俳句結社の良いところ、悪いところ

 結社という組織構造があります。前に少し書きましたが、特に俳句では自由な議論ができない構造的原因になっていると思われますが、組織論のところは置いておいて、実際に俳句で結社と小さい雑誌と両方経験していると、どちらも良し悪しで、就職活動をする時に大企業に就職するか、中小企業に就職するかを選ぶような感じの選択肢になっていると思います。

結社と個人活動の良いところ

 俳句における結社・個人活動のそれぞれの基本的な態度は以下の通りです。

  • 結社……作品の評価は結社が責任を取る

  • 個人活動……作品の評価は作者が責任を取る

 結社は大抵、同人誌よりも所属人数も多く、色々な人がいます。結社次第なところがあると思います(そんなに例を知らない)が、大抵は上達の方法を先生や先輩が教えてくれます。初心者向けの句会に行くと、丁寧に指導を受けることができます。初心者は結社に育てられながら、結社の文体を獲得していくのです。基本的には、結社が作者に対して責任を取ります。それは裏を返せば、自分の言葉は結社のものになってしまうということでもあります。それでも、結社にサポートしてもらう方がいいと思う人や、俳句をやってみたいけど自分の何を表現したらわからないとか、独学より友達や先輩と一緒に勉強した方が楽しい人は結社の方が向いているように思います。あと、最近では個人活動に限界を感じたときの避難先としても結社が受け入れられているようです。
 結社選びは、俳句の先生が言っているように、年鑑の例句が面白いところや、見本誌を取り寄せて面白かったらやってみると良いと思います。知っているミスマッチの例を挙げれば、先生がメディアに出ている時の印象で決めない方が良いでしょう。メディアの顔と組織での顔は違うのが相場です。失敗しながら、先生の相性を覚えるしかないので、回数は忘れたけれど、1回2回くらいの失敗では失敗のうちに入らないみたいですね。
 同人誌、個人誌など、個人活動が向いている人は、結社と裏返しに、自分で表現したいことが明確に決まっている人のようです。人に一から教わるのが嫌で独学の方が合っているとか、人に阿らず、自分の言葉に対して自分で責任をとりたいと思うのであれば、個人活動を中心にした方がよさそうです。結社も、質を担保してくれても、異論や飛び抜けた意見が出にくいというところがあります。「それは、表現者としてどうなのか」と思ったら、個人活動を念頭に自分の意見を述べて、考えの近い人と繋がったり仲間になったりするというのも一つの手のようです。

結社、個人活動の悪いところ

 結局、結社誌は結社のものだから、本当はこの句を世に出したくても選者が首を横に振れば世に出ないものです(たしか、自分の言いたいことを無慈悲にカットされるのは俳句しかないと何年か前のSNSに書いてあったのを記憶していますが、本当でしょうか)。俳句結社は昔から厳選傾向で(第二次世界大戦中には既に厳選傾向はあったみたいですが、そのはじまりについては俳句史に疎いので、すみませんが諸賢にお任せします)、厳選によって選者の能力が問われると同時に、選者の権力が強いように思います。
 個人活動が必ずしもいいかというと、そうでもなく、個人の責任になる以上、その分、勉強しなければいけないことも多いです。俳句や処世術などの知識も大事ですが、個人活動において一番大事なのは「自選」だと思います。作者の自分と選者の自分をどう付き合わせるか。俳句では、選者として名を売っている人たちの俳句は下手だという悪口があります。あくまで悪口なんですが、理由を考えると、自選をしていると、選者の基準より作者の創作過程を優先してしまうところがあります。自選するまで一年寝かす大家もいるらしいですが、そのくらいしないと、作者としての自分と選者としての自分を切り離すことがいかに難しいかがわかります。選者のプロですらそうなのですから、アマチュアの我々が苦労するのも当然のことです。

まとめ

 第二芸術について触れると、どうしても結社の悪口になってしまうので、お口直しに結社と個人活動のそれぞれの特徴を書きました。俳句を始めるにあたって、どのような道を行くか。俳句はほぼ独学ですが、結社にも腰掛けた経験を踏まえて、独学と仲間との勉学のそれぞれに良し悪しがあって、それをどう選ぶかという目安を書いています。
 もう一度要点を書くと、結社に所属する作者は結社のもので、個人活動の作者は作者個人のものです。それぞれが作者に責任が持ちます。それを良いか悪いかを判断するのは、作者の皆さん次第です。
 そして、これはあくまで俳句結社の話です。他のジャンルについては組織に属したことがないので全くわかりません。あと、関東地方の話です。所属誌にはネットを見て来た他地方の人もいましたが、あまり健康的な話は聞いたことがありません。上手いけれど、地元の会には合わなかったという伝聞を聞いています。

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