しそうな顔をして「きゃー!」と言いながら走って行ってしまった。

……? あの子誰?

え?! ここどこ?!

起き上がって見渡してみるとリビングのようで、天井が高く、日差しが気持ち良く差し込んでいる。

私が寝ていたソファはフカフカで、上に毛布をかけてくれていた。

「ジンにょー(兄)、ねむり姫おきたー!」

「そうかー眠り姫起きたかー」

ドアの外からジン君とさっきの男の子らしき声が聞こえ、開いたドアから、男の子を抱っこしたジン君と、もう一人男の人が入ってきた。

ジン「目、覚めた?」

ユンジ「うん……ここ、もしかしてジン君の家?」

ジン「うん」

男の子「あのねあのね、お姉ちゃんおきなかったの。ねむり姫だったの!」

ジン「そうだねぇ。ヤー、どうしようかと思ったんだけど、ユンジちゃんぐっすり眠ってたから、家に連れてきたんだ。勝手にごめん」

ユンジ「あー……ううん、迷惑かけてごめんなさい」

抱っこされていた男の子がツルツルっと床に降りてきて、

「まだねてなきゃダメですよー! ほらほら!」

と、小さな手で毛布をかけようとしてくれてる。

黒目がちのクリクリした目が可愛い。

ジン「眠り姫が起きたら何をするんだっけ?」

男の子「ゴアイサツ!」

ジン「じゃあ、して」

男の子「テテです!」

ジン「歳は?」

テテ「よんさい!」

ジン「良く出来ました……弟なんだ」

ユンジ「弟?! ずいぶん年離れてるのね」

ジン「うん」

フワフワの茶色い髪の毛を、ジン君からよしよしされて、嬉しそうな顔で笑うテテちゃん。

白い肌に薔薇色の頬、キラキラした黒い目。

可愛い。

天使みたい、ってこういう子の事言うのかしら。

ぼんやりとテテちゃんに見とれていると、目の前のテーブルにグラスが置かれた。

男の人「気分はどうですか?」

ユンジ「あ……だいぶ良くなりました。ご迷惑をお掛けして本当にすみません」

男の人「気にしないで。ずっと家にいたし、テテとお出かけしたいねって話してて……お水飲んで下さいね」

心配そうな目をして私を見ている、この人は……?

ユンジ「ありがとうございます……あ、ジン君と同じ高校のユンジです」

男の人「ジンの父親のジョングクです」

父親?!

思わずジン君を見ると、首を縦に振った。

ジョングク「もちろん義理だけど……二人の母親と再婚したので」

義理のお父さん……それにしても若くない?

私たちとそんなに年が離れてない気がする。

ユンジ「あの、お年を聞いても……?」

ジョングク「25歳」

25歳?! 本当にそんなに変わらない。

ビックリする私の顔を見て、ジョングクさんが笑いながら言った。

ジョングク「父親っぽくないよね」

ジン「3人で歩いてると、ヒョン(兄)に間違えられる」

ユンジ「えーと、じゃあ、テテちゃんの、パパ……?」

ジョングク「ではないけど」

話している間にも、テテちゃんがジョングクさんによじ登り始め、ジョングクさんが慣れた手付きで、テテちゃんの背中を片手で支えている。

それをニコニコと笑いながら、優しい目で見ているジン君。

複雑……でも、仲は良さそう。

グク「さて、目が覚めて安心したし、オレは仕事に戻るよ。テテをよろしく」

ジン「うん。テテ、こっちおいで」

テテ「やだっ。パパと遊ぶ!」

ジン「ダメだよテテ、グクさんお仕事するって。ヒョンと遊ぼう」

テテ「やだっ、パパとチョモランマごっこする!」

ジョングクさんが困ったように笑いながらも、嬉しそうな顔をしている。

本当にテテちゃんの事が可愛くて仕方ないみたいだ。

ジン「えー遊んでくれないとヒョン泣いちゃうぞー、えーんえーん」

テテ「ヒョンうそなきー」

ジン「バレたか」

テテ「かわいそうだから、あそんであげてもいいよぅ」

ジン「よーし、何して遊ぶ?」

グク「ゆっくり休んで下さい。ジン、帰りも送っていくから、声かけて」

ジン君がテテちゃんと遊びながら、グクさんに向かってOKサインを出した。

テテ「お姉ちゃんもあそぼう!」

ジン「テテ、お姉ちゃん起きたばっかりだから、絵本を読んであげようよ」

テテちゃんがパァッと目を輝かせて走っていったかと思うと、何冊かの絵本を大事そうに抱えて戻ってきた。

テテ「うーんと、どれ? これは『地球の戦士クルミ』、これは『ハンガダク(一本の毛)』で、こっちが『心スプーン一杯』……うーん……」

私のために一生懸命絵本を選んでくれているのを微笑ましく見ていると、突然、質問をされた。

テテ「お姉ちゃん、おなまえは?」

ユンジ「名前? ユ、ン、ジ」

テテ「ユン……? ユンちゃん? ユンちゃん! じゃあ、ユンちゃんには『心スプーン一杯』よんであげる!」

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