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オンライン申請も義務化を

自治体システムの標準化については、かねてより噂されていたとおり、新法を制定して義務化するとの報道がありました。

さて、行政手続きのオンライン化については、以前にも記事を書きました。

このときはオンライン申請だけではなく、窓口のデジタル化にもしっかり取り組もうね、という趣旨でしたが、そもそも自治体におけるオンライン申請は本当に普及していくのでしょうか。
オンライン申請の義務付けは、昨年施行されたデジタル手続法によって規定されています。

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デジタル手続法では、国の行政手続きについては義務化されましたが、自治体は努力義務とされました。
ある関係者の方は、努力義務とはやらなくてもいいというものではなく、やらないのであればその理由を説明する義務がある、と仰ってました。
私はこの解釈を支持しますが、とはいえ努力義務のままでオンライン申請は普及するのでしょうか。

オンライン申請を躊躇する理由

理由は簡単です。今のやり方を変えたくないからです。
役所は営利を追求する企業ではありませんから、ユーザーエクスペリエンスに対してはものすごく鈍感です。アンケートひとつ取ったことないのに、自分の経験だけで「そんな要望は聞いたことがない」と平然と言い放つのが役所です。
なので「周りの町が始めたから」「議会で追求されたから」といった受け身の理由でなければ、今現在滞りなく動いているやり方を変えようと思うことは、稀なことなのです。

死の谷

理由はもうひとつあります。「死の谷」です。

死の⾕:デジタル化率が30%程度までは、⾏政事務の効率がかえって低下すること。複数の事務で観察されている。死の⾕を超えると効率が⼤きく向上するが、⾕の越え⽅は事務の深い理解が必要。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/kaizen_wg/dai1/siryou3.pdf

今のやり方を変えるだけではなく、場合によっては事務効率の低下を招くかもしれないのです。これではますますやらない方向へと向いてしまいます。

義務付けと地方自治

冒頭のニュースの少し前に公開された、デジタル改革関連法案ワーキンググループ作業部会のとりまとめには、次のように記載されています。

③ このような技術の進展を背景に、デジタル庁において、安全かつ効率的に、国、地方公共団体等の相互の連携を確保するための基盤(クラウドを基盤としたプラットフォーム)を構築することを検討している。
④ ③については、①cの「全国的な規模で又は全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施」に該当すると解されることから、国が策定する基本的な方針に、
・ 国、地方公共団体等の相互の連携を確保するための基盤の構築
・ その前提となる地方公共団体の情報システムの標準化・共通化やクラウド利用の促進等を記載することは許容されると考えられる。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/houan_wg/dai4/siryou2.pdf

つまり、自治体システムの標準化を義務付けることは、地方自治の本旨に沿ったものだと解釈できるというのです。
であるならば、国民の利便性向上と行政の効率化に寄与するであろうオンライン申請を義務付けることも、同様の解釈ができるのではないでしょうか。

オンライン申請の義務化がもたらすもの

ひとつは当然、オンライン申請の普及です。オンライン申請に対する役所や担当者の思いは関係ありません。義務付けされた手続きは粛々とオンライン化されていきます。

もうひとつは普及のスピードが上がることによる効率化です。それは余計な時間を割かなくてよくなった社会全体と言ったら大げさかもしれませんが、少なくとも努力義務を実現しようとするために必要な、うんざりする調整にかかる時間や労力は不要になります。私はこれだけでも義務化する理由になると思うくらいです。

ぴったりサービスの改善も今後図られていくようです。ならばいっそのこと、オンライン申請基盤をぴったりサービスに統一し、オンライン申請を義務化して、全国どこに住んでいても容易にオンライン申請ができる社会を実現したらいいのではないでしょうか。

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