父になりました その6(「クベース」卒業)

10月頭 昼

GCUに移ってからの展開が早い。今日で修正37週を迎えた3つ子たちはついにクベース(保育器)を卒業してコット(屋根の無いプラスチック製のカゴ)に格上げとなった。これの何が良いって、いつでも「抱っこ」出来るのだ。別にクベースに入っている時も助産師さんから「いつでも抱っこして良いですよ〜」と言ってもらっていたのだけど、四方塞がった箱に入れられて、厳重に温度管理されているのを見て軽い気持ちで手を出すことはなかなか難しくて、助産師さんが「〜しますか?」と声をかけられるまで何となく待ったりしていた。そして「。。お願いします。」と箱のフタを開けてもらって、服を着せるなどしてはい、と手渡される。我が子を抱くのに他人の許可が要るのか、となんだかギクシャクしてしまう。正規産であれば、生まれた直後に経験できることをこの1ヶ月あまりずっと待っている。もうすっかり慣れてしまったけれど、これは立派なハイリスク出産。他人とは少し違う。という事実をここでも実感してしまうのだ。やっぱり気分の良いもんではない。もちろん助産師さんに1ミリも罪はないけれど。

そういう「壁」のようなものが取り払われる感じを、最も味わえるのがこの瞬間。出生時に色々と付けられていた管や線はもう心電図以外は外れていて、目の前にはそろそろ頬周りもふっくらし始めた我が子達が、ただただベッドに寝そべっている。抱き上げ、顔を近づけて「こんにちわ」とか言ってみる。ごくごく普通な親子の触れ合い。三つ子達も少し変わった環境に好奇心を膨らませているようで、いつもより目を見開いている。そろそろ焦点の合い始めたその目がこちらに向いた時の可愛さはもう筆舌に尽くしがたい。

「壁」が取り払われた分、親の仕事が本格的に増えてくるのもこの時期で、この日は沐浴をやることになった。これまでは子供達の体温管理上、助産師さんがやっているのを見ていただけだったが、今日は初めての実務である。出産前に、市役所のパパママ教室で人形を使って練習したときは子供の腕を折らんばかりの粗い手さばきで先生にツッコまれた「お風呂」である。実の子の腕を折るわけにはいかない。緊張で手が震える、かと思ったが、この1ヶ月病院に通い詰めてひたすらオムツ替えや抱っこ、授乳などさんざん子供に触れてきたせいか、その扱いも小慣れたものですんなりこなすことが出来た。「初めてとは思えません」という助産師さんの言葉はおそらくお世辞だろうけど、さすがに3人分の経験が活きてきている気がする。3人とも比較的、風呂好きなようなのでそれにも助けられている気もする。

ここから先は

1,268字 / 1画像
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?