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031 異世界落ちたら古龍と邪龍の…

31、32話を併合しました

第二章 それでは そろそろ参りましょうか

031 路線変更?

「ちょいと 聞いておくれよ、あたしゃ 今度という今度は町の守備隊のやつらに愛想を尽かしたよ」

「近くの宿で ならず者が暴れてるんで どうにかしてくれって言いに行ったんだよ
そしたら 最初は 場所は何処だ?何人ぐらいで暴れてるんだって すぐにでも駆け付けようとしてたのさ。ところが ベルの宿だって言ったとたん…いきなりだよ。いきなり ダメだ、行っても無駄だ。諦めろ、そのうちしたら帰るだろうとか言って。まったく動くそぶりもみせないんだよ」
「なんなんだよ、まったく。あんな軟弱なやつらに この町を任せてるって考えると腹が立つったらありゃしないよ」

(守備隊が動かない…初めは動こうとしてたってことは、腐ってはいないのでしょうか。でも ベルさんの宿だと聞いて動くのを止めた。もしかして 動けないのか?守備隊への命令権は 各町の代官にある…とするとやはり代官が、言い含めて守備隊を動かないようにしている?)などと考え込むミキ。

「まぁ そうお言いでないよ、守備隊の奴らも最初のうちは 駆け付けてきてくれてたじゃないさ。でも 何度か続くうちに…きっと何か事情があるんだよ」

「いずれにしても町の安全を守ってくれるはずの守備隊が動かないなんて…そんなことあっていいわけ?」

「さぁさぁ、この話は もうおしまい。考えても解らないことは ひとまずおいとく。それより さっきの奴らのことよ」

「あぁ、全員縛って、厩に投げ込んでおいたぞい」とマーフィ、イーサン、コンフィネルの爺さんズ。

「あの人たち、何か言いましたか?」

「いやいや、頭は お主に伸(の)されて気絶したまま。他のものたちは、あのなんだ、草縛り?とかの魔法で縛られて気絶。まだ何にも聞けとらんよ」

「そうですか、では もう少ししたら 尋問してみましょうか、誰に頼まれたのか」

「素直に話すじゃろうかの?」

「たぶん、話すんじゃないでしょうか…えぇ きっと誠心誠意(ちからづく)お願いすれば 話してくださいますよ」

「何か 違う意味のような気がするのじゃが」

「あはは」と笑ってごまかすミキである。


結果、悪漢どもは、素直に話してくれたようで

「はい、代官と代官の長男です」と言いながら その顔は 赤く晴れ上がり 身体中から冷や汗が…。

「で、その理由って言うのが…」

なんでも 代官の長男が 町へ出たとき ベルニーニが買い物をしている所を見かけたらしい。で、ベルニーニに 見とれていたその長男、運悪く 泥濘(ぬかるみ)に 足をとられて、ずっこけたそうで…それを 不憫に思ったベルニーニが 宿まで案内して汚れを落とせるよう手をさしのべたそうである。

「まぁ 普通、そこまで してもらったら勘違い野郎じゃなくても うっかり惚れてしまうわな。うちの誰かさんは、自己評価が低いのか 謙遜が過ぎるのか そんな間違い起こりそうにないけどな」というのは、町の調査から戻ってきて報告を済ませたヒサである。

「ほんと、ほんと。それで どれだけの麗しき淑女たちが 泣きを見ていることか」とタケ。

「えっと、つまり宿の襲撃は、オヤジの代官の命令もあるけど、その馬鹿息子のせいでもあるって理由(わけ)ですか」

「あぁ~、まぁ そうなるかな」

「それと もう一つ。こちらは ハッキリとした確証がないんだけどな…この町が 皇都への侵入を防ぐ最終防衛ラインだって話、覚えてるかい?」

「えぇ、町へ入るときに、『まぁ、この皇都側の壁は 万が一敵襲があったときに 皇都への賊の進行を防ぐ為、また遅らせる為もあるので この大きさなんですよ』って話ですよね」

「あ、あぁ。その通りなんだが…相変わらずすんげぇ記憶力だな」

「たいしたことありません。覚えるだけなら お猿にでも出来ます、なんてこと言ったら お猿さんに怒られますかね」

「まぁ、その『おさる』ってのが なんだかしらねぇけど。おっと話がそれてるな。でな、この町、つまりヴェスドラッヘの町を混乱させてしまえば 防衛力も下がろうってもんだろう?」

