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043 異世界落ちたら古龍と邪龍…

第二章 それでは そろそろ参りましょうか

043 新たな町へ向けて

「ダンナ、良い宿でしたね」

「ほんとでさぁ、まぁ 今回俺たちの出番は、ほとんどなかったですが」

「それって いいことですよ。だって ヒサさん、タケさんの出番があるってことは なにかトラブルが発生したって事ですもの」

「いや、まぁ そう言われちゃ、身も蓋もないんですがね」

「そう言えば、次の町は なんていうところなんでしょう」

「確かチッタ・センザノーミって町でさ」

「チッタの町とかって呼ばれてやすぜ」

(えっと、語感だけで言えば いい感じなんだけど…似てるよなぁ。イタリア語。でもなぁ それだと町の街って感じだしねぇ。そのままだと名もなき街って意味にも…うん、考えるの止め)

「どうかされやしたか?」

「うぅん、なんでも。それより もう少ししたらお昼にしましょうか」

「若、早くもフロリアさんの味が恋しくなりやしたか?」

「そうですね。美味しかったですもん」

「おれも、ぼちぼち腹が減ってきやした」

「じゃあ、もうしばらく進めば 確か休憩所があるはずなんで、そこで 馬も休めながら食事としやしょうか」

「ええ、そうしましょう」


「あそこですぜ、停留してる馬車は一台ですね。まだまだ余裕がありそうですから 俺たちも……あの樹のあたりに停めやしょう」

「りょーかい」

「どぅどぅ、よく頑張ってくれたね。ビアンカ、ニーロ。」
「いまお水あげるから、ちょっと待っててね」

ミキが 馬を馬車から放し水飲み場へ連れて行こうとしてると 先に停留していた馬車の方から鎧を着けた騎士のような男が二人馬車の方へ向かって行くのが目に入った。
「その方ら、この場所にて何をしておる」と騎士その一が 馬車の中のヒサ、タケに問う。

「はい、手前共は これよりこの休憩所にて 馬の水やりと わたしたちの食事をとろうかと思っておりますが」とヒサが答える。
「何か不都合でも?」

「うむ、出来れば 早急にこの場より立ち去るがよかろう」

「これよりこの休憩所は さる高貴なお方が停留するため、その休憩所となり申す。我らは その先触れである」

「はぁ、さる高貴なお方ね。そのお方がどんな高貴なお方か存じませんが、停留場の、つまりこの休憩所のルールは ご存じですよね?」

「むっ」騎士その一が、狼狽える。
「言わせておけば、下民が…」と騎士その二が 吠える。

「『この停車場においては、身分の上下貴賤は問わずと定める。互いに譲り合い、助け合い使用すべし。なおこの定めを破りしものは 如何様な者であっても罰っせられるものと知りおくべし』とあるのですが…いかがなものでしょう」

「ふん、たかが地方領主の定めたものごときで 我らを脅すと申すか」

「あっ、いや この決まりごとは…」

「ふん、もうよいわ。貴様ら さるお方が どれほど高貴なお方か知らぬと申したな?」と騎士その二がまたまた吠える。

「ならん、ならぬぞ。決して申してはならんそれ以上申すと言うなら、わしは そなたを斬らねばならぬ」騎士その一が必死に騎士その二を宥め それ以上話すことを止めようとする。そう言われても続けようとした 騎士その二を当身にて黙らせる。
「そちらの方々も なんとかこの場は 退いてもらえぬか。このとおりお頼み申す」と騎士その一が頭を下げる。

それを見たヒサ
「はぁ、そこまで言われちゃ 退かない訳にはいきませんがね。ですが…あなたがたが どなたをお待ちしていらっしゃるのか解りませんがね。この場にやってくる人みんなに そんなことを言ってる訳?」

「うむ、ほとんどの者は 我らの人数をみて立ち去っておるのだが…いまは たまたま交代でな。我らとしても街道を行き交う者どもといらぬ争いを起こしたくないでな。普段は、馬車3つ、騎士隊員二十名にてこの場で待機しておるのだ」

