ももいろ愛莉

 プロセカを初めて数か月でビビバス以外のメインストーリーと大半のイベントストーリーを読破した僕ですが、ユリイ•カノンさん書き下ろしの「イフ」と、いよわさん書き下ろしの「ももいろの鍵」はプロセカの数々のイベント書き下ろし曲の中でも、イベント内容やそのユニットの本質を最もよく表現した曲なんじゃないかなと思います。(他ユニの曲も含めるとどれが1番とかは正直選べませんけどね)メンバーが過去、未来についてどういう感情で向き合っているか、どういった人生観を持っているか、ということが本当にうまく表現されていて、聞けば聞くほど深く感心させられます。(歌詞解釈ストーリーのネタバレ諸々を含みますので苦手な方は以下読まれないことをお勧めします)本来はイフとももいろの鍵を絡めた話をしようかと思ったのですが字数の都合上、ももいろの鍵のみになります。なお、主は愛莉推しのため、感想が愛莉視点に偏っています。

 ももいろの鍵という曲は、Re-tie friendshipという桃井愛莉バナーのイベントの書き下ろし曲です。まずはRe-tie friendshipというストーリーに関して軽く振り返りを行っておこうと思います。

 アイドルグループとして再出発したMORE MORE JUMP!はアイドル大戦争の出演をきっかけにしてテレビなどの仕事が徐々に舞い込んでくるようになり、かなりタイトなスケジュールで動かざるを得なくなりました。そしてスケジュールの関係上断らなければいけない仕事が増えた結果、愛莉、雫の2人は単位制のメリットを活かして学校の時間にも仕事をする、残されたみのり、遥の2人は学校に残って合間の時間で配信の企画などを考える、という役割分担をするに至りました。しかし、その分担にモヤモヤが残るみのりは、普通科から単位制への移行を視野に入れるようになります。そんなみのりを見て心配になるのは遥と愛莉です。特に愛莉は中学の頃の親友と疎遠になってしまった苦い経験から、悩むみのりに対して前向きなアドバイスを伝えることができませんでした。そのことにモヤモヤした愛莉はみのりにより良いアドバイスをするために過去の自分と向き合い始めます。かつて仲の良かった友達、増える仕事と引き換えに疎遠になった関係、まだ友達でいたいのに愛莉自身も愛莉の友達もお互いに距離感が掴めなくなっていった苦い思い出。今のみのりに対する複雑な思い。そうして過去の自分、今の自分の思いとまっすぐ向き合った愛莉は、KAITO兄さんの「大切な想いは簡単に無くなったりしない」という言葉に背中を押された結果、勇気を振り絞りかつての親友との関係を修復することに成功しました。そして、最後の場面、単位制への移行を既に選択していたみのりに対して愛莉は1番伝えたかった大切なメッセージを伝える。 大まかに書くとこんな感じのストーリーです。

 さて、このストーリー展開を踏まえて「ももいろの鍵」の歌詞やメロディーの流れを見ていきましょう。本当に驚くほど完成されているんです。

 最初です。「泣いてるの?怒ってるの?幼い声が問う。心配いらないよ。笑えてるよ。返事は宙に浮く。だけ」
このフレーズはアイドルとして駆け出しでバラエティに出るようになった時期の愛莉が幼少期の愛莉と向き合っている場面だと思います。仕事が増えていった時期の自分の感情はどうだったのか。かつての友達と疎遠になって悲しむ愛莉、事務所の売り出しの方針に怒る愛莉、それでも理想のアイドルでありたいと笑顔を絶やさないようにする愛莉。彼女は本当に心から笑えていたのか。かつてのアイドルを夢見てた自分に自信を持って答えてあげることができません。そして、この幼い頃の愛莉というのが、単位制への移行を考える今のみのりでもあるのです。愛莉はみのりに対して前向きな返事を、笑顔でみのりの背中を押すことができなかった。みのりにとってのアイドルになってあげられなかった。そして、ここの部分のメロディは静かですが、この後の間奏でコロコロ転がるような、場面が移り変わるようなメロディが流れます。

