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柏木ひなた 「ここから。」〜アルバムレビュー

2022年12月に12年間在籍したアイドルグループ「私立恵比寿中学」(エビ中)を卒業し、ソロシンガーとしてのキャリアをスタートした柏木ひなたの1stEP「ここから。」

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元々エビ中は、近年になればなるほど「アイドル」という枠組みを外した楽曲が多くなっていましたが、グループ在籍時代から歌唱力には定評があった柏木ひなたは、シンガーとしての着実な成長を見せつつ、奇を衒わない脱アイドルの姿を見せてくれた佳作となっていると思います。

(Twitterの方にレビュー的なまとまった文章をUPしていたのですが、少し手を加えてこちらに投稿することにしました。だいぶタイミングがズレましたが。)

① From Bow To Toe

海外ソングライターチームによる60年代R&B/ソウル(参考:The Capitals - Cool Jerk)から発展したモダンR&B調(2000年以降の米ミュージカルに多く見られる曲調)で「ひなんなんなん」のリフレインが癖になる。紅の詩「ライズなう!」的な声色の変化をバリエーションも増やして大幅に発展させてる。


② 感情線

90年代J-Popに見られたアコギ主体のバンドサウンド、もしくは米オルタナロック勢のアコギ曲(参考:James Iha - Beauty)的な爽やかなサウンドに良メロディー。男声バックコーラス心地よい。エビ中時代より少し下の音域で少し力を抜いた歌唱が新機軸。歌詞はエビ中時代からのファンに向けた近況(心情)報告で泣かされます。


③ Those Days

近頃のJ-Popに珍しいロッカバラード。ロカビリーバンドのバラード曲的サウンドニュアンス。昭和の歌謡曲的「歌伴」のニュアンスも。やはりアン・ルイス「リンダ」(参考)を思い出します。②と同様エビ中時代より少し下の音域で伸びと安定感のある歌唱が魅力。日本語の発音の綺麗さは相変わらず素晴らしい。


④ BLOOM

これも①と同様に海外のソングライターによるリフ/コード進行一発のノリのいいロック。洋楽的なメロディーラインに日本語の歌を乗せる方法論や、定番的な語尾ニュアンス(K-Popの語尾上げとか)に頼らない多彩な歌い方。試行錯誤が感じられます。そして声質(発声法)が意外に英語詩に乗りやすいという新発見も。


⑤ next to you

日本人ソングライターによる曲だけど、Sigur Rós的オープニング(参考:Sigur Rós - Salka)からサウンドやコーラスに80-90年代の王道の米ポップスのサウンド(参考:Wilson-Philips - Hold On)のニュアンスを感じるバラード。歌唱の感情表現はエビ中時代には少なかった深い「泣き」のニュアンス。ライブでの超感情過多のパフォーマンスが今から想像できます。

ソロシンガーとして再出発した柏木さんですが、コレという方向性を決めずにいる段階かなと思うデビュー作になってるの思います。それだけに今後どのような特色を打ち出すのかとても気になります。

以上。