Rord to モノローグ 20231219

昨日の夜はあまりにも疲れてしまって、稽古をせずに家でゆっくりすることにした。
推しの動画を見てゲームして、寝た。

朝方、うっすら意識のある時に、その人はやってきた。

『花子の命は実子の命』

黒い足のシルエットだけ見えるその人の声が頭に響いた。
そのとたんに、体感できていなかった花子への感情が、丹田に降りてきた。

そう、花子の命は実子の命。
一つの心臓を共有する双子のようなもの。
今の花子が消えてしまったら、実子は生きていけない。
悲しみとかではない。
自分の皮膚を剥がされて平気な人はいない。
そうされそうになったら、誰だって阻止しようとする。

花子を失っても、画家として生きれば良いじゃないか、と言われるかもしれない。
そんな単純じゃない。
実子が本気で魂を込めて描けるのは、もう花子しかいない。
キャンバスに、花子の魂と自分の魂を、命を削るように描くのだ。
画家としての幸福感。
花子以外の絵を描く事に喜びを感じられない。
画家としての幸福もまた、花子が握っている。
自分の人生をかけた絵。

人生の幸福。
画家としての幸福。
花子が正気にかえる事で、どちらも奪われる。

生きていられない。
だから。
『死ねばいいのよ』
花子さんが消えてしまうなら、私の魂も消えてしまうのだから。

全身全霊の愛し方。
芸術家の持っている思い込みの強さ。
自分の理想や思想を追求し、自分以外の理由でそれが叶えられない時、死を選ぶ。

実子は、三島由紀夫だ。

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