子どもの虐待を考える2015~虐待を受けた子どもへの心理ケアを考える 社会養護の現場から
2015年に受講した『子どもの虐待防止センター』主催の講座の6回目のブログになります。
ここに書かれているとおり虐待を受けてしまった子どもと、してしまった親、両方のケアはとても難しいものがあります。
しかし、私はこのケアを行政で手助け出来る方法がないかを検討していきたいと思っています。
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子どもの虐待防止センターが主催する講座に行ってまいりました。
今回は臨床心理士で、センターの相談員をやられている若松亜希子さんを講師に迎え・・
『虐待を受けた子どもへの心理ケアを考える』であります。
社会的養護を必要とする子どもは・・(厚生省2014)
〇里親・ファミリーホーム(グループホームにようなもの)・・約5500人
〇児童福祉施設・・約41000人
(児童養護施設・乳児院・情緒障害児短期治療施設・児童自立支援施設・母子生活支援施設・自立援助ホーム)
⇒虐待を受けた子どもの施設入所率は増加している。
子どもの虐待が発覚した場合
二通りの道がある・・・
1、在宅における家庭支援
児童相談所、児童家庭支援センターをはじめとした諸機関
2、子どもを家族から分離する
児童相談所⇒児童福祉施設へ入所
(児童養護施設・児童自立支援施設・情緒障害児短期治療施設など)
この場合どちらが望ましいのであろうか??
当然のごとく、双方にメリット・デメリットはある。
分離ケアのもたらすもの
【メリット】
〇子どもの生活環境の修正・改善
〇子どもへの心理的なケア(治療的養育・心理治療)
⇒現在、児童養護施設には、心理カウンセラーや精神科医が数人常駐している!!
〇親が子どもから離れてじっくりとケアを受けられる
【デメリット】
〇子どもの喪失感・見捨てられ感を生む
〇親へのケアが行き届かない場合が多い(在宅支援を担う資源の不足、親の状態に改善が見られないなど)
⇒児童相談所は現在進行形で虐待を受けている家庭の方に行ってしまうので、子どもが施設に入ると、親は児童相談所との関わりをなくしてしまう!!
〇家族関係・家庭環境の修正が図られず、子どもが施設に入りっぱなしに・・
〇逆に、家庭環境の修正がなされていないのに子どもが家庭復帰してしまうこともある⇒虐待の再発!!
在宅支援がもたらすもの
【メリット】
〇子どもが喪失感・見捨てられ感をもたずに家族機能が回復する
⇒ちょっとぐらい殴られても家庭にいた方がいいのではないか? と思えるほどこの喪失感は大きい!!
〇親も、罪悪感や無力感を大きく感じずに回復に向かえる
【デメリット】
〇社会資源の不足
〇親へのケアが優先になるため、子どもへの直接的な被虐待ケアがすぐにできない(しても効果をなさず、むしろ状況が悪化する恐れがある)
⇒子どもは状況が落ち着くと悪さをする!!(自我を出しやすくなる)・・だから、子どものケアを優先すると親は適応できなくなる!!
〇親は子育てをしながらケアを受けるため、自己の課題の根本を扱うような心理治療を受けることが難しい
児童養護施設における心理的ケアとはどういうものか?
1.治療的養育
〇衣食住のお世話をとおした心理ケア
安心感・安全感のある暮らし、基本的な生活習慣を重ねる。気持ちを汲み取ってもらう体験
〇信頼感を育てる(現在の養育者・親との関係)
⇒これらによって劇的に子供らしさを取り戻す子は多く存在する
⇒施設に来る子はピザとレトルトカレーだけで育てられるなど、偏った食生活を送って来た子が多く、好き嫌いが激しい。「もうピザを見るのも嫌」という子も存在したそうである!!
2.治療的なソーシャルワーク
〇家族の関係修復に向けた関わり
3.各種心理療法
〇トラウマ・アタッチメント・対人関係・自己調節などの問題への対応
〇ライフヒストリーの共有と治療的介入
⇒自分の人生を辿ることで、親に対する恨みだけでなく、周囲の人に助けられたんだという考えが浮かぶ・・それにより、精神の安定が見られてくる。
(実際に育った乳児院にカウンセラーと一緒に行って、職員に抱っこしてもらっている写真などを見て、感動する子もいるということである)
アタッチメントの重要性
〇アタッチメント関係(主に母親と形成される)
不快な気持ちを、心地よい快の状態に調整してもらう体験
⇒他者に頼る、助けてもらうことができる。
具体的に言うと・・
オムツが汚れた時に、泣いたりすると交換してくれる。意思表示をすると・・
不快な状態を快の状態に変えてくれる!!
⇒こういうことの繰り返しにより、安定したアタッチメント(基本的信頼感・自己固定感・共感性・道徳心・自己同一性など)が得られる。
良好なアタッチメント関係を得るには・・
⇒子どもの危機的な状況(怖い、悲しい、困る、嫌な気持ちのとき)に、養育者を頼って助けてもらえるかどうかにかかっている!!
これは2~3歳が臨界期(この年齢を過ぎると修復が不可能)と言われている!!
しかし!!!!
養護施設の人間はこれを信じないようにしている!!
⇒当たっているとすれば、施設で行っているケアが意味がないということになってしまうからである。
アタッチメントの問題への対応
〇依存欲求が満たされていない
〇ケア葛藤の存在
〇養育者に素直に頼れない、甘えられない
⇒歪んだ言動を養育者に向ける
・わざと怒らせる言動で注意をひく
→許してくれるかどうか不毛な試しで、相手の愛情を確かめる。
・本当の気持ちとは反対のことを言う
・赤ちゃんを拒否・回避・攻撃
→嫉妬心や、自分の昔を思い出してトラウマの再現をしてしまう(自分がやられたことを他人にしてしまう)
⇒養護施設では、スムーズな関係が作れるように介入していく。
トラウマ症状への対応
〇再体験
⇒日常の何気ない拍子にフラッシュバックで蘇ってしまう。
〇過覚醒
⇒夜眠れない日が続く!!
〇回避・まひ
〇解離
⇒嫌なことを忘れようとするので、認知症のように物忘れが酷くなる!!
〇対人関係における再現傾向など
これらの対処法として・・
〇養育者および子ども自身への心理教育
〇心理治療
〇医療機関との連携
その中の一つが・・
ライフヒストリーの共有と介入
〇子どもの生い立ちについてふりかえる作業
〇これまでの体験を養育者と共有し、相談関係・信頼関係をつくる
〇子ども自身が自分の内面をみつめ、自分の気持ちに気づき、整理を行う
・実親への怒りに気付く「親なんていらない」→修復や諦め
・親の状態の理解(うつ・総合失調症・依存性などの病気・親としての未熟さなど)
・連続性のある人生を確認(生活場所・養育者・大切に育てられたと思えること)
〇現状の前向きな理解が出来→将来への希望が生まれる
今後の課題
〇在宅支援のできる場所を増やす
〇母子で通所してケアを受けられる場所の必要性
・母子関係そのものへの働きかけが可能なため、効果が大きい
・母への個別ケアも可能
・子どもの様子が目に見えるため、危険性の判断がしやすく安全
〇子どもの分離後の親の支援を徹底する
・親へのケア+子どもへのケア⇒総合的ケア
⇒家庭の再統合へ!!
感想として抱いたのは・・・
やはり、理想論を言えば虐待は未然に防げるなら防ぐべきなんですよね!!
虐待が行われてからそれを修復していく作業というのは、親と子ともに容易なことではないのです!!
虐待の問題というのは、世間では事件が起こってからでないと注目されませんが・・問題は山積みなのです。