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ミステリアスな映画「真夜中の五分前」の私の答え探し

ネタバレ有り☆ドリパスの復活リバイバル企画で「真夜中の五分前」を見てきました。

この映画の世界観って唯一無二だと思う。

プロローグ

窓にかかるカーテンが風に揺れている。    その窓ガラスに向かって赤いワンピースを着ているちいさな女の子が小石を投げ、ガラスを割ってしまう。そしてあわてたように走って何にも知らずに庭でブランコをこいでいる紺色のワンピースを着た女の子の元にかけていき、ブランコから降ろして言う。「ねえ?服を取り替えっこしよう。」

赤いワンピースと紺色のワンピースを着た
双子。
服を交換し終えた頃にやってきたお母さんに
窓ガラスに石を投げたでしょと叱られて
ブランコに乗っていた子は、取り替えっこさせられた赤いワンピースのまま怒られて連れて行かれてしまう。

連れていかれた子が、きっとルオランで
石を窓ガラスに投げて、服を取り替えっこしようと持ちかけた子は、きっとルーメイ。

こんなことから映画は始まる。

上海で暮らしている日本人

場所は上海。
低い建物が連なって立ち並ぶ。建物のニ階の窓から通りを挟んで紐がかけられていて、そこに洗濯物が連なって干してある。
その通りにある時計屋さん。

ロッキングチェアで居眠りしながら
詩集を読んでいる時計店主のおじいさん。

物の価値を決めるのは自分自身だよとお客さんに言うことができる人。

小さな机に向かって時計修理をしている春馬くんの役どころのリョウ。

ピアノの音がゆっくりと流れはじめて
その音に重なるように
店に置いてあるいろんな時計の音がしてくる  チクタクチクタク。

リョウはいつも 時計を修理しているから前屈みで少し猫背で手にはいつも小さなピンセット。

手に豆ができるほど練習をした
どこから見ても時計修理士。

行定監督が作るこの物語は、上海だからなのか、そこはかとない不思議な色合いに満ちている。

リョウは、日本人で上海で暮らしている

趣味は電動バイクに乗って通うプールで泳ぐこと。

春馬くんが電動バイクを運転しながら走る上海の街並みが幻想的。
バイクに乗って街を走っているだけなのに   かっこいい。

画面が移動して泳いでいる映像。
スイミングキャップやゴーグルや水着姿なんて はじめて見た。肌が綺麗。
きれいなフォームで泳いでプールから上がってくると無造作にキャップを脱ぐ。
たったこれだけなのに髪から流れ落ちる水滴や
カラダに滴って落ちる水までが美しい。

一卵性双生児のルオランとルーメイ

ルオランと、ここで知り合う。

彼女が泳いでいる美しい姿に目が離せないリョウ

着替え終わって入り口のベンチに座っている時に彼女から話しかけられる

「これからお時間ありませんか?」

言葉は全編中国語。
春馬くんの声は
ずっと聴いていたいと思う
その会話も中国語。
彼の声で聞く中国語もやっぱり同じように癒やされるのね。
そして会話の途中で困った時に呟く日本語がとても可愛い。
春馬くんが主演する映画なのに字幕を見ながら 観ていることが不思議。
中国で放映される映画は中国語の発音がおかしかったら、あっという間に吹き替えになるらしい。それを知った彼は中国語が下手な日本人の設定だったのに発音も相当完璧にこなしたらしい。
セリフ覚えるだけでも大変だったでしょうね。

プールで知り合って妹のルーメイの婚約祝いの品をふたりで選んでいるうちに仲良くなったルオランとリョウは少しずつお互いの話をしていく。

リョウは一卵性の双子である2人がそっくりなことに驚いたこと。昔から双子に憧れていたこと。
双子のあいだにはお互いが通じ合うテレパシーのようなものはあるのか聞いてみる。

ルオランは、テレパシーなのか
別々に買い物に行っても同じ品物を買ってしまうことが多いと話す。

リョウとルオランが惹かれ合うこと

姉のルオランは清楚で思慮深い。
妹のルーメイは、妖艶で積極的。
顔形はそっくりでも真逆の性格であることを
知り、少しずつルオランに惹かれていくリョウ。

ルーメイの婚約者テイエルンとルーメイ    リョウとルオランでゴルフに出かけて四人は仲良くなっていく。

積極的なルーメイが私たちふたりは、小さな頃からいろんなものを共有して過ごしてきたのだから、恋人も共有しようと話す冗談に我慢出来なくなってその場所を飛び出したルオラン。

ルオランは、追ってきたリョウに彼女は、昔から私の好きなものに興味を持って
大事にしていたものを横から奪っていくと話す。ルーメイに消えて欲しいと何度も願ってそんな気持ちを持つ自分が嫌い。私こそ消えてしまいたい。と打ち明ける。

この日からふたりの距離が近くなって
リョウはルオランを時計屋さんのニ階にある
自室に招く。
ベッドの上で日本語で指さしながら鼻、口と言葉を教え合うふたりが可愛い。実際に単語を教えあっている様子が可愛くて監督がシーンに取り入れたとか。