「まさか、そんなことを?」

「あぁ、これは 軍事力を使わないから金もさほどかからねぇ、おまけに長期的に仕掛けてくるもんだから気付いた時には…な。」

「なんてことを考えてるんでしょう。仕掛けてくる方は、経済的でいいかもしれませんが 仕掛けられてる方は?そして ヴェスドラッヘの町は どうなるっていうんですか」
言いながら、握った拳はぶるぶると震えており、周囲の温度が 下がっていく。

「言葉は、温和(おとな)しめだけど、ダンナ。かなり怒ってる」

「だな」

「いいでしょう、仕掛けられたままっていうのは 正直、面白いものじゃありません。ふっ・ふふ」

「こぇ~よ、ダンナ」
「だな」
「いや、止めてくれよ、アニキ」

そう言い合っている二人をあとに、集まってくれた皆が待っているであろう食堂へと向かうミキであった。


ミキたちは、調査して解ったことを 集まってくれた皆に話し代官に対して解任を訴える旨を説明した。また町長たちも 代官の館への訪問に同行することを快諾してくれた。

「ということで、決行は 明日のお昼前、解任要求は 町長(まちおさ)全員の署名と第三者の立ち会いのもとで成立します。あとは その署名を皇都の役人に手渡せば、いいだけです。今回この町のトップである代官が不正、また犯罪に荷担したことで皇都の役人への提出が必要になります。あとは 皇都の役人が来て取り調べを行うまで代官の身分は、更迭されることになり彼は 一切の命令・及び要求権を使えなくなります。」しかし、ミキの説明を受けた町長(まちおさ)たちの顔色はすぐれない。

「窮鼠猫きゅうそねこを噛むって言いますが、激高した代官が 何かをしでかすかもしれませんな」

「そうだなぁ、それに対しての対策は?」

「はい、ヒサさん、タケさん。よろしいですか?」

「「もちろんだ」」

「こちらのお二方は、元傭兵グループ『雷鳴の響鬼』のリーダとサブ・リーダーです。縁あってわたくしの護衛兼従業員をお引き受けくださっています」

「「「「「…」」」」」みなさん 口をあんぐりとしたまま 固まっちゃいましたね。そして 飛び上がって喜んだのは
「ただ者じゃぁ、ないって思ってたけど そっかそっか。あんたたち あの『雷鳴の響鬼』のお二人さんだったんだね。じゃぁ、代官とこのへなちょこ共くらいじゃ びくともしないねぇ。おまけに ミキちゃんは 魔法も使えるってことだし、うんうん」とこちらは上機嫌のロビーナである。

「あのぉ、わたしにサインをいただけませんか?」とは、町長の一人ノーザンである。

なるほど、ミキは知らなかったが 『雷鳴の響鬼』の名前は、ほんと皇国中にしれわたっているようである。ただ その評判が 見た目の凶悪さと一致せず二人は、何処へ行っても自由に行動できるのである。まぁ、弱きを助け強きをくじくヒーローの見た目が、見た目だけなら山賊ですら 逃げ出すような強面なのだからしかたがない。とはいえ、今の二人は きちんと身なりを整え、クラリッサ仕込みの礼儀作法を身につけているため初見では 解りにくいようである。

「じゃあ、今日は ご足労いただき本当にありがとうございました。では 明日もまた よろしくお願いしますね。」

「何言ってんだよぉ。ホントならあたしたちが さっさとやらなきゃいけなかったんだ。それに あんな証拠物件、あたしたちじゃ とうてい手に入れられないよ」

「「だな」」
「ロビーナの言う通りじゃて、歳だけくってなんの役にもたてんようじゃ町長失格じゃわい」

「そんなことない。そんなことないです。町長さんたちは、他に大切なお仕事がたくさんあります。そして この町が いままでこうして保っていたのも町長さんたちが 町のみんなを出来うる限り守っていたからです、すみません。でも 僕は 心からそう思っています」

「あぁ、まぁ とにかくじゃ 明日は がんばろうぞ!」

「「「「「「「「「おぉ!」」」」」」」」」


翌日、お昼前。ここは 件(くだん)の代官が住む館である。その前に集結した町長五人を含むミキ、ヒサ、タケ、そして真偽官の二人の十名である。

何事かと駆け付ける代官館(だいかんやかた)の門番と門番に呼ばれて出てきた おそらくは 代官館の執事。
「これはこれは、町長の皆さま方、今日は いったい如何様なご用件でしょう。それに 見慣れぬ方もいらっしゃいますな?」と、何気に ミキたちを窺(うかが)う執事。

