行政のやるべきこととは・・
この本は養老孟司さんが・・
児童精神科医の宮口幸治さん
小児科医の高橋孝雄さん
脳研究家の小泉英明さん
自由学園学園長の高橋和也さん
の4人の識者と、子どもが置かれている現状や教育について語られています。部分的にかなり専門的で難解なところがありますが、最後まで興味深く読ませていただきました。
4人目の対談者である高橋和也さんが学園長を勤める自由学園は、子どもたちに植林をさせてそこで育てた木を使って新校舎を建設しています。
植林を始めた当初、自由学園の創設者の羽仁吉一さんは子どもたちに「三十年後、君たちが四十八歳になるころに、今日植えた木は伐り出せるまでに育つ。それで校舎をつくるんだ」と語ったそうです。
本書の中にも書かれていますが、植林と研究と教育には共通点があります。
それは結果が出るまでにかなりの年月を要するということです。
植林は木を植えてもすぐに育つことはありませんし・・
研究も長い年月をかけた調査や経過観察が必要なものが多くあります。
そして教育は、教育改革を行ったとしても、それが子どもたちに良い影響を与えたかどうかわかるのは早くても10年以上後になるでしょう。
だから、毎年株主総会を開いて結果を報告しなければならない民間企業には向かないのです。(※林業は民間企業も行ってますが林野庁が監督支援しています)
だから、文中にこんな発言があります。
「いつ、誰の役に立つのかわからないことをやるのが、国の役割」
そうなのです。すぐに結果の出ない長期的なスパンが必要で、リスクの高いものほど行政(国や地方自治体)がやるべきなのです。
しかし、現状では研究費は年度ごとに予算が決まるので、いつ打ち切られるのか研究者は戦々恐々としているそうです。
それになんと言っても、国会議員は次の選挙のことだけを考えている議員が多いので、そういう議員は次の選挙までに結果が出せないものには取り組もうとしないのです。
人を育てる教育と、技術大国であったこの国においての研究は、国の根幹を成すものであります。
本書の中でも養老孟司さんは『参議院は五十年より手前のことは考えない議論にしろ』と発言されてます。
この発言は極論かもしれませんが・・
私は長い目で物事を捉えられなければ行政のやることに意味がないのではないのかと思います。
今年の7月には参議院選挙が行われます。有権者の皆様も、どの候補者が長期的スパンで物事を見ているかという目線で投票していただければと思います。