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SoftBank CUP 2024 東京大会 男子日本代表 vs 韓国 GAME2 佐々木隆成インタビュー

歩いてきた彼は、どこかホッとした笑顔をしていた。遅咲きの日本代表と注目された彼は選考レースを最後まで戦い抜いた。今回の代表合宿を一番長く過ごした彼が、ミックスゾーンでこぼした本音はこれまでで一番佐々木隆成らしかった。(取材:宮本將廣)

バスケと向き合うことに一番苦しんだ時間だった

宮本 (囲み会見で自分の場所を探している佐々木選手を見つけて)こっちこっち(笑)!
佐々木 あー、おったおったぁ!(笑)
一同 ハハハハハ。
宮本 ひとまず2ヶ月ぐらいかな? 一区切りということでお疲れ様でした!
佐々木 ありがとうございました!
宮本 まず最初に聞きたいことがあります。この代表での2ヶ月は佐々木隆成にとってどんな時間でしたか?
佐々木 そうですね……本当に必死でした。やっていたときはあまり感じていなかったんですけど、今区切りがついて感じるのは、今までで1番バスケットに向き合った時間だったというか……。綺麗事になっちゃうかもしれないですけど、今まではバスケが楽しいっていう感じで、「プレーしたいな、試合したいな」って感じでやってきたんですよ。
宮本 うんうん。
佐々木 でも……そうですね。語弊を恐れずに言えば、あんまり楽しいという感覚はなくて、本当に必死でプレッシャーもめちゃくちゃありました。正直に言うと、あんまり表に出たいタイプの人間ではないんですよ。良くも悪くも注目度が上がって、いろんな形でメディアに出させてもらえることが増えたからこそ、もっとバスケに向き合わないといけないなと感じることが多かった。学べたこともめちゃくちゃあった反面、バスケと向き合うことに一番苦しんだ2ヶ月だったなと思います。
宮本 これは俺の印象だけど、ダブドリVol.20からいろいろ話をさせてもらって……。そもそも俺は佐々木隆成を深く知っているわけではないんだけど、北海道から今日まで取材をさせてもらう中ですごく感じたのが、なんとか自分を保とうとしていたなって。
佐々木 それはめちゃくちゃありましたね。ほんまにありました!
宮本 言い方がいいのか悪いのかわからないけど、プレッシャーに押し潰されないようになんとか自分を保とうみたいな。
佐々木 そうですね。でも、そういうのを乗り越えてっていうんですかね。僕はアドレナリンが出た方が動きが良くなるタイプなんですよ。疲労を感じなくなるというか、スーパーサイヤ人じゃないですけど(笑)。そういうモードが僕の中であるんですけど、今日はちょっとから回っちゃいましたね。試合前から身体が軽かったんですよ。それがいい方に行くときもあるんですけど、今日みたいに悪い方向に行ってしまうこともあって……。
宮本 それは、「今日が最後だから、ここで全部出し切ろう」みたいな感じがそういう感じになったの?
佐々木 あんまりそういう気負いはなかったんですけど……。
宮本 シンプルに、「今日は身体が軽いな」って感じ?
佐々木 そうですね……でも、やっぱり注目度も上がったので、気負いしたところがあったのかもしれないです。あんまりそういう経験をしてこなかったので、そこをコントロールできなかったというか。だから本当にいい経験になりましたし、今後こういう場面ではどうやって対処するべきかっていうことを学べました。いろんなプレッシャーとの向き合い方とかも考えながらやっていきたいと思いましたね。

