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碇シンジと同い年。

3月26日。長男が14歳になった。

父親である私と同じで早生まれの彼は、ついこの間まで、周りの男の子に比べて明らかに小柄な少年だった。相手に悪意は無くても、小学生同士の世界では、どこかで小柄なことをイジられて悔しい思いもしたのかもしれない。思えば私も小さかった。恥ずかしいとかイジられたとかっていう記憶は全く無いけれど、背の順はいつも前から一、二番目で、クラスメイトと並ぶと肩くらいまでしかなかった。当時の写真を今みても、やっぱり周りの奴らと一回り違った。それでも、走るのはそこそこ早かったし、身体能力で劣ってると思うことは無かった。周りのクラスメイトのしつけが出来ていて、意地悪なやつは皆無だったし、みんな優しかったんだと思う。そんな父譲りの小柄な彼も、もう母親の身長を超えて、それでいて顔は小顔のままの、スリムな小顔男子になった。4月には中3になる。

誕生日に何か欲しいものはあるか、と聞くと彼は「キャプチャーボードが欲しい」と言った。ゲームをどれだけ速くクリアできるか、タイムアタックの様子を動画で配信して、クラスメイトとたのしんでいるらしい。キャプチャーボードが有れば今よりももっと鮮明な動画配信ができるんだそうだ。誕生日前だったが、欲しいなら少し早いけどプレゼントするよ、と、秋葉原に一緒に買いに行った。価格コムで売れ筋の機器を調べ、いくつかレビューサイトを見て、父親の予習はバッチリだ。こういうとき往々にして、息子よりも私のほうが前のめりで、本人はいたって冷静だったりもする。駅に直結した大型の量販店で実機を見ながら、ちょっと高いけどこっちのほうが高性能かもしれないな、こっちにするか、なんて、父親主導で勝手に高価なものを選んだ。本人は遠慮がちに、そんなに変わらないから安いほうでもいいよ、と言ってた気もする。

昼はステーキでも食うか、と、牛のマークの老舗のステーキ屋のビルにスタスタと勝手に歩いていく父親。ランチビールを満足そうに飲み干し、母親にはワインをすすめたりする。そうそう、母親も同行してるのだが、はしゃぐ父親がせっかちに先に進むのを、後ろから冷静な息子と共にさらに冷静な母親が見守りながら着いていくのがウチのスタイルだ。困った父親だ。ひとしきり満足して赤ら顔で帰ってきた私と、平常心の息子の2人で、買ってきたキャプチャーボードを箱から出す。イマイチ接続がうまくいかなくて、マニュアルを見ながらケーブルを挿したり抜いたり、二人でワイワイやる。いや、ワイワイしてるのは一人だけかもしれない。「ノートパソコンの左側のUSBは給電にも対応してるけど、右側の方は違うみたいだから、左を使わないとダメだな」とか「やっぱりちょっと良いグラフィックボードを積んだノートにして良かったな」とか。やはり父親である私のほうがはしゃいでいる。

もちろん父親になるのは初めてなので、中学生男子と父親との関係においてどんな形がスタンダードなのか全くわからない。だが、少なくともウチはこんな感じだ。マイペースな父親のとなりで、母親と一緒に、ときには苦笑いしながら、『反面教師』という言葉を頭にぼんやり浮かべながら、でもいつか、そんな父親の無邪気な姿を息子にも微笑ましく思ってもらえる日がきたらいいなと勝手に思う。

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