讒文芝居

●最近の此の曲弩豪い

■スターボー「ハートブレイク太陽族」

 

 此の楽曲を想い出したのは、NHKの三昧シリーズ満を持しての
今日も一日YMO三昧」にて。
YMOに外れ無しで本筋のYMOを全部掛けるのも違うし、
如何すんだろう?と思いきや、
ソロ仕事でも一廉の成功を収め度御大達。
殊に細野晴臣御大は元元がプロデューサー気質が強乎っ度ので、
細かい物からデカい物

成功から失敗迄を数え切れ無く数多手掛けられて居る。

然かも「風をあつめて」を初め大成功をモノにして来た
松本と細野名コンビの「珍らか為る大失敗」の御紹介等等だのだっ度。

 

 彼のスリップ・ノットのドラムス「ウェンズデイ13」が半ば売る気を
度外視したサイコビリーに鳥渡足を突っ込んだが如きホラーと倒錯ギミック満点のバンド

ウェンズデイ13 フランケンシュタイン・ドラァグクイーンズ

は其の名の通り「女装趣味の人造人間(フランケンシュタインの怪物)」
と謂う敢えての要素の渋滞を巻き起こし度、狂おしくも愛らしく、
格好宜しいサブ・バンドを持って居たが

此のスターボーも
「異星人の上に男装の女人で正確は硬派のツッパリ」で在る「アイドル」
と謂う最早、力点を欠いて仕舞って無重力場でも引き起こし然う喃
「遣り過ぎ」振り。

当時、上柳昌彦さん曰く
「デーモン閣下ならばきちんと仕上げて来て呉れるから絡み易い。
が、彼女等はキャラがグッダグダだったので甚だ絡み辛乎っ度」と謂う。
人気が出る筈も無く、直ぐ後に180度路線変更して主流だった聖子ちゃん的乙女チックに捩じ込むが、時や遅し。歴史からはスターボーの名は潰え度。

パフュームの成功も「テクノ」がYMOの面面の精神を脅かし暗黒面寸前迄
追い詰め、猫も杓子も爺も婆も小学生幼稚園児も
御茶の間頻り乎パチンコ屋に迄
蔓延し、飽和した挙句が「アイドルがテクノ」と謂う魁と然せ度のだ。

スターボーは早過ぎたテクノ歌謡
(多分然る後に細野さんが嵌る
「エレクトロ・ファンク」を基調として居る)

の先触れだのに歯車の掛かり違いで「ハイスクールララバイ
とは雲泥の差と為った徒花で在ろう。

 

 だが、久久に一聴して戦慄が奔る程、様様喃感情が異様に
去来し胸を衝ったのは、紛れも無く駄作とB級と当時称され度スターボーの
「ハートブレイク太陽族」だったのだ。個人的に。

捩じり上げる様喃泥臭いテクノ・ファンクに弩直球で男らしい歌詞。
宇宙人と謂う選りもポンパドール目にハチマキにギンギラの
マッチ(近藤真彦さん)の如き出で立ち。
「熱いゼ太陽の季節」と何故乎YMOの「Mass」の如き
無駄に荘厳でマイナーに〆る、其の季節は矢張り夏だの乎も能く解らぬ
組み合わせと按配。果たして御大達はナニを「良し」としたの乎皆目
ピンと来ぬ。

のに多分、当時は相当筆者も幼く、
長じて、小癪にも後後附ける屁理屈や知識無しに掛値無の

「何だ!?此れは!」と岡本太郎張りに衝撃的薫陶を受け然るを得ぬ

岡本太郎の「太陽の塔」や
横山光輝の「鉄人28号」(若しくは大友克洋「AKIRA」)
やヤプーズの「赤い戦車」の如く

魅力と謂う選り最早、万策尽くしても抗い難い
「昭和と謂う時代の瘴気を纏った呪い」の如き「モノ」を直感的に感じ
イイと謂う選り「うわああ」と半ば悲鳴や嗚咽に似た感嘆を漏らし

其の時空に同調し、同調したデ・ジャヴの如き感覚と
暫く忘却の彼方に抛り擲げた昭和の重苦しくも棄て難き感覚に同時に見え、

説明不可能心情不可解な感覚に打ち震えたのだっ度。

 

 だから、只の回顧や偏執狂の己に酔う倒錯の
自己陶酔では無く

原初の、意味附け不要不文律不立文字の筆舌に尽くし難い
不二の「感動」とは
実は斯うだっ度よ喃!と謂う忘れ掛けた感情との邂逅をも

実現して仕舞う「異物」としての遺物に衒い無く敬意を払う。

当時は大失敗だった乎も知らんが、一度聴かば忘れられぬ
方寸に御座る「心」に衝き刺さる
世界記憶(アカシック・レコード)とも謂える音楽とは、
良くも悪くも唯一無二也。