「はい、今日はお代官様に折り入ってご相談がございまして立ち寄らせていただきました。お代官様は いらっしゃいますでしょうか?」

「しばし お待ちを。お代官様のご都合を確かめてまいりますので」


「なに?ヴェスドラッヘの町長たちが 館の前に?」

「はい、さようで。」

「して用向きは、なんと申しておる」

「はい、お代官様への相談事としか…」

「うーん、まぁ どうせ町の守備隊が動かなかったとか、治安が悪くなったとか そんなことであろうが……よし、通せ。そうじゃな…謁見の間に通せ」

代官は、謁見の間などと言ったがたかだか地方の町代官の館にそんなご立派なものがある訳もなくただの応接間である。


「さて 皆の者、おもてをあげい。ふむ 見知らぬ顔がおるが…そちは 何の権限があってこの場におるのじゃ?」

「はっ!お代官様、このものは これより 我らの相談事をお聞き届け頂く際の証人に ございまする」

「で、あるか。して そちらのさも凶悪そうな面構えの者どもは?」

「はっ!先のものの護衛にて…」

「…まぁ よかろう(何の用向きかは 解らぬがこの場には 私兵も忍ばせておる。仮に荒事になったとしても問題なかろう、あのような者二人でどうこうできる筈もなかろうて)」
「では、要件を聞こうかの?相談事などと申しておるが どうせ昨日の守備隊の怠慢などを訴えに来ただけであろう。どれ 言うてみるが良い」

「はっ、では お言葉に甘えまして…」
「その前に、お代官様にお尋ねしたいことが ございますのじゃ。およそ二年ほど前に あなたさまは、この町の代官として就任なされたわけですがの」

「うむ、二年も経つかの。その通りじゃ。そちも その場におったであろうが」

「はい、その通りでございますじゃ。その時にですな、お代官様は、代官として着任する旨を記した『辞令』を わたくしどもにお見せ頂いたか否やをお聞かせ願いたいのですじゃ」

(はっ、何を言い出すかと思えば そんな昔のことを蒸し返す…何故じゃ『辞令』なんぞ そんなものわしも見たことないわ)
「『辞令』のぉ、はて そのようなものをわしは そなたらに披露したかの。そもそも『辞令』とは 貴族であるわしに ありがたくも主君より預かり頂いたもの。それを 町長とは言え、一庶民であるそなたらに 見せる必要などありはせんのじゃ」

「さようで ございますか。いえ、皇都周辺の他の町や村では 代官として就任されるときに 我らのようなものにも就任の祝儀代わりとして(ここは、町長の作り話である)、お披露目いただけると聞き及びましてな」

「うむ、そうであったか。斯様なことが 祝儀代わりになるとは 安いものじゃの。まぁ よいわ。して そろそろ 本題に移らぬか」

「はっ!実を申しますと、お代官様には大変申し上げにくいことなのでありますが、昨日、わたくしめが代表をつとめております、中央区にて とある宿に 暴漢が押し入りまして その際、宿の備品等を破壊し、また当宿の女将に対して さっさと宿を畳んでしまえなどの暴言を吐き、幸いにしてこちらにおられる方々の協力を得まして取り押さえることが出来、宿および女将は 難を逃れることができもうした。この件につきまして その場におりました こちらの者が…名をサウラと申しますが、守備隊に危急の知らせを告げたにもかかわらず 一向に対処して頂けなかったのですじゃ」

「なんと、我が町の守備隊員にそのような不届き者がいると申すか!(なるほど、彼奴らめが失敗しおったか)、して その件の宿とは?」

「はい、ベルニーニと申す者がいとなんでおる宿にてございますじゃ。」

(おお、倅がもうしておった宿の女将の事じゃな、無礼にも一庶民の分際で我が倅の申し出を断りおったおなごのことじゃな)
「そうであったか、確か その宿においては 何度となく被害の届けが 守備隊の方に入っておるそうじゃの?その度に 守備隊員がかけつけておったと聞き及んでおるのじゃが、それが 昨日は 動かなかったということで 間違いないかの」

「いえ、昨日だけでは ありません。この三ヶ月ほどは、一度も守備隊が 来てくださることはございませんでした」

(それもその通りじゃ、何せ 我が倅の申し出を断ったのじゃ。思う存分 困ればよいのじゃ)

