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『ダブドリ Vol.7』インタビュー06 JIRO & 秋葉直之

2019年9月28日刊行(現在も発売中)の『ダブドリ Vol.7』(ダブドリ:旧旺史社)より、ALLDAYコミッショナーのJIRO氏、プロデューサーの秋葉直之氏のインタビューの冒頭部分を無料公開いたします。インタビュアーは編集長 大柴壮平。なお、所属・肩書等は刊行当時のものです。

ジョーダンコートで試行錯誤した経験が、代々木公園でのALLDAY開催につながっていった(秋葉)

大柴 ALLDAYが始まったきっかけから教えていただけますか?
JIRO ALLDAYの歴史は代々木公園と共にあるんです。最初はBALL TONGUEの店主のMUЯ(BALL TONGUE営業日誌連載中。P.147参照)が、ゴールをトラックで代々木公園に持ち込んで、毎週末バスケをしていて。MUЯはチルというかピースな雰囲気だから、公園の管理人さんともうまくやっていたっていう土台がまずあった。
秋葉 移動式のゴールを荷台に積んで持ち込んでたときに、たまたまナイキの人が通って話し掛けられたらしい。
大柴 へえー。
秋葉 そこからコートを寄贈するプロジェクトが、CSRとしてナイキの社内に立ち上がったんです。日本の公園って球技禁止、スケボー禁止が多くて、自由にスポーツをやれる場所がないじゃないですか。ナイキはスポーツブランドの社会貢献としてそれを変えていこうとしてた。その流れで、渋谷区の美竹公園にジョーダンコートが寄贈され、そして代々木公園につながっていった。
JIRO ギバちゃんがそのとき、ナイキジャパンで働いてて。
秋葉 そう。代々木のコートの寄贈のときはナイキ側の担当だったの。でもその前からKOMPOSITIONっていうALLDAYの主催になってるNPOをやってたんです。若い人間のやりたいことでレールが敷かれてないものを、若い人間が自分の理屈でやっちゃったりとかすると、真綿で首を締めるようにどんどんスケボー禁止になっていったりとか、グラフィティとかだと逮捕者が出ちゃったりするじゃないですか。KOMPOSITIONは、そういうのを行政や地域の理解を得ながらやってく、みたいなNPOなんですね。そのNPOが、ジョーダンコートの指定管理人になったんですよ。
ジョーダンコートをナイキが寄贈したときに、渋谷区には公園のコートっていうフレームがなかったので、スポーツセンターみたいに在勤在学の人が登録すると使えるというオペレーションになりそうだったんです。普段は施錠されてて。
大柴 え、公園にあるのに(笑)?
秋葉 当時あの近くに都営住宅が建ってて、近隣住人からは若い人間が集まってくることに危惧があったんです。ごみが増えたりとか、騒音があったりとか。でも、ナイキとしては公園というパブリックな場所につくってるのに施錠されてたらあまり意味がない、と。
大柴 CSRにならないですもんね(笑)。
秋葉 それで、間を取って僕らKOMPOSITIONが指定管理を渋谷区から受けて、来る日も来る日も鍵を開けて、公園のごみ拾いしたりとかをするようになったんです。で、美竹公園でそういうことをやっていたら、翌年今度は代々木公園に寄贈するっていう流れになったんです。ジョーダンコートができたときから、最初のイメージとしてはラッカーパークみたいにしたいっていうビジョンがあったんですよ。でもジョーダンコートの経験から、コートだけだとそうはならないんじゃないかという知見を得て、大会みたいなものが必要なんじゃないかと思ったんです。恐らく何か帰属意識のようなものがないと、ごみを捨てたりするんですよね。どんなに若い子でも、近所の知ってるおじさんちの前とかにはごみを捨てないじゃないですか。それってご近所の帰属意識があったり、顔が見えるから。
大柴 はい。
秋葉 バスケコートもそうで、ここに帰属意識があるボーラーたちが生まれてくると、自然とそういうごみの問題を含めて、モラルの問題は変わってくるんじゃないかと。そういう流れで、2005年8月にALLDAYが始まったんです。
大柴 形式としては最初からオープントーナメントだったんですか?
秋葉 公園で大会をやる上で、あくまでオープントーナメントであるっていうことが、当初はすごく大事だったんです。そもそも大会をやること自体が、東京都感覚からすると難しかった。
大柴 へえー。
秋葉 ただ、ナイキがバスケコートを寄贈したときに、10年ぐらい契約があったんです。ナイキとしては、10年はそこでマーケティングイベントみたいなのができますよって権利を保有する意味合い。東京都としては、ドネーションは受けたけど補修とか修繕をする予算はなかったから、そういう場合はナイキさんやってくださいね、という防衛的な意味合い。公園とナイキの間にKOMPOSITONというNPOがいたことで、行政と民間がうまく連携できたように思います。

