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翻弄されるマドリード1日目

アブダビ乗り継ぎ

8月1日の午後に成田を出て、アブダビ経由計24時間のフライト。
アブダビではワクチン接種証明書などのチェックは一切無く、ゲートからゲートまで歩くだけであった。

アブダビ空港にいたラクダ(ニセモノ)

アブダビでは5時間近く待ち時間があったので少し歩き回ってみると、無料シャワーや寝られる椅子などもあり、なかなか快適な空港である様子。
喉が渇いたので店で水を買おうとするが、慣れないUAEの通貨(エミラティディルハム)を変換してみると500mlの水1本600円するではないか!買う前に変換してみて良かった。水だから安いだろうと思って変換せずに購入するとぼったくられるところだった。
近くの自動販売機を見てみると、100円ほどで売ってあるので、それを購入。便利なのは、クレジットカードがあれば全く両替をせずともすぐに買い物ができる点である。初めて海外でカードを使って買い物をし、その便利さを実感した。

マドリード到着

アブダビからさらに7時間のフライトを経て、マドリードのバラハス空港に着陸。私はついにスペインの地を踏んだ。色々と準備をし、身構えていたものの、検疫や入国審査は拍子抜けするほどあっけないものだった。事前に取得していた保健省のQRコードをスキャンした以外は、パスポートにスタンプを押されるだけで、インターネットの情報にあったワクチン接種証明書の提示などはなかった。
8月1日にはフランスも入国制限を撤廃しており、ヨーロッパは観光ハイシーズンに向けて本格的に国境を開こうとしているように感じる。

市内へ向かいたいのだが…

バラハス空港からマドリードの中心部までは電車で30〜40分ほどの距離である。事前に調べていた情報によると、電車で行くのが最も便利だということだったので、人の流れに乗って電車の券売機と思しき機械へとたどり着く。市内中心部のアトーチャ駅を選択し、7.5ユーロを支払うと、何やらカードが出てくる。

マドリード地下鉄カード

調べてみると、マドリードの地下鉄は全てこのカードにチャージして乗る仕組みになっており、紙の切符は無いようだ。従って、カード代2.5ユーロは必ず支払わなくてはいけないそう。
仕方ないと思いながら改札を通ると、アトーチャ行きの電車が見当たらない。どうしたらいいか分からず、1回改札を出て職員に聞くと、アトーチャ行きは1つ奥の改札だと言う。ならばとそっちに行ってみると、そこは地下鉄ではなくRenfe(国鉄)の改札だと職員に止められた。どうやら、地下鉄は乗り換えが多く不便なので、アトーチャまで1本で行ける国鉄を使えということだったらしい。
でも私はもう地下鉄のチケットを買っている。
少々不便ではあっても地下鉄で行こうと、乗り換え方を聞いて改札に向かうと、私のカードは弾かれてしまった。
ん?もしや…
そう、一回改札を出入りしているので、私の切符は無効になってしまっていたのだ。
悔しいぞ。
仕方ないので、国鉄で切符を書い直そうとすると、タッチ決済で私のカードが使えない。
くぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ、と言ってみても、誰も聞く人はない。
両替屋に向かい、1ユーロ171円というぼったくりのようなレートで両替するほかなかった。ATMのキャッシングの方がレートは少し良かったかもしれないが、疲れていたのでとにかくユーロを手に入れたかった。
そうして切符を手に入れ(3ユーロくらい)無事に列車に乗ることができた。

アトーチャ駅にて

アトーチャ駅に着いたので、Renfeのチケットカウンターを探す。

アトーチャ駅に到着

実は今回の旅、Eurail Global Passなるものを使用しての旅である。これは、一定額を払えば決まった日数の間ヨーロッパほぼ全土の鉄道が乗り放題になるという代物である。筆者は2ヶ月の間、任意の10日間乗り放題になるパスを学生割引5万円弱で購入した。
事前予約などを駆使すればこれより安く周遊することができるのだろうが、思い立った列車に乗れるという自由度を重視してこのパスを選んだ。
ところがどっこい、そううまくはいかないものだ。
このパス、西欧の多くの国々では座席予約が必要なのである。これにより、毎回10〜30ユーロ程度余分にかかることになる。もっと厄介なのが、スペイン国鉄は現在オンラインでの座席予約ができない(2022年8月現在)。なぜだか知らないが、スペインのみは窓口(主要駅、マドリードではアトーチャとチャマルティン)での予約しか受け付けていないのである。(日本語の情報が極端に少ないので、これを参考にしていただければ幸いである。)
従って、マドリードに4泊したのちにバルセロナへ向かう列車とバルセロナからパリに向かう列車を窓口で予約しておかなければならなかったのだ。そういう訳で、アトーチャ駅に着いた私が早速チケットカウンターを探したのである。
改札のすぐ側にあったチケットカウンターに行ってみるも、これはCercaniasという近距離列車専門の窓口で、スタッフがEurailの予約ができる窓口への道を教えてくれた。
その通りに進んでみると、「バルセロナ」などと書いてある別のチケットオフィスを見つけたので、何も疑わずに40分ほど並んだ。やっと自分の番が来てEurailの予約をしたいと伝えると、ここではないと告げられた。
え??
戸惑いながらも聞いてみると、もう少し奥に行ったところにあるRenfeのチケットオフィスだという。その通りに30メートルほど行ってみると、なるほど大きなRenfeのカウンターが…

