【ライトノベル?】Vオタ家政夫#27

クビになったVtuberオタ、ライバル事務所の姉の家政夫に転職し気付けばざまぁ完了~人気爆上がりVtuber達に言い寄られてますがそういうのいいので元気にてぇてぇ配信してください~

27てぇてぇ・くねぇ『てぇてぇってぇ、色んな意味ですごいものなんだってぇ』

【105日目・リキッド視点】

「はいはいはい、いいの作ってくれたなあ。アイツは……」

 俺が教えられたURLを開くとそこにあったのは、【うてめ様はブラコンではなくド変態!?】というタイトルの切り抜き動画だった。
 それは、ユウユウユウというゲーム配信者の動画。
 可愛らしい男の子のアバターで、基本可愛いのに時々出てくるワイルドさが人気の配信者だった。

「ま、俺なんだけどな」

 俺はリキッドと言うメインの身体以外に何個も使い分けて配信をしていた。
 色んなキャラを演じ、需要を満たし、金を稼ぐ。
 実に効率的な稼ぎ方だった。

 その中の一つユウユウユウは、正直、ダルかった。
 子供っぽくしたら、馬鹿な女がホイホイ貢いでくるが、絡みがダルい。
 だから、そろそろ捨てるかと思っていた時に丁度いい捨て方を思いついた。

 高松うてめ。
 今、人気の配信者で、俺もリキッドとして一回だけイベント関連でリアルにあった事がある。
 女優ばりの美人さで、堪らない声。
 俺は、絶対にオトすと決めて、アイツに迫った。
 だけど、アイツは断るだけでなく、共演NGまで出してきやがった。

 ソイツとこの前会った。
 男と手を繋いで歩いていたんだ。
 丁度いいストーリーを作って、あの女を困らせてやろう。そして、弱ったその隙を突いて……。
 そう考えた。

『ボクね、この前びっくりしたんだ。ボクがね、テーマパークにママと一緒にお出かけしてた時にね。あの人気配信者のうてめさんに会ったんだ』
〈うてめに?〉
〈なんで本人だってわかったの?〉
〈嘘乙〉

『あのね、ボク昔ね、うてめさんにねDMで言われたことがあったんだよ。私の弟にならない? って。勿論、信じるかどうかはみんなの自由だよ? でも、ボクはそう言われて、うてめさんの弟になれるなんて嬉しいってお返事したんだ』
〈マ?〉
〈嘘つくなや〉
〈ユウ3は嘘つかない良い子〉

『そしたらね、うてめさんがね、おウチに誘ってくれてね。一緒に寝てくれたりしたの。でもね、なんだかその……寝てるときに、なんか怖くてね……やめて! ってボク言ったの。それでやめてくれたけど、うてめさんはね、それからボクに冷たくなって呼んでくれなくなったの』
〈はいはい〉
〈ふざけるな〉
〈ヤバいねうてめ〉

『でね、この前ね、うてめさんを見たら、うてめさんよりちょっと若いくらいの男の人を連れてたんだ。手を繋いで』
〈ウテウトやろ〉
〈ウテウトや〉
〈ウテウトだね〉

『そう、ウテウトだ。うてめさん、ボクの事、おとうとじゃなくて、ウテウトになってって言ってたんだ……。で、その人ももしかしたら、うてめさんのウテウトにされて怖い目に遭ってるのかなって……ううう……!』
〈病院行け〉
〈あたまおかしいんか〉
〈うてめヤバ〉

『ボクはもうボクみたいな怖い目に遭う人が居てほしくないから削除覚悟で言うよ。うてめさんは、ヤバい人だからみんな気を付けて!』

 この動画はここで終わって、機械音声の解説でうてめのヤバさを語る情報が流れる。ウテウトは本物の弟じゃなくて、ウテウトって言ううてめが作り出した偽の弟で行き過ぎたショタだって。

 勿論、嘘だ。

 でも、馬鹿な大衆もその大衆を食い物にしてるマスコミもこういうのに食らいつく。
 これだけだと意味はないだろうが、こういうのは地味に効いてくるはず。

 ユウユウユウはそれなりの登録者数だったから、きっと今日のうてめの配信でも言われることはあるだろう。
 俺は久しぶりにうてめの配信を見ようと開いてみる。
 すると、丁度いいタイミング。その話題がコメントで流れてきて、うてめが見つける。

『そういえば、なんかうてめが、自分の好みの若い男を漁っているとか、この前、テーマパークでうてめが男と歩いているのを見たって噂が流れているみたいだけど』
〈噂でしょ〉
〈あんなの信じるのはアホだけ〉
〈うてめ見損なった〉

 それでも、一定数のアホが信じる。
 そして、その言葉に心を削られる。

『半分合ってるわ。私、テーマパークで男と手を繋いで歩いていたわ』
〈マ?〉
〈大ぴらにしていいの?〉
〈あばずれが〉

 迷いなく言いやがった……!
 強がりを……! 馬鹿な女だ。意地をとりやがった。

『弟よ』
〈そういうオチwww〉
〈やはり〉
〈っていう嘘だろ〉

『今日はそれを話そうと思っていたの。弟とテーマパークに行った話。その日はね、100万人記念でテーマパークに行く約束をしてたの。で、敢えて一緒に家を出ずに待ち合わせしたの……。私、アレがやりたくって、ちょっと遅れて行ったの。そしたらね、ふふ……弟がね、めちゃくちゃかっこいい弟がね、待ってるの。私ちょっとそれだけで泣いちゃって……』
〈ウテウトーク!〉
〈長なるぞ、今日は〉
〈ごめん、コイツ本物や〉

 このあと、本気の声でずっと弟とのデートをうてめは話し続けていた。
 本気の声で、マジで引いた。
 なんだコイツ。

 コメントも引いてるか、興奮してるか。
 なんでこれで興奮出来るんだ? 頭いかれてんのか?

 結果、雑談配信のほとんどが弟とのデートの話で、誰も口を挟むことも出来ず聞き続けた。
 そして、その圧巻のブラコンっぷりにコメント欄にはてめーらと言われるうてめファンしか残っていなかったし、なんでか登録者数も増えていた。なんでだよ!

〈ウテウトてぇてぇ〉
〈ウテウトはてぇてぇ〉
〈最高のてぇてぇ〉

「うわああああああああああ!」

 なんだこいつら! マジで!
 なんでそんなにこの女の言う事信じられて、弟とはいえ、他の男の話されてて平気なんだよ! 意味分かんねえよ!

 てぇてぇじゃねえんだよ!
 なんだよ、てぇてぇって!
 マジで意味わかんねえ!

「あああああああ! クソがっ!!!! ……うぎぃ!」

 怒り任せにぶん投げたエナドリにはまだ中が入ってて、中身まき散らしながら跳ねたその缶は俺の足の甲に落ちてきて、俺は暫くすげー情けない恰好で唸り続けた。

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