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「いい仕事」をするということ。~西村佳哲『自分をいかして生きる』からのフロート思考2~【エセ・エッセイ012】

ここ数年、記念日や誕生日を祝うときは色んなホテルのビュッフェに行くのが楽しみになっている。美味しいものを食べたいが、あまりたくさんは食べられないという悲しい食いしん坊な自分にとって、少しずつたくさんの美味しいものが味わえるビュッフェスタイルはまさに至高のシステムだと思う。

しかも、さすがはホテルのシェフが作る料理は前菜からデザートまで最高で、目でも楽しいし味については言うまでもないものばかり。珍しい食材や手の込んだ料理もあってめくるめく幸福タイムが約束されている。
こういった一級のプロの仕事に感動を覚えるのは当然のことだろう。

でも今日の主役は、川崎のショッピングモールにある何の変哲もないビュッフェのお店である。記念日でもなんでもない普通の食事としてそのお店に入った私はそこで嬉しい不意をつかれ、いたく感動したのだった。

主なターゲット層はショッピングモールを訪れるファミリーなのだろう。メニューは目新しいものは特になく、ポテトやからあげなどのキッズも大好きな定番のものが並ぶ。

もちろん、ホテルほどのクオリティなど期待はしていない。お値段も相応だし。ただ、ビュッフェスタイルの選べる楽しみを味わいつつ、空腹を満たすべし、といったところ。

おや、しかしこのポテトの横のディップはなんだろう?変わった色をしたものとかたくさん種類があるな・・え、うま!なるほど、柴漬けが混ぜ込んであるマヨソースなのか・・そんなところから感動は始まった。

メニューは言い方は悪いが凡庸。しかし、ディップソースひとつ取っても、少しずつ工夫が凝らしてあったり、ポテトもからあげも、美味しい間に提供することにしてあるのか油が回りすぎたり時間を置きすぎてカスカスになっていることもなく、ひとつずつ、ちゃんと美味しい。

その他、スタッフの対応も見ていて気持ちよく、過度なサービスもないけれどとても居心地が良かった覚えがある。

ホテルビュッフェとはかけられる材料費や人件費、時間のかけ方なども全然違うだろう。でも、自分たちの出来る範囲でちゃんと手間をかけ、工夫をし、手を抜かずに美味しいものを提供している。

そのことにものすごく心が動かされたんである。

これがたぶん「いい仕事」に出会った時の感動なんだと思う。
西村さんはこう書いている。

でもその「いい仕事」とは、いったいどんなことを指すのか。これはなかなか言葉に出来ずにいた。今はこう思う。僕が魅力を感じ、満足を覚えるのは、「いる」感じがする仕事である。

西村佳哲「自分をいかして生きる」

仕事の向こうに人が「いる」感じがする仕事。
お店に来て食事をする誰かの満足を願う人の顔がその先に見えて、例えばそれがホテルの高級ビュッフェみたいに手が込んだことじゃなくても、こうして人を感動させることが出来るような仕事。

自分が「プロとして仕事ができるようになりたい」というような思いを漠然と心に持っていたとき、それはもしかしたらこういう「いい仕事」が出来る人間でいたい、だったんじゃないか。

そんな「いい仕事」を感じてもらえる向こうに自分がいられたら、それほど自分を誇らしく感じられることはないよな、と思う。

まだちょっと深く探れてない感じがあるけど、それはまたいずれ。

前回の記事はこちら

西村佳哲さんの本はこちら

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