チャンスはあるよってことを示すことができた

宮本 ちなみに……井上雄彦先生(スラムダンク著者)には気づいた?
佐々木 (食い気味で)いやマジで!おとといですよ!
宮本 ハハハハハ!
佐々木 ほんまに!おとといはベンチ外だったじゃないですか。試合前にトムさんの話を聞いてたら、目の前にいらっしゃって……。ちょっとダメなんですけど、マジで泣きそうになっちゃって(笑)。
宮本 ベンチ裏のところね?
佐々木 そう!マジで泣きそうになって、「うわー」って。「井上先生おるやん」って。しかも今日の朝にチーム練習でアリーナに来たときもいらっしゃったんですよ。みんなはバスを降りて握手してもらいに行ったりしていたんですけど、俺は握手をしたらバスケを辞めないといけないから!
宮本 確かに、そうだね!ダブドリ的にはね(笑)!(詳細はダブドリVol.20をお読みください)
佐々木・宮本 ハハハハハ!
佐々木 そう、そういうね(笑)!結果を出してから、いつか井上先生にお会いするっていうのが僕の夢なんで。
宮本 今のままだと約束を破ることになっちゃうと。
佐々木 そうなんです!マジでグッと堪えて、それをモチベーションにというか。もっと成長して認知してもらって、井上先生から声をかけてもらえるぐらいの選手になるまで頑張ろうって思いました。だから、僕はあえて横目で見ながら、「まだだ!」ってめっちゃ堪えて。
宮本 ここで行っちゃダメだってね!
佐々木 気持ちを抑えましたね。でも、ほんまに気づいたときはびっくりしました。そういうことも含めていい経験ができたなって思います。
宮本 でも、なんて言うのかな。注目されるということはそういうことなんだね。
佐々木 そうですねー……苦しかったですねー(笑)。
佐々木・宮本 ハハハハハ。
佐々木 正直あんまり注目されていない中で、みんなを驚かせたいっていう気持ちはずっと持っていたんですけど、もう……違いましたね。今までとは違う見方をされている感覚っていうんですか?本当に不思議な感覚でした。
宮本 しかも昨シーズンには中地区で優勝して、そこのメインガードっていう前知識もあるしね。どんなプレーをするんだっていう期待も日本中からあっただろうし。
佐々木 そうですね。でも、本当にありがたいです。こんな経験はしたくてもできないじゃないですか。僕は中学も高校もエリートでもなんでもなくて、注目されていない人生を歩いてきた。故にそういうことに慣れてないというか……難しかったですね。
宮本 そうやっていろいろな経験をした中で、これからオリンピックを戦う12名が選ばれます。メンバーがどうなるか、そこに選ばれるかは一旦置いておいて、佐々木隆成はこの代表活動経験を経て、これからどうなっていきたいとか感じたことはある?
佐々木 まずは三遠で優勝したい。それがより明確になりました。
宮本 それはこういう環境で、プロフェッショナルなメンバーとやることでより明確になった?
佐々木 そうですね。トッププレーヤーたちがどういう風にバスケと向き合うのか。そしてそこ以外もですよね。メディアの方だったり、ファンの方からどういう見られ方をされていて、どういう見せ方をするのか。今更かもしれないけど、佐々木隆成というプロ選手として何が必要なのかを本当に考えることができました。なんて言うんだろうな、バスケのときの僕と本来の僕とは違うところがあるんですよね。
宮本 はいはい。プロ選手としてのキャラクターを作らないといけないというか。最初の話にも重なるけど、このクラスで戦っていくためにはそうやって自分を保つことが必要というか。
佐々木 本当にそうですね。
宮本 一方で、天理大学からはこの最終選考までに2人のOB(佐々木選手と川真田選手)が残りました。これはものすごいことだと思います。吉井選手も含めれば関西リーグから3人の選手が残ったわけで。明日から札幌で新人インカレがあるけど、天理大学が関西の代表として出場します。3人が頑張ったということは、関西リーグで頑張っている後輩たちにとってひとつの道標にもなったと思うんだよね。
佐々木 そうですね。今はまだ注目されていない選手がたくさんいると思うし、プロを目指そうかどうしようかって迷っている選手もたくさんいると思います。それは関西だけでなく、関東もそうだし、他の地区もそうですけど。僕も全然注目されていなかったところから、いろんな人のおかげでここまで来れました。だからチャンスはあるよってことを今回示すことができたと思うし、もっともっとそういう選手たちに希望を与えられる選手になりたいなと思いました。
宮本 ありがとうございます。綺麗にまとまりました(笑)!そして、今回の代表活動を通して、本当に感動させてもらったわ。俺が(笑)!
佐々木 いやいや、本当にありがとうございました!
宮本 北海道のメンバーに入ったときはめっちゃ興奮したもん。
佐々木 ハハハ!北海道はめちゃくちゃいいところだったなー。でも、本当に頑張ったなって思います。マジで自分を褒めてあげたいですね。

最後に

今回で日本代表取材は最後になります。拙いやりとり、文章も多かったと思いますが、最後までお読みいただきありがとうございました。そして、ものすごい心理状態、肉体的疲労の中、インタビューに答えてくれた選手の皆さんに改めて感謝申し上げたいと思います。
このインタビューを通じて、日本代表の目指すものが少しでも伝われば嬉しいですし、何より選手たちがどれだけのプレッシャーと戦って、メンバー選考というサバイバルを過ごし、オリンピックに向かうのか。オリンピックというものがどういう舞台なのかを、僕自身も初めて知ることができました。
きたえーるの前日練習で、佐々木隆成選手に会ったときのことを鮮明に覚えています。この表現がいいのかわかりませんが、同窓会で数年ぶりに友人と会ったような感覚でした。僕自身も初めての代表取材、そして彼も初めての代表合宿と強化試合。どこか重なるところがあったのかもしれません。
彼にはダブドリVol.20でインタビューをさせていただき、「ほとんど亮輔(本村亮輔/熊本ヴォルターズ)の話やん!」と言われて、それでも亮輔の話を振りまくりました(笑)。
初めて会って話したのに、初めての感じがしなかったのは、佐々木選手の人柄と本村選手の人柄だと、心からそう思っています。
他社メディアとのやりとりを見る中で、このインタビューにもありましたが、彼がなんとか自分を保とうとしている姿がすごく印象でした。だからこそ、怒られるかもしれないけど、僕はもう割り切ってしょうもない話をしようと(笑)。それがダブドリという媒体の良さでもあるし、代表活動という想像できないサバイバルを戦う彼のためにもなるのかもしれないと思いました。
力になれたかはわかりませんが、僕自身も彼からたくさんの学びと勇気をもらいました。心からの感謝とこれからの活躍を期待して、自分自身もこれからの活動と向き合っていきたいと思います。

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