紫色から始まるⅡ⑯
窓から入ってくる風が、微かに金木犀の香りを運んでくる。
良い匂い、しばらく香りを楽しめそう……。
教室で帰り支度をしていると、先に帰ったはずのナム子とジミンが息を切らして飛び込んできた。
ナム子「ユ、ユン……ジ、あ、あのね、エホッゴホゴホッ……落ち着いて」
ユンジ「落ち着いてるよ。どうしたの?」
ナム子「あ、あのね……」
ユンジ「はい水。ゆっくり飲むのよ」
ジミン「ナム子水飲んでる場合じゃないって!」
ナム子「ジミンも飲んで」
ジミン「え? ああありがと」
ナム子「ユンジ、驚かないで聞いて」
ユンジ「うん」
ナム子「ジン君が救急車で運ばれたって」
ユンジ「何で?!」
ナム子「分からない。でもジョングクさんが教えてくれたから間違いないよ」
脚が重い。
息が苦しくて空気が上手く吸い込めない。
ナム子から病院を聞いて、ずっと走りっぱなしだ。
何で私は走ってるんだろう。
頭や背中にいくつも汗が伝う。
脚が上がらない。
私の脚、もっと早く走って!
気持ちだけが先に走っていく。
早く、ジン君のところに。
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