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瓦礫の音(日記の練習)
2023年7月19日(水)の練習
近所の家が解体工事をしている。私の部屋にも音が届く。
朝はそれほどはやくないので、最近は目覚まし時計の音よりも先に朝八時から始まる工事の音で目が覚める。
かつて家のあったその場所を夜になって通ると、住宅地のなかをいったいどのようにしてはいってきたのか、それほど広くない敷地面積のなか瓦礫のなかに重機が置かれている。動いていない重機は、いつもどこか眠っているように見える。器用にアームを振って破壊していく重機の姿を想像する。
アントン・チェーホフの戯曲「桜の園」の最後の場面を思い出す。
はるか遠くで、まるで天から響いたような物音がする。それは弦の切れた音で、しだいに悲しげに消えてゆく。ふたたび静寂。そして遠く庭のほうで、木に斧を打ちこむ音だけがきこえる。
誰かの存在した痕跡、あるいは時間とともにふりつもった記憶が日一日と瓦礫と化す。なにかが決定的に終わる音が、どこか遠くのできごととして不思議なほど長閑に聞こえてくる。
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