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讒文芝居

●最近の此のバンド弩豪い

■「Foals フォールズ」

 MGMTやフローレンス・アンド・ザ・マシーン、カサビアン、
ウルフ・マザー、テーム・インパラ、
バトルス、ロイクソップ、フアナ・モリーナやら
スティーリー・ダン、サカナクション、デジタリズム、
フランツ・フェルディナンド、ダフト・パンク、
ニュートラル・ミルク・ホテル等等
包括しては、何れにも完全には似て居ない。

イイ感じにエモくもチルく、踊れて主旋律も憶え易い。

 然し、エモい丈ではアドレナリン全開でも疲れるし、不毛だ。
チル過ぎてもα波、セロトニンが浸透して睡く為って音楽鑑賞処では無い。
プログレッシヴ・ロックの如く用意周到にドローンやシューゲイザー、
ミニマルの如く連綿と永く永く蜿蜒と続く乎の様だと裡でも終始
インストゥルメンタルだと覚悟を固めるや、
やおら歌声がくぐもった声で聴こえて来る。

程近くで演奏するやけに主旋律と
一見関係無い矢鱈と倍音の如く御加増の多い
たった五分前後足らずとは信じられぬ、蠢く展開に溜息。
奥行きと手数の伴奏が過多の寛ぎの為の
酷く痛切な迄に莫迦叮嚀喃音楽。

(自分も結構色色聴いて来た積りだったのに)
何だ、此れは!?

嘗ては、スレイ・ベルズやマーズ・ヴォルタに「其れ」を感じて
御猿の如く繰り返し繰り返し聴いて、未だ飽き足らぬ音楽と偶に極偶に
出喰わす事が在るが、今回は別格乎も知らん。

本当におっかない音楽とは此の事だ。

怖がらせよう、説教して遣ろうと乎も直ぐ慣れる
寛がせようとされるも其の刺激に直ぐ慣れる。

詰まり飽きて仕舞う。
飽き無い、飽き難い、其れを防ぐ為の苦心惨憺も音楽の歴史で在ろう。

 扠、此のバンド。
何を喰って何を観て来たら此ん喃種別も感覚も浮遊する音楽が創れるの乎、
全く解らない。だから一層怖い。だから夢現の境が混然一体と為る。

映画「メッセージ」の如く
異星人が奏でる円環構造の語りの只中に巻き込まれ、
現在過去未来が一緒くたに為る感覚。
彼氏等のジャケ写に多く在る様に凡そ言葉には出来ぬ、
母為る海に何処吹く風に呑まれ触れられ、様様な温度で愛撫然るる感覚。

ドナルド・フェイゲンが「温泉の如き暖か味」とすると
彼氏等は「謎の薄荷や自然現象(1/f揺らぎ的)の夕涼み」の様な物。

名状し難き筆舌に尽くし難き、ホンモノを目の当たりに
文章なぞ無力の二文字に過ぎず。

 まあ、語る様で語る術の殆ど無い彼氏等だが、不惑を過ぎて
もう、本当の新鮮喃愕きも無し。世は事も無しと肚を括って居た
中年の眼を円く然せた事実は揺るが無く、言祝ぎ度い。

Foals

「In Degrees」

「Blue Blood」


「My Number」