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第七章の63◎とってもお洒落な、江戸しぐさ

 「江戸しぐさ」は、江戸商人のリーダーたちが作り上げた行動哲学であり美学なのです。
江戸時代の人々の「思いやりの心」と「共生の姿勢」をとても良く象徴しています。
それらの素晴らしい「行動哲学」を最近では、でっち上げられた捏造だと言う者も居ますが、現代人にとって、特に上に立つ者には欠かす事の出来ない、すばらしい行動哲学だったと私は考えます。
 それは良き商人として、いかに生きるべきかという商人道で、人間関係を円滑にするための知恵でもありました。
だからこそ江戸時代は、260年以上もの間、戦争のない平和な時代が続いたのです。
以下では、実際の「江戸しぐさ」を具体的に見て行きましょう。
 まず「傘かしげ」とは、雨の日にお互いの傘を外側に傾け合い、お互いが濡れないように気を使ってすれ違うことです。
「肩引き」とは、道を歩いて人とすれ違う時にぶつからないように左肩を路肩に寄せて歩くことです。
 お互いが、半分ずつ良ければ気持ちよくすれ違えるのに、もしどちらか一方でも避けないと、ぶつかってしまい、お互いが嫌な思いをするのです。もし日本に中国人が増えると、街中での衝突が増えるかもしれません。
それは、中国人が相手を認知しても、自分から避けないという原因が大きいのだと感じています。
「時泥棒」とは、断りなく相手を訪問し、または、約束の時間に遅れるなどで相手の時間を奪うのは重い罪(十両の罪)にあたるという思い遣りの考え方です。
「うかつあやまり」とは、たとえば相手に自分の足が踏まれたときに、「すみません、こちらがうかつでした」と自分が謝ることで、その場の雰囲気をよく保つことです。ただしこの場合、「悪いのは自分でした」との謝罪を促す言葉でもあるので、それに対して謝罪しなかった場合には、要注意人物として、今後は相手にされなくなると言う意味を含んでいる事も忘れないで欲しいのです。
「七三の道」とは、道の真ん中を歩くのではなく、自分が歩くのは道の3割にして、残りの7割は緊急時などに備え他の人のためにあけておくことです。エスカレーターで右側(関西では左側)を空けるのは、この考え方が基になっているのだと私は考えます。ですから右側を空ける習慣に大賛成致します。
「こぶし腰」とは、浮かせ乗合船などで後から来る人のためにこぶし一つ分腰を浮かせて席を作ることです。
現代でも電車に乗る時のマナーとして常識ですが、こちらがそのようにしても、お構いなくぶつかりながら座って来る人も居るのです。
「逆らいしぐさ」とは、「しかし」「でも」と文句を並べ立てて逆らうことをしない事です。年長者からの配慮ある言葉に従うこと、ネガティブな言葉を口にしないことは人間の成長にもつながるからなのです。
また、年長者への啓発的側面も感じられるのです。
「喫煙しぐさ」とは、野暮な「喫煙禁止」などと張り紙がなくとも、非喫煙者が同席する場では喫煙をしない事です。
以上の様に、非常に狭い土地で、多くの、しかも異なる個性の人々が暮らすことになった江戸という場所では、「他人を尊重するマナー文化」が育ったのでした。
プライバシーの無い、長屋暮らしに必要なのは、他人の目を気にしながら静かに暮らすというテクニックでもあり、フレンドリーに付き合う一方、他人の身の上を必要以上に詮索しないのも大事だったのです。
また、江戸で暮らす者のマナーとして、名前や身の上を初対面の人に尋ねるのは失礼な行為だったのです。
 車で細い道ですれ違いをする際にも、お互いが少しずつ避ける事で、お互いがスムーズに気持ちよく、すれ違うことが出来るのです。
もし片方が避けなければ、たとえ片方が避けてもぶつかってしまう危険性が高いのです。
このようなトラブルが起きやすい狭い日本では、今でも車の擦れ違いや、合流などでは譲り合いをして、譲ってもらった方がウインカーを点滅させ、手を挙げて合図をする良い習慣があります。
この素晴らしい習慣は、外国人からも絶賛を浴びているのです。
先にも述べたように、残念ながら日本を訪れる中国人にはこれが出来ないので、ぶっかってトラブルが生じてさしまうのです。
 このような、ちょっとした江戸しぐさの習慣が、人々の生活を豊かにして、ストレスの少ない社会を維持していけるのだと考えるのです。


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