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雑記「シナリオS1グランプリ経験談」…自分だけに描けるもの

15日の記事の続きです。受賞作についての雑記はこれが最後になります。

好きなものにこだわる事

機動戦士ガンダムでお馴染みの富野由悠季監督が、クリエイターを目指すのであれば十代の頃に自分が好きだったものにこだわれ、と言っていたのを思い出します。富野監督も小学生時代、宇宙旅行の夢を持っていたそうでそれ即ちガンダムに繋がっていますよね。
人間、特に十代後半の時期に出会ったものに一番影響を受けやすく、また一番好きなものになりやすいとも聞いたことがあります。実際私ももう中年の年齢ですが、未だに特撮だエヴァンゲリオンだ、セーラームーンだと思春期に出会ったものが心から離れていません。
そしてそれが、創作の際の唯一無二の武器になる場合があるのです。
それが私の場合、格闘ゲームでした。

1991年の出会い


昔は雑誌の付録だったりした「体験版」ですね

来年6月に発売予定の「ストリートファイター6」、先日クローズドベータテストというテストプレイ企画があり、応募して当選しました。一足早く最新作で遊べたのです、この記事を書き始める直前までやっていました(笑)。
ストリートファイターシリーズは、1対1の対戦格闘ゲームの草分け的存在です。1991年発売の2作目が大ブームを巻き起こし、メーカーのカプコンがビルを建てたという逸話があります。今はモンハンのメーカーという印象ですが、90年代を知るゲーマーにとっては「ストⅡのメーカー」でしょう。
私は当時小学生でしたが、このストⅡブームに呑まれた少年でした。ランドセルを背負ってゲームセンターに通うとんでもないガキだったのです。キャラクターを動かし、複雑な操作で技を繰り出し相手を倒す、その魅力にとりつかれていったんですね。

30年の時が変えたもの

それから30年以上が経ち、格闘ゲームだけでなくビデオゲームそのものの在り様が大きく変わりました。家にいながら世界中の人と対戦が出来るようになり、腕のあるプレイヤーがそれを生業とするプロになったり。これらは91年には考えられなかった事態です。
ストリートファイターシリーズはそんな時代と共に歩みを進め、今も格闘ゲームの代名詞としてプレイされ続けています。来年「6」が発売されれば、また新しいプレイヤーを取り込み盛り上がっていくものと思われます。
一方で、ゲームセンターは減少の一途を辿っており隆盛を極めた時代の熱気を知る者としては一抹の寂しさがありますね。
そんな30年の流れを見て来た自分であるからこそ、描ける世界。
それを今回の「先に生まれただけの人達」に書きました。格闘ゲームに賭けたゲーマーの姿です。

主人公・霧沢あかね

このキャラは27歳の中学校教師。作品中には書いていませんが現代文担当です。理由は私が文系だからです、準主人公の塚田涼助は数学、としましたがこちらも作品中には出てきません。
あかねは幼少期に父親を亡くし、母・祥子との母子家庭で育ちます。が、祥子は働くよりも愛人に貢がせる形で生計を立てていきます。それだけの美貌があったという事で、娘のあかねも容姿は整っているんですね。
結果、霧沢家には頻繁に男が出入りし、その男も羽振りが良い代わりに風体の悪い男。まだ小学生のあかねがいる家で遠慮なく絡み合ったりする始末で、あかねは母親への嫌悪感から塞ぎ込んでいきます。
その家庭環境が噂になり、あかねは学校でも疎外されるようになります。学校がそもそも祥子との間に一悶着あった事からあかねに対し露骨に「虐め」を始めるのです。あかねは学校、家ともに居場所を無くし孤立を深めますが、受け入れてくれた唯一の友人の家で初めて格闘ゲームに触れる…。

やがてあかねは格闘ゲームに没頭していき、実力と共にプロゲーマーへの憧れを抱きます。加えて、母親との生活が破綻し引き取られた叔父、安西の薦めで教師を目指す事に。これで、教師兼プロゲーマー霧沢あかねが誕生することになります。
この、あかねのゲーマーとしての実力が、虐め問題の対応において手詰まりになっている学校に旋風を起こす…という物語なんですね。

テーマ・骨組み・独自性

今回、審査員の一人には最高点を付けていただけた作品、個人的には現時点での最高傑作だと思っています。様々な要因がありますが、

テーマ…教育現場の問題
骨組み…「十二人の怒れる男」の形式
独自性…格闘ゲームの歴史を盛り込む

この三本柱が上手く噛み合った結果が成功に繋がったのではないかな、と自己評価しています。336本の応募があったそうですが、その中から抜きんでる事が出来ました。

次にどのような機会で、どのような作品を書くかはまだ未定ですがこの三本柱は常に意識しようと思っています。テーマは何か、骨組みは何を真似るか、盛り込める「自分だけ」の要素は何か、模索していく所存です。
脚本術としても、ストーリーのパターンは決まっていると教えているものですから、この三本柱を固定して今後の創作に臨むつもりです。

長々と書きましたが、自分のための備忘録でもあります。
お読みいただいた方、ありがとうございました。
よろしければ、「先に生まれただけの人達」もお読みください(宣伝)。


第43回シナリオS1グランプリ佳作「先に生まれただけの人達」|諸星だりあ|note


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