見出し画像

野党とプロトン

東京都議選は自民党と都民ファースト(以下都ファ)が痛手をこうむり、野党はそこそこ議席増。結果的に明確な勝者もおらず、中途半端に終わった。

希望が見えたのは共産と立憲民主党(以下立民)の戦い方だ。
期待されていたほどの勢力増にはならなかったが、互いに競合候補を立てず連携してまずまずの成果をあげた。

あとはこの秋の衆議院選挙で野党がどれだけ盛り返せるかだが、問題は野党の足並みだ。
立民の中には「共産党となんか連携はできない」「基本政策が違いすぎる」という理由で共産やれいわなどとの選挙協力を拒む議員がいるらしいが、まったくもって甘いとしか言えない。

そんな彼らには、どうかサイクルロードレースを観て、よくよく勉強してもらいたい。もちろん日本のではなく、本場ヨーロッパのトップクラスをである。

サイクルロードレースでは「プロトン」と呼ばれる集団が形成される。
先行して逃げる数人を付かず離れずで泳がせながらレースをコントロールし、最後はエースを中心にゴールを取りに行くメイン集団だ。そしてこのプロトンの中でも熾烈な勢力争いが繰り広げられる。
そこで見られるのが、利害や思惑を同じくするチーム同士の協調・共闘だ。
なにも八百長をするというわけではない。

チームを超えた共闘体制で最もわかりやすいのが、自分たちの総合成績を上げるために、選手・チーム同士が一緒になって総合首位の選手やチームを攻撃すること。
複数のチームが左右から総合リーダーチームのペースを乱し、交互に選手を飛び出させ、揺さぶりをかけて足を削る。
エース同士の集団では、2位以下の選手たちが後ろから様子を窺い、一人、また一人とアタックをかける。総合首位の選手は彼ら全員を追いかけて押さえなければならず、消耗を余儀なくされる。

あるいは先頭で逃げている選手たちが、プロトンに捕まらず逃げ切るために、違うチームでありながらまるで一つのチームであるかのように助け合って走る。
ロードレースを観ていると本当に様々な戦略や駆け引きが繰り返される。そこではお互いの目的を達するため、一時的に協力するところは協力し、最後の勝負どころでは再び敵として戦う。
そうしないと勝てないからだ。
力や予算に勝る強いチームを本気で倒そうと思うなら、目下の敵と手を組むのはレースの常套手段なのだ。

だからこそ野党、特に立民や国民民主党が「共産党とは組まない」などと明言し、彼らだけでの連立政権しか考えてない時点で、本気で総合首位を狙う気があるというのは疑わしい。
これに比べ「都議選で立民と連携し、自民党を追い詰めた。衆院選も共闘を成功させ、野党連合政権をつくる」と前向きな姿勢を見せている共産のほうが、よほど現実的に総合優勝(政権奪取)への意欲を見せ始めているんじゃないだろうか。

言いたいことはわかる。政権を取ってから集合離散や連立離脱したんでは、国民からの支持を失うというのも。
だけどそういうことは、ポディウム(表彰台)に上ってから考えればいい。
本当に総合を獲る気があるなら、中間ポイントを稼いだり逃げに乗せるだけで満足していいわけはない。

そもそも欧米、特にヨーロッパはその本性として基本的に狡猾で抜け目がなく、きわめて利己的だし、そういう土壌から生まれたのがサイクルロードレースである。目的のためには平気で敵と手を組むのは潔くないとか、理念が違うとか言ってるヒマがあったら、ゴールスプリントまでどうにかして自分たちがトレインを組めるようにするのが最優先ではないのか。

幸か不幸か自民党はコロナ禍でのオリンピック強行に対するむちゃくちゃさで国民からの非難にさらされている。野党はこの勝負どころの山岳でペースを上げ、一気に自公をふるい落としにかけられるか。
クイーンステージの衆院選はかなりの難コースになりそうな気がする。大勢の観客が沿道につめかける、見ごたえのある戦いを期待したい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?