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ツイッターで見かけた違和感だらけの広告が逆に秀逸な件

ツイッターのタイムライン上で見かけたマッチングアプリ『タップル』の広告が、ある意味とても秀逸だと感じたので紹介したいと思います。

件の広告がこちら。麻雀デートを題材としているのですが、麻雀を遊んだことのある身からすると、なかなかに違和感を覚える内容となっています。具体的に腑に落ちない点は、以下の通り。

  • 門前役である七対子でのロン和了時には手牌は13枚存在するはずだが、女性の手牌はその半分の7枚しかない(少牌になっている)。

  • 「なんか二役って…カップルみたいだね」という例え。「二役」という麻雀用語は存在しないので、恐らく七対子を含む「2翻役」の誤記だと思うが、そうだとしても例えとしていまいち芯を食っていない(「2=カップル」という連想はあまりに安直すぎるため)。映像の背景に対子が描かれているので、「対子ってカップルみたい」の間違いか?

  • その背景の対子についても、北と一萬の対子がそれぞれ2セットずつ写り込んでいるが、一般的な麻雀のルールでは、同じ牌4枚を含んだ七対子の和了は認められない。もちろんこれらの対子が女性の和了形に含まれる牌だとは言及されていないものの、イメージだとしてもバラエティの少なさにモヤモヤする。

……といった具合です。また、麻雀とは関係ありませんが、男性の「タップルからカップルになるチャンス到来…?!」という謎理論も違和感に拍車をかけています。

では、このツッコミどころ満載の広告のどこが秀逸だと感じたのか。それは、この広告と掲載されている媒体(ツイッター)との相性の良さにあります。

ツイッターでは、広告は基本的に企業アカウントから投稿されたツイートの体を取ってタイムライン上に表示されます。そのため、ユーザーは広告に対し、通常のツイートと同様にリツイート(引用RT)やいいね、リプライといった操作を行うことができます。この仕様が、ツッコミどころを多く含んだ今回の広告とすこぶる噛み合っているのです。

広告に対してリツイートができるということは、通常のWeb広告と違いスクショや画像添付等の作業を行わずにノータイムで「変な広告流れてきたんだけど!」とコメント付きで紹介できるということ。事実、この広告には1000件以上の引用リツイートが行われており、その多くは内容の荒唐無稽さについて突っ込みを入れる旨のものでした。また、広告を大喜利の題材としている投稿もいくつか見受けられました。

しかし、この状況は裏を返せば「広告の視聴者に無償で拡散してもらっている」とも言えます。リツイートの意図こそツッコミや大喜利目的ではありますが、特に何もせずともユーザーが勝手に広告のインプレッションを増やすのに協力してくれるというのは、掲載元にとっては願ったり叶ったりでしょう。また、この広告は麻雀好きから見れば違和感こそあれど、炎上するような要素は特に含んでいないので、炎上商法として社会的責任を問われることもありません。

広告制作者が故意にツッコミどころを設けたのか、はたまた本当に麻雀のルールを知らない状態で作ったのかは定かではありませんが、どちらにせよ人のツッコミたい欲に訴求することで拡散に成功している、ツイッターの使い方がかなり上手な広告だと感じました。



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