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豊かさとはパイの実を4000円でゲットすることである

その日は地元の友達と飲み会だった。

中学校からの友達と今でも飲む。彼らとは15年以上の付き合いだ。

メンバーは自分を含め4人。今回は友達の1人のオススメの「ふたご」という焼肉屋に行った。

初めて行ったけどふたご最高だった。店員さんが肉を焼いてくれて最高のタイミングで提供してくれる。肉自体がほんとうまい。

店も良かったしこの友達と4人で飲んで話すのが毎回すごく楽しい。

30歳を越えるとそれぞれ異なる人生を歩んでいる。

結婚して子供ができて家を買って立派に家族を養っているもの
海外で働きたいと目標を持って仕事をバリバリして稼ぐもの
仕事を頑張りつつ彼女との結婚を真剣に考えているもの
仕事はつまらないけど音楽にハマるもの


4人それぞれ違う人生を歩んでいるが、一緒に楽しい時間を過ごすことができる。

仕事を頑張っている友達の話を聞くだけで、自分も仕事頑張ろうという気持ちになり良い刺激をもらうことができた。

美味しい焼肉を食べた後は2次会にももちろん行く。2次会と言えば決まっている。ゲームセンターだ。

目的はマリオカート。僕らは集まった時はいつも決まってマリオカートする。


30超えたおっさんたちがゲームセンターでマリカーを何度もプレーする。控えめに言って近づかない方が良い。でも最高に楽しい時間なんだ。

毎回の接戦でゴール付近のデッドヒートでドキドキして、最終順位に一喜一憂する。

5、6回ほどプレーして、私たちはマリカーを終えた。

いつもならそこで解散になる。しかし、この日は違った。クレーンゲームのコーナーで足を止めた。

マリオカートのコーナーから出口までの途中にクレーンゲームコーナーがあるからだ。

クレーンゲームを見ていると、友達の一人がおもむろに百円をクレーンゲームのマシンに投入した。

クレーンの先位にはパイの実があった。プラスチックのバスケットに入ったパイの実が、横に伸びた棒にぶら下げている。

パイの実はすぐに取れそうだった。でも、パイの実の箱はクレーンでつかもうとしてもなかなかうまく掴むことができない。

よく見るとバスケットがかかっている棒にはゴムがついて滑りを悪くしているし、1本の棒で支えられているパイの実のバスケットはクレーンの力を加えると左右に回転してなかなかうまくクレーンに引っ掛けて取ることができない。


私たちはムキになった。

「何としてもこのパイの実を取る」

みんながそう思っていた。


クレーンゲームは1回100円だったけど、500円で6回できる仕組みだった。

僕らは迷わず500円をアホかというくらい投入し続けた。これがアラサーになるサラリーマン達の財力だ。
今のゲームセンターの機会はパスモとかの支払いにも対応しており、僕はパスモをかざしてはクレーンゲーム6回をチャレンジした。

そうすると、少しずつだが確実にパイの実のバスケットは動いた。ゴールに近づく喜びを知ってしまった僕らはもう止まることはできなかった。ここでやめられたらアホだと思っていた。

僕らは500円の投入を繰り返し、とうとうパイの実のバスケットを落とした。

バスケットが落ちた瞬間、僕らは歓喜しハイタッチをかわした。
その喜びは、ロシアW杯で日本が決勝トーナメントに進みベルギー戦で乾がゴールを決めた時にも勝るとも劣らないものであった。

これが僕らが力を合わせて取ったパイの実だ。

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4000円以上つかった。普通に考えたらバカらしい話だ。

でもお金の無駄だったのだろうか?

私は無駄だとは思わない。むしろ4000円でこれだけ楽しい時間を過ごせてむしろ最高のコストパフォーマンスだと思っている。

友達の動かしたクレーンがターゲットにカスリもしなかった時は息ができないほどに笑ったし、クレーンがパイの実にひかかって動くたびに私たちは興奮した。そんなエキサイティングな時間を過ごすことができたのだから全く無駄ではない。久しぶりに苦しくなるくらい笑った。大満足だ。


私たちはゲットしたパイの実を分け合い、最高の気分でそれぞれの家に帰った。

私は次の日の朝食用を買うためセブンイレブンに寄った。金の食パンを買うためだ。


これほんとうまいからみんなに食べて欲しい。

私はコンビニの中でパイの実を探してみた。実際はどれくらいの値段なのか気になったからだ。

お菓子コーナーでパイの実を発見した。

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163円。


4000円はやりすぎだったかもしれない。

サポートいただけたら幸いです。