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『ダブドリ Vol.18』インタビュー07 平末明日香(トヨタ紡織サンシャインラビッツ)

2023年10月27日刊行の『ダブドリ Vol.18』(株式会社ダブドリ)より、平末明日香選手のインタビュー冒頭を無料公開します。

明るいキャラクター、スピード溢れるプレーが魅力のトヨタ紡織サンシャインラビッツ平末明日香。そんな彼女が最初に呟いたのは意外にも不安だった。意外なスタートからインタビュー中に彼女自身が見つけていく今を切り開くためのヒントとは。等身大の平末明日香に迫っていく。(取材日:8月2日)

[ Interview by 宮本將廣/Photo by 大柴壮平 ]

負けないっていう自信はあるけど、どこかでは不安で……。

宮本 今回、平末選手にインタビューしたいと思った理由が2つあって、1つが稲井桃子さん(元デンソーアイリス/21-22シーズン引退)なんですけど、少し前に会ったんですよね?
平末 会いました。私、ずっと稲井さんと話してみたかったんですよ。
宮本 僕も稲井さんのインタビューをダブドリでしたかったんですよ。それが叶わず、彼女は引退しちゃったからダブドリのnoteでロングインタビューをやらせてもらったんです。それがあって、今行かないとって思って。
平末 ハハハ。嬉しいです。
宮本 いきなりシビアな話だけど、今年のトヨタ紡織サンシャインラビッツはポイントガードの層がすごく厚い。伊波美空選手、都野七海選手の若手もいるし、坂本美樹選手もいて、ポジション争いが激化しています。
平末 そうなんですよね。結構悩んでます(笑)。
宮本 簡単に平末選手のことを振り返ると1年目に新人王、2年目はシックスマン賞を受賞しました。正直、そこまではチームメイトの東藤なな子選手と2人で……という印象が強かったけど、東藤選手は代表でもどんどん頭角を表して、リーグを代表する選手になった。だからこそ、平末選手が今どんなことを考えているのかを聞いてみたいなと思ったのが2つ目の理由です。
平末 うわー、そういう感じですね(笑)。今考えていることでいうと、若いポイントガードが入ってきて、みんなすごく上手だから、「すごいなあ」って思っちゃってます。私って超がつくネガティブで……こう見えて(笑)。無理かもって思うことがめちゃくちゃあるんですけど、やっぱり根は負けず嫌いだし、入ってきたばかりの選手に負けないっていう自信はあるけど、どこかでは不安で……。ルーカス(・モンデーロ/トヨタ紡織サンシャインラビッツHC)は「焦らなくていいよ」って言ってくれるんですけど、自分は今年が勝負だって思っているんです。
宮本 焦らなくていいよと言われても、やっぱり焦ってる?
平末 かなり焦ってますね。昨シーズンは納得のいく試合がほとんどなかったから、今年にかける想いが強いし、やっぱり結果を残さないと。でも、そういう気持ちでやっていると上手くいかなかった時にすごく落ち込むし、気持ちの波が激しくて……。いろいろ難しいです。
宮本 サマーキャンプ(以下サマキャン)でその感じはすごく見えました。
平末 みんなは、「まだサマキャンだから大丈夫」って言ってくれるんですけど、自分は全部が大事なんですよ。しんどいです、本当に……。

次こそはっていう気持ちが空回りして、負のサイクルっていうのがサマキャンでした。

宮本 サマキャンは振り返ってみてどうですか?
平末 プレー面でもいろいろ思うことはあるんですけど、そもそも久しぶりの試合をたくさんの人が見にきてくれました。終わってからよくなかったなって思ったのが、私って調子のいい時はファンの人にも笑顔で応えられるんですよね。でも、今回もそうなんですけど、調子が悪いと自分にいっぱいいっぱいになって何もできなくなっちゃうんです。そういう姿を見たファンの人たちが「大丈夫かな?」ってSNSとかに書いてくれてたりするから、それを見て、「またやっちゃったな」って思うんですけど、なかなか上手くできないんですよね。
宮本 チームとしてもヘッドコーチが変わったから変化があって、まずは求められていることをこなしながら、どう自分の良さを出していくのかを悩んでるかなと感じました。結果的にあまり上手くいかなくて、交代でベンチに戻る時には一点を見つめながらハイタッチして、一点を見つめながらベンチに座って……(笑)。
平末 そんなとこを見てたんですか? えー、気をつけよう(笑)。
一同 ハハハハハ。
宮本 ベンチでの座り方も、もともと小さいのにそんなに小さくならなくてもって(笑)。
平末 友達にも言われました(笑)!
宮本 プレー面だと、いくつかのベースとなるコールから派生すると思うんだけど、ポイントガードが最後にもらうプレーとかも、どのタイミングで自分がシュートを打つべきかをかなり探っていた印象がありました。
平末 そうなんです。私がここで打っていいのかなっていう感じはありました。
宮本 そこはリーグまでに整えていくと思うんだけど、東京医療保健大で恩塚さん(恩塚亨/現女子日本代表ヘッドコーチ)から習っていたから、なおさら「ここでシュートを打ってね!」っていうのが欲しいのかなって思ったんだけど。
平末 正直、それはありますね。サマキャンの初日、私としてはシュートチャンスがあまりなかったんですけど、ルーカスからは「いつも練習で打つのに、全然打たないじゃないか」って言われてちょっとグサっときて……。だから、2日目はめっちゃ打ったんですよ。 そしたら、「いいぞ」っていう感じだったんです。だけど、ディフェンスが上手くできなくて交替とか、本当に難しかったです。
宮本 ヘッドコーチが大事にしていることや、平末選手に求められていることはどんなことなんですか?
平末 スタートとベンチでは役割が違う。ベンチから出て、ディフェンスでやられちゃいけないよってルーカスはよく言いますね。ただ、ベンチでずっと座っていて、急に出されても難しいっていうのが本音で、相手は身体が温まっているし、私は緊張しいで結構ガチガチになっちゃうから、上手くいかないことが多くて……。悔しいなって思って、次こそはっていう気持ちが空回りして、負のサイクルっていうのがサマキャンでした。
宮本 平末明日香ってぱっと見だと、凄く感性でプレーをしているようだけど、実はすごく周りを見ていて、その中で自分の強みを発揮できる選手だと僕は思っています。やっぱり一番影響を受けたのは恩塚さん?
平末 影響を受けたのは恩塚さんですね。それこそ、自分らしさってなんだろうって考えた時もありました。昨シーズンは割と自分を殺してプレーしていたところがあって、正直に言うと苦しかったです。周りから「自分らしくやったほうがいいよ」って言われたこともあったけど、「自分らしくって何?」って思っちゃったり……。チームも毎年変化していくから、そこにアジャストしながらも、私の軸は恩塚さんの教えだから、そこはブレないようにしたいけど、ブレちゃってる。自分らしさってなんですかね?
宮本 え、僕に聞きます(笑)?
平末 ハハハ。難しいですよね。私、ポイントガードは向いてないと思う。
宮本 自分が自分らしくいられたのは、いつとかあるの?
平末 やっぱり2番で出ているときは、本来の自分だなって思います。でも、大学の時からサイズはなかったし、Wリーグに入ったら1番をやろうって決めて、大学の3年、4年の時もプレーをしていました。紡織に入ってからは上手くいかないこともあるって思っていたけど、2番で出る機会もあったから、その時は本来の自分を取り戻した感じがあって……。本音で言えば、2番がいいなっていうのはあります。
宮本 だけど、現実はそうも言ってられないなってところですよね。
平末 そうですね。向いてないとは思いつつも、1番として頑張りたい気持ちはありますね。

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