「見せたくない背中」2022年6月23日の日記
・かなり遅れてオモコロ杯の結果が出た。不肖ながら私も審査いたしました。
・1000を超える応募があったの、素直に凄いと思う。「これからは動画の時代だ!」って10年以上言われているし、実際オモコロだって動画のほうが調子がいい気がするし、文字って時代遅れな雰囲気あるのに。
・時代の大きな流れとしてはそうだとしても、個人個人にとってはそうじゃないのかもしれない。自分の中のリズムをそのまま反映させることができるという意味で、記事の形式は今でも独特の価値があると思う。
・どの記事もそれぞれ面白さがあったので、ほんの一部しか取り上げられないし賞を差し上げることもできない歯がゆさを感じる。可能な限りちゃんと審査したつもりではあるけれども、こういうのってタイミングもあるから賞に届かなかった人もあんまり気にしないでほしいな。全員優勝! 私が銀紙で作ったティアラを差し上げます。
・人にオススメされて読んだ『AI法廷のハッカー弁護士』(竹田人造)すごく面白かった。
・効率化のため、法廷の裁判長がAIによって代理されるようになった近未来。プログラムの脆弱性を突いて勝訴しまくるハッカー弁護士のSF・法廷・ミステリ・コメディだ。痛快で直球なエンターテインメント劇で、ドラマ化したらかなり楽しそう。
・勝訴のためなら手段を選ばない傲岸不遜な悪徳弁護士の男。そんな弁護士を手玉に取る天才引きこもりギーク女。得意科目が「道徳」なお人好しの依頼人。仏頂面のライバル検事。そんなのもう……「好き」じゃないですか? 性格悪いやつばっか出てくるけどヘイトコントロールが巧妙なので好きになっちゃう。ミステリ部分もSFアイデア満載でかなりよかった。
・あとこれはもう言っちゃったほうがいいと思うけど、めちゃめちゃ逆転裁判だし、だいぶリーガル・ハイ。「実質○○」みたいな形容好きじゃないけど、こればっかりは言わないほうが失礼。そういう先行作品からの影響が全く隠されることなく出ていて、個人的にかなり気持ちよかったし格好いいと思った。「オレのオリジナル」をやりたがる自意識をこじらせた作家志望者が見せるのをなにより嫌がりそうな背中を全面開示してる。
・これでもし影響受けてなくて偶然だったら本当すみません。
・でもクセの強すぎるおもしろ証人も出てくるし、落ち着き払ってた敵が決定的な証拠で取り乱す様子なんか、ありありと頭にブレイクモーションが浮かぶ。「あー、ここで画面が白く点滅して効果音バーン!バーン!バーン!ってなるな」とか余計なことばっか考えながら読んでた。軽妙な会話には巧舟の遺伝子を感じる。めっちゃ「異議あり!」って叫ぶし。
・それでいてちゃんと要素を換骨奪胎してるから、先駆作の影響が瑕疵になっていない。っていうか換骨奪胎って字面だけ見ると怖っ。
・ビデオゲームには「ソウルライク」という言葉がある。これは『デモンズソウル』や『ダークソウル』というフロム・ソフトウェアのゲームシステムに直接的な影響を受けて制作された作品全般に使われる言葉で、他称されることもあれば製作者が自称していることもあり、基本的に揶揄のニュアンスはない。すでに方法論として確立されている。
・「ソウル」シリーズは日本の会社が出したゲームだけど、その影響を見える形で確立させた「ソウルライク」というスタイルの普及は海外ゲームが最初だった気がする。日本のエンタメは、そのスタイルの参照元をあえて明言しないことが多いようだけど、海外ではばんばん言っちゃう傾向なのかな? あ、でも異世界ものとかはスタイルを書き継ぐ感じがあるし、場合によるか。
・私ももっともっと影響を受けまくるべきだし恥ずかしがらずに影響を見せるべきだと思った。「今までにない」と「あれに似ている」は両立する。
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