「てことは、なんですかい。そのお迎えするお相手ってのは…いつこの場を通るのか解らないということですかぃ…いやはやなんとも」

「うむ、これ以上は 話すことは出来ん。あと このものの暴言については 儂から詫びを申す。」

「あちらの御者の方にも すまなんだとお伝えしてくれぬか。そなたらの主であろう?」

「ほぉ~、それが解るのか」

「正直、このものがいらぬ事を告げて諍いとなった場合 おそらく儂らでは 勝てぬ。騎士隊員全員がそろっておってもな。この場所から さらに進んだところに少し小高い丘になった場所があり申す。景色もよろしく昼をとるならばそちらの方が よかろう。近隣の者どももよく出かけておると聞く」

「へ~ぇ、あんた、なかなかいい人だな。あんたとは またゆっくり話してみたい」

「ヒサさん、タケさん。馬の方は 準備できましたよ。あとそちらの騎士の方。今回は 退きますが…その立て札を立てたお方が どなたかとっくとご覧になった方が 今後のためにもよろしいかと存じます」

「そんんじゃ まぁ 若「ダンナ」、行きましょうかね」


ミキたちご一行が、停車場件休憩所を立ち去ったあと、しばらくして交代要員たちも集まってきた頃

「おい、貴様 いい加減目を覚まさぬか」と騎士その一

「うっ、わたしは…そうだ あの下民どもめ」と騎士その二

「いい加減にせぬか、相手を知れ。もしお主が 斬りかかってでもいたら お主の首と胴は 永遠におさらばだったぞ」

「何をいうか。このロートルが…あのような愚民共の一人や二人、我らの手にかかれば…」

騎士二がそこまで言ったとき、騎士二の頭に大きな拳が飛んできた。
「たわけ!いつまで 身分至上主義の時代に縋っておる。我ら共和国も竜皇国に迎えられその一員となったのだ。いつまでも貴族主義、身分至上主義の考えのままでは この先生きていけぬぞ」

ちょうどその時交代から戻ってきた騎士仲間のひとりが
「副官どの!さきほど この場に立ち寄りましたものどもの…」
と告ようとしたのだが場の雰囲気を読んで黙ることにした。

「で、どうしたのだ」と交代から戻ってきた隊員に向けて質問する。

「は、小隊長どの。さきほど立ち寄りました馬車の一行なのですが…」

「おぉ、それなら 俺たちもすれ違ったぜ」
「ありゃぁ、随分と腕の立つやつらだな、俺なんざぶるってしまったぜ。馬車の中に二人いたが 中の二人、凄まじいほどの腕の持ち主と見た。けどよ あの御者やってた人物は わかんね。さっぱりだ」

「御者をしては おりましたが 彼の御者こそが 一行の主だそうで…」

「ひゅー、そいつぁおもしれぇ。出来る者が 出来ることをするってか」

「はっ!おそらく 皇都の方から参った者たちでしょう」

「しっかし いつになったら現れるんかね、皇都からの使者ってのは。えっと確か 子爵が二人、公爵閣下の護衛として…っておい さっきの一行」

「はっ、まさか」

「おいおい、やべぇことになっちまったかもしんねぇ」

などと大慌てになっておりますが…実際のところどうなのでしょう。話し的には ミキたちご一行を待っていたような気もするのですが…はてさて、このつづきどうなることやら(影)

044 疾風のように現れて・・・

「しっかし いつになったら現れるんかね、皇都からの使者ってのは。えっと確か 子爵が二人、公爵閣下の護衛として…っておい さっきの一行」

「はっ、まさか」

「おいおい、やべぇことになっちまったかもしんねぇ」

「ですが隊長、仮にも公爵ご一行が わずか二名ばかりの護衛を連れて領地の内情調査にやってくるものでしょうか」

「その二名が 問題なんだ。さっきの馬車の中の二人、俺から見りゃ底知れぬ強さを持っていると見た。爺さん、あんたは どう見たよ」

「はっ!わたしの見解に過ぎませぬが おそらく 我ら騎士隊全員でかかっても おそらく みな返り討ちでしょう」

「だよな、俺を含めて…」

「たくよぉ、うちのご領主さまも なんだって 出迎えに行けなんて命令を出したんだろうな。しかも出来れば チッタの町で 歓迎の宴を開きもてなすようにと。その間に 領地から新たに正規の部隊を向わせるだなんてよう」