 「あの日描いたもの 夢の色 しだいに濃くなる 1人じゃ無いこともわかってるよ 横を見ている」 MORE MORE JUMPの手探りの活動は徐々に広がりを見せ、夢は現実味を帯びてきます。その中で辛いことがあったとしてもそこには仲のいいメンバーのみんながいます。横を見るとメンバーがいる。何があってもきっとみんなで乗り越えられる。(そう思うからこそみのりを絶対に助けたい、というメッセージの暗示なのではないかなと思っています)

「ふと 振り返る 遠くなっていく 分かれ道はまるで ジオラマに 馴染んだ思い出のよう」
「ふと」の部分は特徴的なリズムをしています。現在のことを考える場面から、過去を回想する場面への切り替わりが効果的に表現されています。(一つ前のフレーズの仲間の存在を意識させるところから過去の孤独だった時代を意識させるフレーズへの自然な切り替えの役割も果たしているなと思います。現在→過去への切り替え⇔仲間→孤独への切り替え)今となっては遠い昔、岐路に立っていた時の自分がジオラマを見るように冷静に思い出される。ジオラマを見るように思い出される、ということは自分が選んだ道と、そうじゃ無い方の道(アイドルを全力でやっていなかった自分の人生)も冷静に見ることが出来る現在の愛莉の状態を表現しているのではないかと思います。愛莉はアイドル歴が長いので様々なアイドルの在り方を考えることが出来るのです。

Aメロ全体的にドラム(?)のリズムの取り方が独特なのは、複雑な割り切れない感情の表現を際立たせていて、何も考えずに聞いていても不安定な感じを受けるほどのインパクトを持たせています。

「いざなったクローバー この場所を選んで 輝くステージに立っている」
クローバーはモモジャンのモチーフです。(三つ葉のクローバーの花言葉は「希望」です) 希望を届けたい、という思いが、その希望がモモジャンを集結させてステージに立たせています。

「共に行くあなたの手 掴んだその手が
痛くないようにと願っているから」
これは愛莉のみのりに対する想いです。愛莉ら先輩組はアイドル歴が長いのでみのりを引っ張っていく立場にあります。しかし、みのりのアイドルに対する思い、その真っ直ぐさというのはモモジャンを結集させるほどの強さを持ち、今もなおその真摯な思いは愛莉たちの心を動かしています。スパルタ指導という形でみのりの手を握る愛莉ですが、真っ直ぐアイドルを夢見るみのりに出来るだけ理不尽な辛さを味わって欲しくない。そんなことでみのりの真っ直ぐな思いが歪んで欲しくない、と願っているんじゃないかと思います。遥✖️みのりが注目されがちですが、愛莉✖️みのり、これアツいですよ!

「かじかんで かじかんで その度に温めて」
愛莉は優しい女の子です。みのりが震えるような思いをする度に温めてあげます。みのりが真っ直ぐアイドルを目指せるよう支え続けます。

 「煌めくライトも 落ちる影も 全て愛していたい から」ここのメロディはザ•いよわさんという感じですね。煌めくライト、そしてその背後に必ず存在する影が、渦を巻くように落ちてゆくメロディラインによってうまく表現されています。少しズレたリズムの取り方はアイドルとしての葛藤を表現しているように感じます。過去を振り返る愛莉。今はこのことをどう捉えていいか分からない。正解だったのか不正解だったのか。でも確かなことが一つ。葛藤や悩みもあったし、アイドルの光も影も見たけれどそれら全てを愛していたい、受け入れて進みたい、という先輩アイドル愛莉の強い思いです。「愛していたい」の部分で音が力強くなってゆき、「から」の部分でもう一度立ち上がったかのように感じられるメロディラインでこの強さが上手く表現されています。

