【ライトノベル?】Vオタ家政夫#42
クビになったVtuberオタ、ライバル事務所の姉の家政夫に転職し気付けばざまぁ完了~人気爆上がりVtuber達に言い寄られてますがそういうのいいので元気にてぇてぇ配信してください~
42てぇてぇ『激重ムーブってぇ、傍から見てたら楽しかったりするんだってぇ』
【天堂累児視点】
朝。スマホの着信音で目覚める。
「はい?」
「おはようございます。ルイジさん」
やさしく澄んだ声。
【ワルプルギス】所属になったVtuber楚々原そーだの声だ。
「おはよう、そーだ」
「うふふ、おはようございます。今日からですよ。宜しくお願いします」
「了解。すぐ準備する」
「あ、ゆっくりでいいですよ。ただ、わたしがルイジさんにモーニングコールしたくて早めに電話しただけですから」
「あ、わ、わかった」
「はい、じゃあ、また後程」
笑顔が勝手に思い浮かんできそうなやさしい声。
俺は、体温が少し上がるのを感じながら、慌てて準備を始める。
今日から暫く、そーだと家事をすることになった。
新しい仕事で、ネット配信アニメでイケメンアイドルたちの寮母の役をやることになったらしく、その勉強のために俺の仕事を手伝いたいらしい。
しかし、そのストーリーどっかで聞いたことあるんだが。
とにかく。今日からということで、最初は朝食の準備だ。
そーだは朝配信もしているので朝が強い。
ニコニコしながらエプロン姿のそーだが立っていて、朝日に照らされたその姿にどきっとする。
整った顔立ちにすらっとしたスタイル。そして、闇堕ちそーだを経験したせいか、凄く清楚な雰囲気なのにどこか背徳的な色気を醸し出している。
「では、ルイジさん。宜しくお願いします」
「は、はい」
ワルハウス(ワルプルギスではこう呼ばれている)では、俺はみんなからルイジやルイジさんと呼ばれるようになった。理由は単純。姉さんがいるからだ。
だが、気のせいかもしれないが、いや、気のせいじゃない。俺の耳は鈍感主人公ではない。
そーだが俺を呼ぶ時は異様に熱っぽいのだ。
以前そーだに、先に言っておきます、と言われた。
『ルイジさんとお付き合い出来なくていいんです。ただ、ずっとお側においていただけないでしょうか』
ちょっと何言ってるか分からなかった。
そーだは、俺に助けられてから、ずっと俺に恩を返そうと尽くし続けているんだが、それが本当にやりすぎなくらいだ。
だが、それが本当に嬉しそうだし、やめるように言うと見るからに落ち込むので(しかも邪魔ではなく本当に助かってはいる)止めづらい。
まあ、そういう訳で、恋愛感情はあるが別に恋愛に発展しなくてもいいというとんでもない告白めいたものを言われ、そーだとの関係はめちゃくちゃ難しい立ち位置に居る。
そーだ自身は遠慮なく近づいてくる。今も凄く近い。花っぽいいい匂いがする。
「あの、近い、かな?」
「はい♪」
俺がそう言うとちょっと引いて笑顔で手伝いを始める。
従順すぎて逆にこわいんだが。
この子の場合は、マジで、命を捨てろとか言ったら捨てそうな危うさがある。
今のところ、結婚の予定もつもりもないが、そうなったら、本当に家政婦さん的についてくるのだろうか?
余計な事を考えながらも、習性とは恐ろしい。
手は朝食を作り続けている。
朝食というが、朝食時間は決まっていない。
そもそも、深夜配信を行っていたりしているせいで夜型のVtuberも多い。
だが、そーだのように出勤前や登校前のファンの為の朝配信を行うVtuberもいる。
ワルハウスでは大体こんな感じだ。
朝配信を行うし、割と規則正しい → そーだ、さなぎちゃん
ちょっと遅めだが昼前には一度起きる → 姉さん、ノエさん
深夜配信も多い夜型 → ガガ、マリネ
不規則 → ツノさん
なので、出来立てのものではなく、どの時間でも食べられるものを作る。
基本はお味噌汁かスープ。その上で、ごはん、パン、麺を準備しておく。
みそ汁やスープ、サラダとフルーツは事前に用意しておく。
なので、この時間は作り置きが多いので、やることは、配膳くらいだが、そーだはやる気に満ちていた。
「はい、あなた」
「ぶふっ!」
皿を渡しながら、そーだがそんな事を言ってくる。
「あ、すみません。なんか、そんな雰囲気で、なんとなくやってみたくて……」
「あ、うん……まあ、そんな雰囲気は、分かるよ」
「失礼いたしました、ご主人様」
「おーい!」
「うふふふ」
そーだは楽しそうに笑っている。
そーだは笑うようになった。
あの事件以降ずっと申し訳なさそうにしていたそーだが徐々に笑えるようになった。
それは良い事なんだが……
「あ、じゃあ、わたし、朝配信してきますね。今日はふざけすぎちゃいましたね。終わってからいただきます」
そーだが部屋に戻って行く。
その後姿はやっぱり清楚で美しいんだけどどこか色気があって……見惚れていると、彼女は振り返り、照れくさそうにそれでいて妖艶に笑う。
俺にとってとんでもない化け物が生まれてしまったのではないかと恐れおののいていた。
そして、こちらをジト目で見てくるあなた達。
俺のせいじゃないぞ。あと、見てる位なら手伝えば……いや、やっぱいいや。怖いから。
そして、ジト目組をテーブルにつかせると、迷いなく姉さんがテレビを配信に切り替える。
「あの、女狐……」
初めてなまで聞いたなあ、女狐。
そんな事を思っていると、姉さんに女狐と呼ばれている楚々原そーだが朝配信を始める。
『おはそーございます。今日もみんなと一緒に爽やかな朝! 楚々原そーだです。しゅわっこ(そーだファンのこと)さんもウテウト様も私の声で元気になってくれたら嬉しいです♪』
……そう、楚々原そーだは熱狂的なウテウトファンだと公言し、うてめの事をお義姉様と呼んで愛を大々的に叫ぶ大胆ムーブをかまして、女性ファンから人気を得ている特殊なVtuberになっていた。
そして、
「女狐が……!」
「そーだちゃん、最近ちょーしに乗ってんね……」
「しお分出させてやろうか」
「そーだぁああ……」
「そーださん……ずるい……!」
「楚々原め……!」
何故かそーだの朝配信の日だけみんな揃って見ている。
圧がヤバい。
爽やかな配信のようで、そーだの中でも、裏の面々もどろりとしたもの溢れてる。
そんな朝から始まるワルハウスの朝。
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