とことん腐りきった人物である。

(しかし あの馬鹿息子、いい加減諦めればよいものを、女将を困らせて その弱ったところにつけ込もうなど、まどろっこしい)

「さようか、では この件については守備隊にキツク申しておくことにする。じゃが その女将の方に問題はないのか?聞けば 身分あるものに交際を申し込まれたにもかかわらず、何の敬意をはらうこともなく断ったと聞いておるのじゃがの、どうせ その暴漢どももすげなくされた腹いせに押し入ったのではないのか。宿を営んでおると言えば聞こえは よいが、ふん、寂れ果てた場末の宿であろう」

ピキっ!その時、一瞬にしてその場の空気が凍てついた。そう 文字通り凍てついたのである。そして 代官の周りには 氷の結晶が…

イメージです。流水すら一瞬で凍りつく

「ダンナ!」、「若旦那、押さえてくだせぇ!」

「な・なんじゃ 何事じゃ、今すぐそこな無礼者をつまみだせ」と 本人は言ってるつもりなのだが、モゴモゴ、モゴモゴとしか聞こえず、控えの間とこの部屋を繋ぐ扉も凍てついてしまい開くことはなかったのである。

「あぁ、やめやめ、もうね。ほんと呆れてしまってモノが言えないってこのことですよ。こんな茶番、いますぐ止めです。終わりです。」
「ヒサさん、タケさんもすみません。町長のみなさんも ほんとごめんなさい。でも もう耐えられない。なんですか!あの素晴らしい宿、そして女将の応対。美味しい料理。客の心に安らぎと癒しを与えるそんな素敵な宿に対して…場末の宿だって?寂れ果てた宿だって!」
「ふざけてんじゃないよ!全部、てめぇんところの馬鹿息子がやったことだろうが、あとあの押し入ったにぃちゃんたちな、全部、まるっと吐いてくれたよ、おい、代官!てめぇ 言うに事欠いて しらばっくれてんじゃないよ!てめぇとてめぇの倅が仕組んだことだろうよ。おまけにベルニーニさんところの支援金、ビタ一文、払ってないじゃないか。確かに距離はギリギリかもしれない。けどな、他の所へは 先代の代官がちゃんと支援を行ったって証拠もあがってんだよ!!」

「お・おまっ、おまっ に・にゃにを い・いいってる」

「ダンナ、そろそろ落ち着いてくだせぇ」

まわりの人もびっくりです。普段とても丁寧に穏やかに話をしているミキ。そのミキのべらんめぇな口調に一同ドンビキ!というよりも 女性陣は?あれ、なんか頬を染めてる?なんで、そして お爺ちゃんズは、あっ、こちらは 呆然としていますね。

「ふぅ~、さて代官さん、いや この代官を騙ったならず者ですか、あなたは知らなかったようですから教えて差し上げましょう。この皇国では、代官が新しく赴任・就任する場合『町長(まちおさ)や村長(むらおさ)が存在する町や村の場合 そこに赴任するものは、民との折衝をスムーズに行うためにその町、村の代表者及び代表者によって選出された数名のものに挨拶を行う際に必ず辞令書を持参、双方確認を行うこと』っていう皇国法があるんですよ。」

これには、代官(騙?)も驚いたようで、
「知らん、知らんぞ。わしは、そのような『辞令』など見たこともない。わしは、そのようなこと一切知らされておらん。貴様、そのような作り話をしおって わしを誑かすつもりじゃな」
「そもそも、なんの権限があって わしに対してそのような暴言を吐いておる、えぇい 曲者じゃ。であえ、であえ~!引っ捕らえろ……いや 斬ってもかまわん」

「やっぱ こうなったか」とヒサ
「やっぱ こうなったな」とタケ

と言う訳で、次回に続きます

032 これでいいの?

