紫色から始まるⅡ⑤
インターフォンを鳴らすと、扉の向こうからテテちゃんが走ってくる足音と、ジョングクさんが追いかける声が聞こえた。
テテ「ユンちゃん来たー!」
テテちゃんが目を輝かせて飛びついてきた。
ユンジ「テテちゃん、こんにちは」
ジョングク「ユンジちゃん、いらっしゃい。テテ、『こんにちは』は?」
テテ「こんにちは!」
ジミン・ナム子「初めまして、こんにちは」
テテ「こんにちは!」
ナム子もジミンも、可愛いテテちゃんを見て頬が綻んでいる。
ジョングク「いらっしゃい、どうぞ」
テテちゃんが私の手を引っ張って、奥に連れて行ってくれた。
リビングの壁に、紫色のバルーンで『HAPPY BIRTHDAY』と飾り付けられ、生花があちこちに活けられている。
ナム子「うわぁ凄い! お花の良い匂い!」
ジミン「可愛いな!」
テテ「パパとヒョンがやったの、凄いでしょ?!」
ユンジ「この飾り付けを二人で? 凄いね」
ジン「僕は荷物運んだくらいだよ。ほとんどグクさんがやったんだ」
ジョングク「前にフラワーアレンジメントやってたから」
ニコニコと笑いながら私たちの様子を見ているジョングクさんに、テテちゃんがよじ登ろうとしている。
テテ「ママは?! まだっ?!」
ジョングク「もうすぐ着くって言ってたから、もうちょっとね。ジン、炭に火を点けてくれる?」
ジン「了解」
ジミン「俺も手伝うよ」
男子二人がリビングの窓から外に出て、バーベキューセットの前で動き始めた。
ユンジ「私たちも何かお手伝いします」
グク「うーん……もう特にないから、ジュースでも飲んで寛いでて。申し訳ないけど、冷蔵庫から自分で出してくれる?」
ユンジ「あ、頂きます」
テテ「ボクも飲む!」
ユンジ「テテちゃん、コップで良いの?」
テテ「うん!」
ナム子「ジミン達にも持っていこうか」
ユンジ「そうね」
庭へ続く窓を開けると、さぁっと風が通って、緑の濃い香りを運んだ。
家の周りを囲む大きな木が陽射しを遮って、男子二人のいるところに影を作り出している。
ジミン「おっ、サンキュー」
二人とも水滴の付いたコップを受け取ると、一気に飲み干した。
ジン「ヤー、さすがに火の傍は暑いなー」
バーベキューの炭に、少しづつ赤い火が点き始めている。
ナム子「ねぇジン君、お父さんホントに若いね、ビックリした」
二人を誘った時に、ジョングクさんの事は話してあった。
ジミン「俺もビックリした」
ジン「そうだね。ユンジちゃんにも言ったけど、並んで歩くとヒョンと間違えられるよ」
ナム子「しかもイケメン」
ジミン「ちょっと!」
ナム子「え?」
ジミン「そういう事言わないで」
ジミンが怒ったような声で言って、顔を背けた。
え?
ユンジ「ジミン、もしかして妬いてるの?」
ジミン「! いやっ、んーいやぁ、そんなんじゃないけど」
ナム子「! 焼きもち妬いてくれるの?」
顔を見合わせたジミンとナム子の顔があっという間に赤くなって、二人とも下を向いてしまった。
ジン君が、手にしたうちわで口元を隠して、目だけで二人を交互に見ている。
こっちが照れるじゃないの、もーやーあぁ!
木の向こうから門扉が開く音が聞こえて、エンジン音が近づいてきた。
「ママだぁ!!」
隣でジュースを飲んでいたテテちゃんが、玄関に向かって勢いよく走っていく。
続いてジョングクさんも。
ジン「出迎えてくるね」
そう言うと、リビングを通って玄関へと出て行った。
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