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「推しの子」2話まで鑑賞…これが現代の夢追い物語

少し出遅れましたが、今話題の「推しの子」を観ました。
1,2話の一気見でゆうに二時間、立派な映画鑑賞の感覚でしたが、グイグイ惹き込まれましたね。

結局映画館では観ませんでしたが

先月1話の先行上映と謳って映画館でやっていて、なんだか話題になってるらしい、程度の認知度で関心はあったのですが、例の二大映画が忙しくて(笑)、観に行く時間は取れませんでした。この時点ではテレビアニメの事、それの1話な事、内容から何も知りませんでした。昨年の五等分の花嫁などもそうでしたが、周囲のざわつきに遅れて反応するタイプの中年なんですね、私は。
で、今回テレビ放送が始まって、一応観ようかなとdアニメストアの「気になるリスト」に入れておいたのを本日観たわけですが、そもそも再生前に時間を見て「???」になりました。

第1話Mother and Children 再生時間82分

…え!? 82分?
尺は完全に映画のそれでした。テレビドラマだと1話が30分拡大版とかよく聞くのですが、アニメでそれは初めて見ました。いえ、私が知らないだけなのかもしれませんが。ともかく、映画も基本的には中断せず一気に観るのが信条の私にとってこれは休日でなければ消化できない「第一話」でしたね。

リアリズムとイデアリズム

私はこの作品、予備知識は皆無の状態で観ましたがだいぶん想像と違っていました。↑の番宣を含め映画館で予告を観たりはしていたので、これらから受ける印象としては「変わり種のアイドルと、医者のラブコメ」ではないかと思っていたのです。
まだアニメが2話の時点なので極力ネタバレは書かずに進めますが、タイトルの「推しの子」こそが主人公のサスペンス、がこの作品のカテゴリーとして妥当だと思います。これはちょっと想定外で驚かされました。何より芸能界の描き方が生々しく、私もかつて片足を突っ込んでいた人間として寒気がするような描写が出てきます。ここに「リアリズム」がありますが、基本的にこの作品の舞台であったり出来事であったりは「現実味」があります。そこに「嘘」は無い訳ですが、主人公の設定はイデアリズム。そこが明らかに漫画的な「嘘」になっています。この嘘というのが作中でもキーワードになっているのですが、実はフィクションを楽しむ観客側にも偶像の捉え方を考えてみるように投げかけているのではないか、そんな印象がこの相反する二つの要素の融合から感じられました。

実に、現代的だと思います。

不穏な空気と謎に立ち向かう主人公、アクア

本予告になると番宣と雰囲気が一変しています。
メインビジュアルに出ているアイドル・星野アイの息子、アクアが主人公になる二世代の物語ゆえに、ですがその目的、動機は苛烈を極めています。ややもすると転落型の物語に取られかねない壮絶さすら透けますが、私は2話まで観た時点でアクアに感情移入出来て、純粋に彼を応援したいと思えたんですね。本来ならDEATH NOTEの夜神月タイプに分類されるような主人公で肩を持ちたい男ではなかったですが、このアクアは一時間半の1話を観た後だとまるで違うとわかります。原作はかなり先まで進んでいるようですがあえてそちらはこらえて、アニメを楽しんでいきたいと思います。

「変化」は「進歩」か「退行」か

この「推しの子」を観て思うのは、やはり時代の変化ですね。
かつては「夢を追い求めて、叶えることが幸せ」があらゆる創作で謳われてきた普遍的テーマでしたが、やがて「夢を追うだけでは生きていけない」という現実的な描かれ方がそこに割って入ってきます。20数年前、インターネットの普及が始まり情報が大量に、簡単に手に入るようになり「入らなければ知り得ない世界の裏側」が知れ渡るようになった事が遠因だと思われます。
やがて今現在、「それでも憧れを追う生き方は素晴らしい」、とある意味位置として昔に戻るような作品が出てきたのかな、という印象をこの推しの子から受けました。情報過多と呼ばれ、価値観や意見の相違から無用な諍いが絶えなくなってしまった、心の荒みやすい時代であればこその傾向ではないでしょうか。まずフィクションはメッセージ性の前にエンタメでなくてはいけないのですが、柱としてメッセージが存在しないとエンタメにもなり得ないという側面があります。単純に夢を叶えてハッピーエンド、ではなく

「夢を追っても、叶えても傷つく。だから自分のために嘘を付け。ただし自分の心に嘘は吐くな」

一括りに言える言葉ではないですが、「より良い生き方」を提示するのもまたフィクションの役目であるなら、この「推しの子」が掲げるテーマはこれではないかと。2話ながら時間的には5話分あった訳ですが、この二時間でそんな意図を感じ取ったので、とてつもなく濃厚な時間でしたね。


あまりに眩しいアイの生き方はまさに流れ星でしたね

「推しの子」、今後も楽しみに観ていこうと思います。

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