見出し画像

「マッドサイエンティフィックコント」2022年8月6日の日記

https://stage.corich.jp/stage/167075

・明日のアー公演『カニカマの自己喪失』を吉祥寺シアターで観てきた。カニカマは全く出てこなかった。公演は7日(日曜)まで。当日券あるらしい。

・明日のアーはデイリーポータルZで記事書いたりしてる大北栄人さんが主催しているコントの集団です。いわゆるテレビのお笑い的なコントからはかけ離れているが全く演劇的でもない異様な公演をずっとやっている。

・観劇するたびに、大北さんはマッドサイエンティストだなと思う。非常に分析的なのに、初発の世界の認識そのものが狂っているようなところがある。エジソンとニコラ・テスラなら明らかにテスラ側だ。

・よく「ふざけたお笑いこそ常識人じゃないと作れない」という言説を見かける。大北さんの作品を観ると、本人の素直な現実認識があまり「常識的」ではないのかもしれないと感じる。一種のアウトサイダー・アート的なものがほとばしっている。一般人の生理感覚からかけ離れたところでフリとオチを展開しているので、おそらく「ベタ」を志向しているのであろうドタバタ劇にも異形感がつきまとっているのだ。

・それでも(私を含めて)毎回たくさんの観客が足を運んでしまうのは、この屈折した面白さを解読しようとする観劇中の脳に快感があるからだと思う。大北さんの作劇は、自分で「わかろうとする」こと自体が面白い。もちろん大北さん自身がこの「異形性」になんらかの形で自覚的であるからこそ、この無自覚なおもしろみを孕む作品群を生み出し続けているのだろう。


・今回の公演に通底しているテーマは「本物と偽物」だった。何かを模したり、何からしくあろうとする人たちがたくさん出てくる。そして全自動芝刈り機に撥ね殺される。起承転結とか関係ない。


・アーのコントに出てくる人たちはいつも(めちゃくちゃくだらないことで)慌てたり深刻に絶望してたりしながら騒いでいるのだが、それを観ていても全然エモーションの共鳴が起こらないのがすごいなと思う。「手に汗握る」の逆だ。不条理コントでも多くは「ツッコミ役」にあたるキャラクターが存在して観客のエモーションの橋渡しをするのにそういう役割の人がどこにもいない。全員なんか変だし、内部に思考や感情のある人間に見えない。何か前例のない異様な方法によってこの現実の似姿を映し出そうとしているのかもしれない。

ここから先は

735字 / 2画像

スキを押すとランダムな褒め言葉や絵が表示されます。