薬局の手前にある

Damnと呟きながら、自動ドアをくぐる。
中は人だらけである。整理券を取ってみると、自分の番号は今表示されている番号と200近い差がある!ハァ…と思いながら待っていると、隣に立っている白人カップルがEurailの話をしている。試しに話しかけて聞いてみると、やはりここで並んで座席予約をするほかないようである…

整理券

4時間強待っている間、旅のルートに思いを巡らせたり、邦ロックなどを聴いていると、涙が溢れそうになったので、坂本九の「上を向いて歩こう」を聴いて上を向く。
私は今、異国の地で1人である。こんな孤独感を覚えたのはいつぶりだろう。日本でコロナ禍の大学生活を送る中、自分は孤独だと感じたことはままあった。しかし、本当は孤独ではなかったのだ。家族や友人、恋人がいつも支えてくれていたのである。すぐそばに大学というコミュニティもあった。
だが、今この国に私の知る人は無く、支えてくれるものも無い。その中で必死に意思疎通を試み、旅を続けなくてはならない。
私は1人である。そして、私は望んでここにきた。困難あってこその旅である。初日のドタバタは、「旅は決して甘くない」という洗礼を受けたようだった。
ただ、ヘッドフォンから流れる、親しい人々と一緒に聴いた曲たちが私を支えてくれた。

バックパックを置き、座って待つ

長い待ち時間もようやく終わり、無事座席予約をすることができた。マドリードからバルセロナが10.5ユーロ、バルセロナからパリが48ユーロであった(バルセロナからパリは、1等車しか空いておらず、思ったより高くついた)。
アトーチャ駅からレティーロ公園、アルカラ門、スペイン銀行などの前を通ってホステルに向かっていると、バックパックの肩紐のバックルが壊れて弾け飛んだ。困難上等である。私はバックルのあったところで紐を固く結んで再び歩き出した。

自然豊かなレティーロ公園
日本ではあまり見ない真っ黒い小鳥
アルカラ門は工事中
マドリード市役所
スペイン国旗と対になってはためくウクライナ国旗
至る所にレインボーのシンボルと左派的主張の張り紙。写真はハンバーガーを食べるのは犯罪だと主張するポスター。

今回泊まるホステルは、OKホステルマドリード。4泊で89ユーロと、なかなかお得である。

枕元にコンセントと読書灯もある

チェックインして荷物をおいてシャワーを浴び、バル巡りに繰り出す。

バル巡り

まず、マヨール広場Plaza Mayorに向かう。壮大な広場で、たくさんの観光客がいる。しばらくそこで広場や中央の像を眺め、頼まれて他の観光客の写真を撮ったりした。

マヨール広場

広場を出ると、すぐ見えるのがサン・ミゲル市場である。観光客でごった返しており、値段設定も観光地である。一通り見て回ると、生ハムの店、海鮮の店、チーズの店、フライの店などがあり、それぞれ多種多様なタパスを提供している。
2ユーロのタコのガリシア風Pulpo a la gallegaを試してみる。

Pulpo a la Gallega

味はなんだかパッとしない。というかあまり味がしなかった。タコの刺身の方がまだ味がするぞなどと思いながら、早々にサン・ミゲル市場を後にする。
日本語のウェブサイトに紹介されていたバル巡りのモデルコースに沿って次の店へ。
やって来たのは、Meson del Champinion。なるほどこの店には日本人が多い。ビール(3.5ユーロ)とマッシュルームの鉄板焼き(7.5ユーロ)を注文する。

日本語の看板まである
とても美味しい

マッシュルームの傘の中にサラミが入っており、食べるとオリーブとマッシュルームの香りが口の中に広がる。ヒジョーに美味しい!Mahouという名のビールは、飲み口鋭く、ほとんど甘さは感じない淡白な味わい。油こいタパスのお供にピッタリである。
1人で楽しんでいると、ピアノ弾きのおっちゃんがGypsy  KingsのVolareを弾き出した。正面に座っていたおばさまたちがたくさん飲んでご機嫌な様子。ピアノに合わせて歌い出す。私もいい気分でビールを飲む。楽しい夜だ。
他にもBilly JoelやJohn Lennonなどを弾いてくれたピアニストのおっちゃんに1ユーロのチップをあげ、店を後にする。楽しい時間をくれたから。
3軒目に訪れたのは、La Casa del Abuelo。エビのアヒージョやフライが有名らしいが、高いしお腹も膨れなそうなので、Bocadillo de Calamares という、イカリングフライのサンドイッチとサングリアを頼む(計6.5ユーロ)。

イカのボカディージョとサングリア

サングリアをほぼ飲み終わった頃にやっとBocadilloがやってくる。シンプルな味わいで、サクサクのイカフライと硬めのパンがよく合う。
テラスで食べていると、物売りや大道芸人が複数寄ってくる。日本にも、ホームレスはいるし、職が不安定な人も欧米ほどでないにしても多いはずである。しかし、日本でテラス席で食事をしていて押し売りがやってくるということはまずないだろう。なぜこんな違いがあるのか気になった。また、日本経済は低迷続きで未来は無いなどと言われることがあるが、社会の安定感という面における日本の良さを垣間見たような気がした。

ホステルに戻る

9:30頃宿へ戻る。シャワーを浴び直したら、ドッと疲れの波が押し寄せた。
同室のカリフォルニアから来たアジア系アメリカ人は、他に5人いる部屋で平気な顔をして屁をこき、痰を吐く。全く周りを気にしないその姿勢に、ある意味感嘆した。同時に、初めてであるホステル滞在に少し自信が湧いた。
ドキドキとバタバタ続きの1日目だった。明日は早起きしなくてもいいかな。

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