バスケにクレイジーじゃないメンバーがいたことで、運営のバランスが保てた(JIRO)

大柴 ちなみに、お二人の役割分担は?
JIRO ギバちゃんがプロデューサー。
秋葉 そうですね。行政やナイキとの連携しながらフレームをつくるのが僕の担当。JIROさんはコミッショナー。
JIRO 僕は競技面を担当してます。
秋葉 ALLDAYは独自のルールなんで、競技の部分をやってくれてるのと、アメリカのストリートカルチャーにも詳しいので、外国人チームとのコミュニケーションもJIROさんの役割ですね。あとは今FLY(ファッションとカルチャーにフォーカスしたバスケ雑誌)をやってる秋元凛太郎。凛ちゃんは元々はナイキの社員で、ナイキ側の担当者だった。
JIRO 実は僕を誘ってくれたのも凛太郎なんです。彼はナイキを辞めてABOVE(FLYの前身となった雑誌)をやり出してからも一緒にやってくれてて、今は遊軍という感じで特に担当はないんですけど、ALLDAYのファウンダーの1人、みたいなイメージです。あとはTeam-SのANちゃんがオフィシャルを含む運営面担当ですね。それと深見(展啓)さん。深見さんは凛太郎のFLYでも写真を撮ってるフォトグラファーさん。
秋葉 クリエーティブはずっと加藤(芳宏)がやってくれてる。僕とか加藤は、全くバスケをやらないんです。
大柴 ああ、そうなんですか。
秋葉 バスケの背景がないんですよ。JIROさんはアメリカだし、MUちゃんは90年代からだし。日本のバスケを取り巻くいろんな人たちが、フラットにミックスされてる感じなんですよ。
JIRO 確かに。
秋葉 (フライヤーを見ながら)ALLDAYのこういうクリエーティブが秀逸なのは、バスケを好きじゃない人がやってるからだと思うんです。
加藤 いや、バスケ好きだよ(編集部注:加藤さんは収録中、隣のスペースで仕事をしていた)。
一同 ハハハハハ。
秋葉 いやいや、好きではないでしょ。
加藤 嫌いではない。
秋葉 そうだね。嫌いなんじゃなくて……興味がない。でも、逆にそういう人たちが興味を持てるものになれば、バスケがもっと一般層に広がるなあって思ってるんです。
JIRO それ、すごく大事ですよね。全てのジャンルはマニアがつぶすっていうじゃないですか。要は、好き過ぎると周りが見えなくなっちゃうんですよ。本来はバスケが好きな人が客観的に見て、初心者やバスケに興味ない人がどう思うかという目線を持ってやれればいいんですけど、難しい。ALLDAYの場合はギバちゃんとかカトちんみたいなバスケにクレイジーじゃない人たちがいるおかげでバランスがいいのかなあと思います。

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この後も、日本にストリートの土台を作る・育てて続けることについてなどたっぷりお話しいただきました。続きは本書をご覧ください。

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