さて、いきなり代官(騙?)から 曲者呼ばわりされたミキたちご一行、どうなることやら。

「えぇい、者どもであぇ~、この町を治める代官に刃向うなど あってはならんことなのじゃ」

「ヒサさん、タケさん。手加減、忘れないでくださいね」

「ダンナ、それは こっちの台詞」

代官の呼び声に応えて 控えの間からよくぞこんなにと思うほど出るわ、出るわ。二十人ばかりの私兵が現れる。うまく 守備隊に似せているようだけれども、持っている剣が 守備隊に支給されているロングソードではなく 押し入った悪漢の頭が手にしていたものと同じ長剣である。ヨーロッパでは かつて「アーミング・ソード」と呼ばれていたものに類似している、このことからも代官及び代官の倅が一連のベルニーニの宿襲撃事件の黒幕と推測される。

「うっわぁ~、これって 一人一人相手してたら時間。かかりますよね」

「「だな」」

「じゃぁ、右半分は ヒサさんとタケさんに任せますね。僕は、左の五人と後方の五人を受け持ちます」

「あいよ」「任された」

「さて、あなた方のお相手は 僕ですよ~…ということで 草縛り×五」

「なっ!」「ぐぅえっ!」「な・なんだ」「うぉっ」「あぅ」それぞれ、違ったうめき声を上げながら剣を振るう間もなく ミキの魔法の餌食となるのであった。

「ふふ、あなたたちは?どうされますか。向かってきますか、それとも…」

「わ・わかった、俺は 投降する」

「ちょっ、そんなリーダー」

「ずるいっす、なら俺も投降します」
「おれもだ」
「あっしも投降しやす」

「おまえは、どうする?」

「はん、腰抜けが!前から てめぇのこと気にくわなかったんだよ」

「おい、おめぇらも そんな簡単に投降するなんて言ってんじゃねぇ」

「いや、だってなぁ」
「あぁ 別に俺たちあの代官に なんの恩義もねぇし」
「あぁ、それに 金だって払いが悪いし」
「という訳だ、やるなら一人で勝手にやってくれ」

「くそったれが!!」


「どう考えたって やつの勝てる相手じゃねぇ。それが わからねぇとは」

「そうなんすか?」

「おまっ!あの嬢「(ジロっ)」でねぇ お方を見てて何もわかんねぇってのか?」

「はぁ、おれは リーダーが投降したんで その方がいいんだろうなって」

「あっしは、あのわけわかんない魔法、ぶっぱなされたら おしめぇだなと」

「あれは、余裕ぶっこいてんじゃない。おれたちを 怪我させないようにって」

「あぁ、その通りだ、おそらく 本気でやりあったら おれなんざ 十秒ともたねぇよ」

「「「まさか」」」

「いや そのまさかだ。それに あっちの二人、あの戦闘スタイル。大剣に 戦斧。ありゃ たった四人で二千からなる領兵とやりあって 無傷で生き残り 依頼されていた領民すべてを守り抜いたっていう俺たち傭兵のなかじゃ伝説みたいな話になってるあの『雷鳴の響鬼』のリーダーとサブだ」

「なんで、そんな大物が」

「てか おれらって…」

「あぁ、あの三人に敵対した時点で詰んでたってわけっすか」

「そういうこった」

「あっちも終わったようだぜ」


「ここは、一つ他の方々のように 退いて頂けませんか」

「何言ってやがる、さっきの威勢はどうしたんでぇ、それに、俺がお前に負けるとでも?」

「勝つとか 負けるとか そういう問題じゃないんですが…」

「なぁ、俺は 魔法が使えねぇ、あんたは、魔法が使える。そこでだ、あんたは 魔法を使わずに俺と勝負するんだ、公平じゃねぇか?」

「はぁ~(なんで いつのまにか勝負って事になってるんでしょう、というかとても勝手な言いぐさですよね)」

「どしてぇ、魔法なしじゃ おれさまに 勝てっこねぇってか?」

「いいですよ、魔法なしで」

「そうこなくちゃだ」

「じゃ、このコインが下に落ちたら開始だ」といって コインを放り投げる傭兵その二

(この地面につくまでの時間が 長いんですよね、ってしかけてきましたか。っとコインが落ちました)
「縮地!」、そして 相手の懐まで接近、つぎの瞬間手にした扇で、相手の長剣をはたき落とし、そのまま扇を 相手の首筋へ。

「何した、おめぇ いま何やったんだ。この卑怯者が」

「よせ、見苦しいぞ。この人は お前に魔法をうってない、それは お前にもわかるだろう。負けたんだよ、お前は…」

「ということで、こっちも終わりました」

そこで、一人呆然としているのは 絶対勝てると踏んでいた自らの私兵としていた傭兵団が負けてしまい、あげく傭兵団の半分には 裏切られた形である。
「こ・こんな、こんな事ってあるか~!!いくら おまえたち傭兵に金を払ったと思ってるんだ、」

「そんな言うほど払ってねぇじゃないか」
「そうだ、そうだ」
「それにな、俺たちは 傭兵であって 別にあんたに対して 忠義立てする義理も恩もないんだよ」

「終わりだ、終わってしまった。何もかも…五年だぞ、五年もかけて準備をしてきたっていうのに」とブツブツと何かを呟いている代官(騙?)

