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「無情湯」2019年10月23日の日記

・実家にいた頃は習慣で湯船に浸かっていたけど、ここ数年はずっとシャワーだけ浴びている。しかしシャワーと風呂は同じ身体洗浄カテゴリでもだいぶ趣が違う。なにより風呂は「いつまでもいてよい」。シャワーは、体を洗ったあとに何をするでもなくボーッとしていることができない。風邪引いちゃうからね。風呂は特に何をするでもなくお湯に浸っていられる。同じジャンルのようでいて、シャワーと風呂は松屋とルノアールくらい違うのだ。

・それで、今日は久しぶりに湯船に浸かろうかなと思って、湯沸かしボタンを押してリングフィットアドベンチャーをやって風呂場に行ったら何もかもが「無」だった。そして思い出した。風呂を沸かすには風呂に栓をしなければならないということに。

・世界のさまざまなルールをすぐ忘れてしまう。ものを手に入れるにはお金がいるとか、外に出るときは靴を履くとか。風呂を沸かすには栓をするとか。「電源プラグが抜けていませんか?」という注意書きは、私のようなやつのためにあるのだなと思う。何も溜まっていない湯船を目にしたときの脱力感や、押し寄せてくる「わかり」はかなり鮮烈だった。そうか~、栓、あっ、栓してな、あっあっ、そっか~、あ~、やった~、やったわ完全に、という「わかり」。

・それにしたって「無さ」にもほどがある。こっちは本当にお風呂に入りたかったんだから、少しくらいお湯が溜まってくれていてもいいじゃないか。ラーメンが作れるくらい残しておいてバチは当たらないだろう。でも物理学には情状酌量のベクトルとか働かないらしくて、湧き出した湯は全て排水穴に直行していった。実に面白い。情に棹させば流されるが、湯は情に流されない!

・仕方ないのでもう一回風呂を沸かしてさっき入ってきました(もちろん栓をした)。


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