燃えるゴミの日

 今日もようやく仕事が終わった。時間は午後6時。実を言うと途中までしかできなかった仕事があるが、定時で退社してきた。普段ならこの時間に帰るときは、駅ビルに寄り道でもするところだが、今日は真っ先に帰らねばならない理由がある。そう、私は「玄関の鍵を閉めたか」忘れてしまったのである。
 不安であれば戻れば良かった。しかし、けさは少し寝坊して時間の余裕がなかった。さらに、鍵を閉めたか忘れてしまう最大の理由は「燃えるゴミの日」だったからだ。そのため私は家を出る時、「燃えるゴミを捨てる事」に全神経を集中させていた。「全集中、ゴミの呼吸」である。無事にアパートの前にあるゴミ置き場にゴミを出した私は、意気揚々と駅に向かい電車に乗り込んだ。まさにその時、「玄関の鍵を閉めたのだろうか」という思いに駆られたのだ。その後はずっとそのことが頭から離れず、仕事に集中できないし食事も喉を通らない。玄関に置いているガジュマルの「マルちゃん」に確認してくれと言いたいが、植物にそんな思いが届くはずもない。挙句には不安が募り腹痛を感じていた。
 そしてなんとか業務をこなして定時退社し、帰りの電車に乗ったのだ。会社から家までは約40分。駅からアパートまでは徒歩5分の駅近だ。電車を降り、改札を出たところで腹痛が強くなってきた。しかし、アパートまでは5分。私は家に着いてからトイレに行くことにした。もうそこの角を曲がればアパートは目の前だ。不安と腹痛に襲われながら私は急いだ。そして角を曲がりアパートの前にたどり着いた私は、力なくその場に倒れ込んだ。

「燃えるゴミの日」は明日だった。

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