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Column : 京都の東京ラーメン。

好きでよく通ったのに、今はもう無くなってしまったラーメン店。
いい歳した大の男なら一つや二つあるだろう。

勿論、私にもある。
しかし、今回はその類の話ではない。

京都は左京区、百万遍に「東京ラーメン」という店があった。
百万遍とは、東西の今出川通と南北の東大路通が交差する場所で、近くにある知恩寺に由来するらしく正式な住所ではないそう。
この付近で最も有名なものといえば、やはり京都大学。その当時、京都大学から最も近いラーメン屋であったはずだ。

勿論チェック済で必ず行くつもりであったが、何故か後回しになっていた。当時25,6であった私は、大学生が大挙してそうな店を嫌悪しており、気に入った店に繰り返し行ってしまう癖が遂に仇となってしまい、京都を離れる頃閉店を知ることになる。

そして本棚を漁り見つけ出した「京都のラーメンはカルチャーだ。」という一冊の本。  

2007年11月が初版となっている。
このガイドブックは本当に多大なる影響を受けた。
この頃まで私はラーメンというものが好きという自覚はなく、寧ろ和食が好みだったのもあり薄味派で、
蕎麦ばかり食べている様な人間だった。
一時期はヴェジタリアンだった時もある。

しかし、その食の遍歴に変化が訪れるのだ。

当時勤めていた職場の先輩に入社直後すぐの頃、北白川に行こうと誘われ彼の地へ連れて行かれる。
「あかつき」という名のラーメン屋だ。
京都の北東部である北白川は、一乗寺の隣にありラーメン屋が群れを成す地区であり天下一品の総本店もある。

京都のラーメンは、第一旭に代表される清湯豚骨醤油、ますたにや、来来亭のような鶏ガラ背脂醤油、天下一品や名門などの鶏白湯、そして横綱や、あかつきの白湯豚骨醤油に大きく言うと分かれる。

要は極めて伝統的で正統派の京都のラーメンだ。
かつての横綱や、現在も店を構える五条のラーメン名人といった、鼻腔に抜ける感じのディープな豚骨のテイストがあるライトタッチのスープというのは有りそうで無いもので、脳髄に直接刺激を与える快感があった。

私はこの時の事を今でも鮮明に憶えている。
こんなにうまいラーメンがあるのかと驚嘆し、翌日から狂った様にラーメンについて本やインターネットで調べる日々が始まる。

それほどまでに、あかつきのラーメンは特別なもので、今でも時折車を走らせて食べに行く。

「ラーメン あかつき」
〒606-8276 京都府京都市左京区北白川別当町13
075-702-8070
https://goo.gl/maps/h3S6FFZRZA6Rzcqq6

しばらくしてから、「京都のラーメンはカルチャーだ。」に出会う。
当時、四条河原町付近で働いていたので兎に角、終業後は飲み屋からラーメン、そしてクラブで朝まで遊んで1時間だけ寝てまた仕事みたいな事を繰り返していた。それでは飽き足らず、仕事後の飲み会の数を減らして、一人ラーメン屋を漁るという行動に明け暮れている時期があった。

当時、私は諸事情で自動車免許がなかったので移動は全て電車とバスだ。
19時に職場を出てバスで一乗寺まで向かい、帰りは叡山電車で戻り帰宅は24時頃などを毎日やっていた気がする。

しかし、私はラーメンの世界に入ったのが遅すぎたのだ。
どれだけ食べても追いつかない。
でも前に食べた店にもまた行きたい。
それを繰り返しているうちに行けなくなってしまう店が幾多にもなって後悔する羽目になった。

行けぬまま、後悔だけが残り今でもふと思い出す店が「東京ラーメン」だ。
後悔は先に立たず。


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