 「泣かないで 泣かないで そのためにそばにいる 震える指に この手を添えて 今鍵を開ける まで」 
この先辛い思いをするであろうみのりに泣いてほしくない愛莉です。これからを恐れるみのりが自分で鍵を開けるまで、みのりの手の震えが止まるまで、手を添え続けます。僕はこの部分の歌詞がトップクラスに好きなんですが、その中でも「そのためにそばにいる」の部分が好きです。正直なところ、愛莉含むみのり以外のメンバーはそれぞれソロでも十分な人気なので、モモジャンというグループにこだわる必要はありません。それでもこのグループにこだわるのはなぜなのか。それは、一度アイドルを辞めたにもかかわらずもう一度アイドルをやりたい、理想のアイドルを追い求めていきたいと思わせてくれたこの4人でもう一度輝きたい、この4人で支えあって活動したい、と全員が強く願ったからだと思います。みんなで支えあって、みんなで輝くためにそばにいるのです。間違ってもモモジャンの主役はみのりだけではありません。これは全員のアイドルストーリーです。皆がみんなで支えあっていくためにモモジャンはそばにいるのです。こういったモモジャンというグループの特徴(グループの強さでもあります)を踏まえると、「そのためにそばにいる」の部分の意味の深さが見えてくるように感じます。

 「やがて背負うもの 託す音 輪郭は濃くなる
一人じゃないことも 分かってるよ 前を見ている」
やがて背負うもの、今託しているもの、というのは愛莉と雫が二人で引き受けた、託された仕事のことだと取ってしまいたくなりますが、そうするとここでみのり視点に変わってしまうことになります。これは後の歌詞と照合してみても矛盾です。それではここでの「やがて背負うもの 今託しているもの」は何なのか。僕は、みのりの決断のことを指しているんじゃないかと思います。今、決断をする(託されている)のはみのりですが、その選択肢を教えたのは愛莉と雫です。選択肢を提示した愛莉たちにはある程度の背負うべき責任があります。みのりを支える必要があります。だからこその「一人じゃないことも 分かってるよ」という歌詞なんだと思います。1人じゃないから支え合わなければいけない、その重さの側面を表したかったんじゃないかなと思います。

 「ふと 振り返る 見えなくなってゆく 分かれ道はまるで 写真立てにしまった記憶のよう」
ここでまた愛莉は過去を振り返ります。遠い昔の記憶、分かれ道に立っていたころの愛莉の記憶は写真立てにしまった記憶(写真によって一部分だけが切り取られた記憶)のように断片的で簡略化されてしまっている。岐路に立っていた頃の愛莉が抱えていたはずの複雑な思いが部分的にしか思い出せない。それ故にみのりに良いアドバイスをできない愛莉のやるせなさを間接的に表しているのかもしれないと思います。(正直この部分の歌詞はももいろの鍵の中で最も難解なのでもっと良い解釈があるかもなと思います。)

 「いざなったクローバー その葉を手に取って 新たなステージを待っている 共に行くあなたの目 見つめたその目の 星が褪せぬように 願っているから」 モモジャンは希望を手に取り、それを届けるために新たなステージを目指します。皆の目が希望に輝く。その輝きを失って欲しくない。特にみのりはアイドル経験がありませんので、現実に直面して希望を失ってしまう、ということを愛莉は心配しているのではないでしょうか。皆に希望を取り戻させてくれたみのりの輝きはモモジャンの大きな原動力です。

 「眩しくて 眩しくて その先に手を伸ばして 触れたものも 受けた傷も すべて覚えていたい から」 眩しいほどの希望に手を伸ばし、さらにたどり着いた希望の更にその先に手を伸ばすモモジャンの4人。触れたものも受けた傷も、すべてがモモジャンを形作ると信じてすべて向き合いたい。そこのある葛藤と向き合うことの強さが上手く表現された部分だと思います。

 「負けないで 負けないで そのためにそばにいる 隔たりの奥 見えない世界まで 届いてほしい 夢」
支えあって負けないように励ましあいながら現実と向き合っていくモモジャンの4人。その先にある、見えない世界にまで届いてほしい夢、とは何なのか。二つの意味があるように思います。

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ここまで書いて2ヶ月放置してしまった。
進めようと思えば進められますがその気もないので投稿します。
アイドルとは奥深いものですね

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