見出し画像

自治体DXはなにから始めるか

昨日はなんの根拠もない、しょうもない話をしてしまいました。

今日はもう少し具体的に、自治体DXはなにから始めようかという話をします。

地方自治体のデジタルトランスフォーメーション推進に係る検討会

これに関してはすでに検討会が始まっており、システムの標準化や行政手続きのオンライン化など、自治体DXの進め方が示される予定です。

標準化はこのように取り組みましょう、オンライン化はこのように進めましょうといった手引書のようなものは、それはそれで必要です。
でも気をつけないと、今まで同様各団体がやりたいこと・実現したいことにバラバラに取り組むこととなり、結果的に統一感のない自治体DXができあがってしまうかもしれません。

自治体DXは、自治体戦略2040構想に端を発するスマート自治体の意味で語られることが多いです。したがって、どちらかといえば行政の効率化という要素が強いのですが、デジタル・ガバメントの目的に立ち返れば、そこはやはり「利用者中心の行政サービス」を実現するものでなくてはなりません。

利用者中心の行政サービス

利用者中心の行政サービスを実現し、利用者がその利便性を実感しなければ、自治体DXは決して支持されません。
システムの標準化も、行政手続きのオンライン化も、利用者の支持がなければそもそもの目的を逸することになります。

利用者中心の行政サービスを実現しようと、内閣官房IT総合戦略室が中心となって始めた取組みのひとつに、各種ワンストップサービスの推進があります。

これらはまだ取組みの途上であり、また現行制度がボトルネックとなっている部分もあるため、利用者が本当に便利だと感じるサービスになるには、もう少し時間がかかりそうです。

忘れられたもうひとつのワンストップサービス

皆さんは「子育てワンストップサービス」をご存知でしょうか。

画像1

これはマイナポータルの運用が始まるのに合わせて用意された、児童手当や保育に関する手続きがオンライン上でできるサービスです。

※子育てワンストップサービスは、ぴったりサービス上で提供される各種手続きの総称ですが、本稿ではこのまま子育てワンストップサービスと呼びます。

特徴的なのは、全国共通の電子申請ポータルというところです。電子申請はそれまで各団体が独自に整備するものでした。県単位で整備しているところもありますが、いずれにしても全国でみれば入口はバラバラだったのです。これがひとつにまとまり、全国どこの団体でも、ここを入口に電子申請が可能となるコンセプトは画期的なものでした。

画像2

このように、サービス開始直後においてすでに多くの団体が参加しており、ポータルサービスとしては上々の立ち上がりといっていいものでした。

子育てワンストップサービスの利用率

サービス開始から3年が経過しましたが、「子育てワンストップサービスって便利だね!」という声は一向に聞こえてきません。
子育てワンストップサービスの中でも対象者数が多い手続きである、児童手当の現況届を例に見てみましょう。
関東地方のとある中核市であるF市では、毎年50,000件ほどの現況届が提出されます。現在のマイナンバーカードの普及率は約20%ですから、単純計算で今年度は10,000件が子育てワンストップサービス経由で提出されてもいいはずです。
しかしながら、実際に子育てワンストップサービス経由で提出された現況届は、約600件でした。現況届全体のわずか1.2%、子育てワンストップサービスが利用可能な人のわずか6%です。

なぜ子育てワンストップサービスは使われないか

マイナンバーカードが普及していないという理由は、カード所有者の6%にしか使われていないことからも、通用しません。
理由は単純明快です。使いづらいからです。ここでいう使いづらいは、郵送と比べての使いづらいです。
郵送は、いくつか手書きも発生しますし、ポストに投函という作業も発生します。それでも大部分の現況届は郵送で提出されますから、子育てワンストップサービスよりも使いやすい手段であるということです。

児童手当の現況届はオンライン申請をデフォルトに

長々と書いてきましたが、つまりは「児童手当の現況届はオンライン申請をデフォルトにする」が、自治体DXでまずやったらいいことではないでしょうか。
すでに多くの団体が始めており、対象者数もそれなりに多く、また対象者がオンライン申請に馴染む子育て世代であるといった条件が揃っている「児童手当の現況届」こそ、利用者中心の行政サービスを体験してもらう手続きとして最適だと考えます。あとは本当に使われる、使い勝手のいいサービスにリニューアルするだけです。

「オンライン申請のほうが郵送より簡単だったよ!」

誰もがそう感じることができる成功体験が、たったひとつでもいいから、今すぐに必要だと思うのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?