「そうですな、しかも我が部隊と言えば、寄せ集め部隊と揶揄されておりますな」
「まるで何か…うーむ」

「おい爺さん、どうした」

「いえ、少しばかりキナ臭さを感じてしまいましてな」

「おう、かまやしねぇ。爺さんの思うところを言ってみな」

「おそらく 出迎えの我が部隊には いまだ 跳ねっ返りの…身分至上主義の者どもが半数近くを占めております、中には 竜皇国へ参入したことをいまだよく思っていない者どももおります故」

「おう、続けてみな」

「もしかすれば、その跳ねっ返りの者どもが なにか問題を起こしたとすれば…」

「すれば?」

「隊長、あなたもお人が悪うございますな。もう既にお気づきなのでしょう」

「まぁな。俺の考え過ぎならそれで良かったんだがな。爺さん、あんたまで そぉいうならちげぇねぇや」

「そうですな」

「これは 我が部隊の壊滅を狙ったものなのか、それとも…こっちの方は、考えたくもねぇが…竜皇国への決起反乱か」
「よし、引き上げだ。こんなお役目、やってられっか。」

「と、申しますと」

「おうよ、我ら第三騎士隊、二週にわたって皇都からの使者殿ご一行を待てど そのお姿未だ見えず、隊員たちの士気も下がり任務遂行に支障をきたし始めた故、いったん領都に戻りますってことで 帰るぜ」

と、そこまで隊長が言い終えたところに

「隊長さん、帰られちゃ困るんですよ」と騎士その二が、長剣を構えて 隊長に突きつける。

「おい、てめぇ いったいどういう了簡だ」

「おっと、そこのロートル。あんたも 動くんじゃねぇ」

「貴様、隊長に向って何をしておる」

「あぁ、やだやだ、これだから愚民共がのさばってる部隊に入るなんてのはごめん被ると言ったんだがなぁ」

「てめぇ、自分が 何やってるのか解ってんだろうな」

「あん?ここで 成り上がり者の騎士隊長殿とロートルの副官の一人や二人、始末したところで なーんも困ったりしねぇんだよ」

「なるほどのぉ、目的は この部隊の壊滅なんてもんじゃなく わしらを始末することにあるとな。よくもまぁ こんなつまらぬことを…」

「何言ってんだよ、このジジイが」

「てめぇらなんざぁ、ただのおまけよ。行きがけの駄賃ってやつさ」

「なるほどな、こういう筋書きか。出迎えにでた騎士隊、その中の隊員が 皇都からの使者に無礼を働きお手討ちに。隊を率いていた隊長及び副官は 当然任務に失敗して更迭。あわよくば 無礼を働いたのが 隊長の俺と副官である爺さんか。で、この筋書きにゃもう一つあって、皇都からの使者は無礼を働いた者によって 傷を負わされる、あるいは、お命まで」

「いずれにしても なんだ。竜皇国との仲は 最悪な状態になるってワケか」

「誰が、考えたかわかんねぇけどよ、この筋書き考えた奴ってのは まったくもって現実が見えてねぇな。竜皇国ってのはな、たかだか モンド・グラーノ領が喧嘩を売って勝てるような相手じゃねぇんだよ。おめぇも まんまと乗せられたってわけだ」
「どうも貴族主義、身分至上主義のやつらってぇのは 現実が見えてねぇもんが多すぎて困る。だいたいなぁ、彼の国…龍王国に仲間に入れてくれつって頼んだのは、前の国王さまだぜ。それを ちょっとばかし立ち直ったからってな、後足で砂かけるような真似、犬畜生にも劣るってもんよ。」