ふたりは野外の映画を見に行く
映画を観ながら距離をはかるように
少しずつ手が触れて繋ぐシーンが好き。

春馬くんの映画やドラマにはこんなふうに大事に思う人と心をつなぐように
手を繋ぐシーンがとても印象的だなと思う。

リョウの部屋の時計はちょうどの五分前になっていて、なぜなのかとたずねるルオランに、過去に付き合っていた彼女を亡くしていて、その彼女がちょうどの五分前の世界で生きていたいと思っていたんだと教える。

リョウとルオランの距離がどんどん近くなったある日、ふたりは映画館に出かけていく。
映画の時間には少し間があったようで、
飲みをものを買ってくるねと告げる良。
このロケした映画館は、後日 天外者を放映してくださったらしいとのこと。
つながりが凄いな。

ルオランとルーメイがクロスオーバーしていく

ルオランが映画館の外で待っていると
モデルをやっているルーメイに間違われてファンに取り囲まれてしまう。

そこをとおりかかったティエルンに救い出されて車に移動するふたり。

置いていかれたリョウは飲み物を買ってきてそれを抱えながらルオランを探している。

車で移動したルオランはリョウのことをすっかり忘れている様子でテイエルンにプレゼントをしてもらった服をもらって帰る。

この時から もしかしてと ふと思う
ルオランの中にルーメイがいて
ふたりの魂がクロスオーバーしているのではないのかと。

ルオランとルーメイは、彼女の結婚前にふたりで旅行に出かけると言う。

リョウは、旅先のルオランから手紙をもらう。
ふたりで旅を楽しんでいること
リョウからもらった手作りの時計をしていること。
旅から戻ったら五分前でも五分後でもない
今の時を生きて行きたいと思っていると。

しかしリョウの元には旅先のモーリシャスで船が事故に遭い、女性がひとり行方不明になっているという知らせが届く。

美しい蝶がどこからともなく来て飛んでいる  蝶の姿を借りて、リョウに会いに来たのかな。

行方不明になったのは、ルオランで
助かったルーメイは予定通りティエルンと結婚する。

一年が経ってひとりになったリョウは
時計を修理しながら変わらずプールに通っている

そこに現れたティエルン。
リョウに言う。自分が一緒に暮らしているルーメイが実はルオランではないのかと疑っていると。

残された女性は、ひとり。

この残された女性がルーメイなのか
実はルオランなのか。

映画を見ている人はみんな戸惑うと思う。

ルーメイであり、ルオランにも見える女性。

最初はルーメイだと信じていたリョウもだんだん
わからなくなっていく。

答えは自分で決めていい

行定監督はこの映画のエンディングに答えはなくて
答えは自分で見つけて欲しいと言われている。

いろんな方がいろんな答えを持っておられると思うが、ここからは私が考える答えです

モーリシャスで船に乗る前に
教会を、訪れたふたり。

教会のマリア様の前でふたりは、お祈りをする。
ルオランは言う。
あなたのこれからの生活がシアワセであるように祈りましょう。

さっと祈り終えたルーメイに対して
ルオランはずっと長く祈り続けて
マリア様と会話をするように見上げている。

春馬くんもこのシーンは、大事だと言っていましたね。

私はこの時、ルオランは自分の命がもしかしたら終わってしまうかもしれないことを知っていたのではないのかと。

だからリョウの作った時計をマリア様に預けて
教会に置いていく。
代わりに教会にあったロザリオを持ってきてしまう。首にかけて泳げないルーメイのお守りになるように。そして本当に船の事故で亡くなってしまう。

確かに生き残ったのはルーメイ。

けれど ルオランが亡くなったからこそ
よりふたりの魂のクロスオーバーは起きて
ルーメイの中にルオランの魂は、生き続けているように思う。

エピローグ

ラストシーン。
リョウの時計を、ひとりモーリシャスの教会に取りに行き、お守りのロザリオをマリア様に返すのは ルオランなんだろうか、それともやっぱりルーメイ?

リョウの元にも彼女はやってきて
そっと彼の机に腕時計を置いていく。

その物音で目覚めたリョウは
ニ階の自室からあわてて階下に降りる。
そこで見つけた置いてあった腕時計を掴んで

通りを歩いていく彼女を追いかける

振り返る彼女。

彼女は、ルーメイなのか
ルオランなのか。

答えを自分で見つけていいと言われる
映画ってミステリアスだよね。

私はリョウは、ルーメイの中に生きるルオランの魂と再会したのではないかと思う。

春馬くんが、リョウにしか見えなかった。
線が細くて綺麗で繊細で 
不思議な彼女たちに振り回されながら惹かれていって。

彼は沢山のさまざまな役どころの人生を生きて 短かったけど役を通して生ききったのかもしれないとスクリーンの中のリョウを見ながら思った。

私も春馬くんの魂に会いたい。

目には見えないだけで きっとさまざまなところで生きているとそう信じている。


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