見出し画像

映画感想「ラーゲリより愛を込めて」(Filmarksより)

予告で気になり、初日鑑賞。

太平洋戦争末期、ソ連により強制収容所に送られた日本兵達の物語。
極寒の強制労働や劣悪な環境により倒れて行く兵士達だが、その中にあくまでもダモイ(帰国)の希望を失わない男、山本幡男がいた…。

奇しくも現在、ロシアのウクライナ侵攻が続いている中で「侵略の惨状」を伝える実話。ソ連の侵攻は日本の中国侵略が原因だが、それも元を辿れば欧州の植民地政策がことの起こり。
国際社会は悲劇の連鎖を繰り返している。
結局、「終戦」とはなんなのだろう。山本さん達は戦争が終わっても10年以上シベリアで働かされた。家族と引き離され、絶望感に心身を蝕まれながら生きる壮絶さが充分に伝わる描写の連続。
野球という憩いを得たり、日本との手紙のやり取りに狂喜乱舞する姿。普通の映画ならば、途中の和やかなシーンのはずが何処か喜べない。元上司である原との和解も気休めとしてしか脳に入って来ないのだ。

ノンフィクションとして忠実さを優先している為かドキュメンタリー色が強く、映画としてはやや淡々としていて起伏に乏しい。伏線はあるものの山本さんが病気で倒れるのは唐突に見えた。
結末は、仲間との絆を感じさせるもの。監督、スタッフがこの作品で見せたいもの、伝えたいことは存分に吸い込めた。
妻・モジミ役の北川景子女史は美しいだけではない。劇中で10年が経過しているのを演技で見事に見せてくれる。大袈裟すぎず、絶妙に「枯れている」モジミさんの表情に感服した。
一瞬写る「もはや戦後ではない」という文句、昭和30年代に謳われたものだが苦々しく感じるモジミさんの冷たい目もまた、印象に残る。

いくらか創作も入っているかもしれないが、これはかなり史実に沿った作品ではないかと思う。
下手に劇的にせず、山本幡男という男の生き様と家族、仲間との絆。希望を失うなという現代へのメッセージ。

鑑賞後、夕食がとても美味しく感じられた。
それがこの映画の質を物語ってると思う。
「記憶して、持ってきました」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?