「隊長さんよぉ、言いたいことは それだけか」

「そうだなぁ、まぁ 何にしたって、おめぇはここで終わりだってことよ」

「なんだと?」

「周り、見てみな」

「おめぇの仲間な、全員倒れてるぜ」

「い・いつの間に?」

「だから 言わんこっちゃねぇ」

「よっ!あんた隊長さんだったんだなぁ」
「それと 爺さん。いいところ教えてくれて あんがとよ」

「何が起きたのか、解ってないようだな。あんた」と騎士その二に向けてタケが言う。

「どういうこだっ、これは一体全体どういうことなんだ!!」

「そうですね。あなたたち第三騎士隊?でしたっけ」と隊長さんの方を見て確認をとるミキ。

「あぁ」

「では、あなたたち第三騎士隊を装った盗賊団は、旅の行商人を襲い失敗、全員捕縛された、ってことでしょうか?」

「「!」」

「それで よろしいのか?」

「えぇ、わたくしどもは 皇都よりモンド・グラーノへ向けて 先々の町で行商を行っている者にございます。こちら 皇都よりの鑑札にてお確かめいただければと存じます。」
「この捕縛した盗賊の一味をお引き渡ししてもよろしいでしょうか?」

「あっ、あぁ。それで構わぬ」

「あと取り調べのおりには、皇都からの視察官殿にも立ち会っていただくようお願い出来ますでしょうか」

「そ・それは…」

「うむ、そちらもお引き受けしよう」

「その方が、お互いのためかと存じます。元・モンド・グラーノ共和国騎士爵ジラーノ・ギムレット殿、そして 元・モンド・グラーノ共和国グラーノ辺境泊サイラス・グラーノ殿」

「「知っておられたのか」」

「商人にとって 情報収集は必須ですので」


「此度の件、ほんとうに これで宜しかったので」とサイラス騎士隊長

「えぇ、旅に危険は つきものでございます、ただし冒険者では ありませんので 極力危険は排除せねばなりません。彼のものたちを あなた方の手に委ねるということを あなた様なら きちんと理解していただけると信じております」とミキが言う。

「さて ヒサさんや、タケさんや。ぼちぼち 参りましょう」


「いかがなされました、隊長」

「爺さん、いまは 普通に話してくれよ」

「では、サイラス坊、恐ろしいまでの手際の良さでしたな」

「あぁ、竜皇国には、エリステル陛下は別としてもあれほどまでの 使い手がいるとはな」

「穏便にすませて貰った、あれだけの人数を一瞬にして 捕縛してしまうとは。しかも 誰に気付かれることなく。斬って捨てるのは 簡単なんだがな、それでも 時間がかかる。そして 範囲攻撃魔法は 殲滅戦に用いることだけあって被害もまた それだけ大きい。そして 余計な者も呼び寄せる。俺も、多少は魔法を使うが あのレベルで魔法を使ってしまえるとは…ほんとにただの商人なのか?」

「先ほど 見させて貰った鑑札には、皇都『エチゴヤ商会』商会主ミキとあり申した」

「おい、エチゴヤっていやぁ、あのライト・エールのエチゴヤだぜ。」

「あと魔道具もですな」

「そして お供の二人は…ヒサにタケ。一流の中の一流。超一流ってやつじゃねぇか。傭兵グループ『雷鳴の響鬼』のリーダーとサブだぜ」

「爺さん、俺たちゃ薄皮一枚で助かったみてぇなもんだな」

「ほんとですわい」
二人してほっとして、ため息をつくのであった。


さて 次回は 何故ミキさまたちが 隊長と副隊長の危機に間に合ったのか?その舞台裏を明らかにするという話でございます、えっ ピンチに颯爽と駆け付けるのって ピンチに陥ったのがヒロインの時だけだって?まぁ そういうこともありますね(影)

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