「その話、あとでゆっくり話して貰うとしましょうか?」と、代官(騙?)を 縛ろうと縄に手をかけるミキ。

そのとき、代官館の入り口から声が
「おい、そこの愚民。オヤジから手を離せ!」

「おぉ、倅よ。待っておったぞ」

「何捕まってんだよ、オヤジ、そんな愚民に捕まってんじゃねぇよ」
「だいたい、お前ら 何の権限があってうちのオヤジを捕まえてんだ」

「おや、あなたが この代官の息子さん?あなたにも 暴行教唆と、強盗教唆と、その他諸々の疑惑がかけられています。あっ、まだありましたね。無銭飲食ですか」

「あぁ?何言ってやがるんだ」

「何も、何でも。あなたの罪状を読み上げているだけですが」

「だから 一体何の権限で俺たち親子を捕まえようとしてんだ」

「そうですね、一番大きな罪状は官職詐称の疑いでしょうか。あなたのお父上は、こちらにいらっしゃる町長の方々に、代官としての就任時に『辞令』を見せることなく就任しました。そして それは この皇国では立派な罪となります。またあなたのお父上は、本来、代官に任命される折に 受け取るはずである『辞令』を見たこともないと仰っておいでです。それは、お父上が言うまでもなく、実は代官職になかったということであり、これまで 代官の名を騙っていたと言うことに他なりません」

「また権限というのであれば…ヒサさん、タケさん。もういいでしょう」

「あれ やるのか?」「やっぱり?」

「はい」と言い笑顔でうなずくミキである。

「いきますよ~」

「こちらにおわすお二方をなんと心得る、このお二方は、陛下より任じられた皇帝勅使あらせられるぞ」

「こちらは、『ヒサ・ヴェルナール・フォン・ブラウン子爵』に、『タケ・マクシミリアン・フォン・メルバーン子爵』にあらせられる、お二方とも 勅使の証を!」

言われて、懐から『勅使の証』を取り出すヒサとタケである。

「控えなさい、代官(騙)及びその長男」

「う・う・うそだぁ~ そんなわけあるか 確かに わしは ご領主さまより ヴェスドラッヘの代官になれと命じられたのだ。わしは、けして騙りなどでない。」

「おやじ、嵌められたんだよ。あんたも俺も。」

「そんな、あの方が 何故わしを嵌める必要がある」

「あぁ 嵌められたって言うのは 違うかもな。知らなかったんだろうよ、皇国法ってのをな」

「何が、これで お前もゆくゆくは代官職に就けるだ。あんな馬鹿の口車に乗った俺の、俺たちが馬鹿をみただけじゃねぇか」

「ところで、あなたが先ほどから 仰ってる『ご領主さま』とやらは、いったいどちらのご領主さまなのでしょう」

「『モンド・グラーノ』のご領主さまである」

「そうなのですか、間違いありませんね。」

「だれが!自分の生まれ育った土地のご領主さまのことを忘れる訳なかろうが」

「では、ここに いまの発言に相違ないと言うことを 署名していただけませんか」

「ふん、そのようなことか」
おそらく、この時の代官(騙)もその長男も怒りと憤懣とで 冷静さを欠いていたのであろう。本来であるなら後々のことを考えて署名などしては、してはいけなかったのだが。

「真偽官殿、彼らのいまの発言に虚偽は?」

「うむ、虚偽はなかったと証言しよう」

「わたしも 虚偽はなかったと証言しよう」

「では、お二方も 申し訳ないですが こちらに署名をお願いします」

「「うむ」」

「ふぅ~、ようやくこの件も解決の目処がたちましたね」

「おいおい、なんだかわかんねぇが いつの間にやら あいつらから言質をとっちまったな」

「おめぇ、こえぇな」

「何を 仰ってるんでしょうかね」

「ねぇねぇ、もしかして もしかしなくてもだけど あの代官たち、解任されるの?」
「うむ、わしらも そこの所をしりたいぞ」
「最後の方は、うやむやのうちに片付いたようだからの」
「うむうむ」
「あと、お二方は、子爵さまであらせられたのですかの?」

「「あは、あっはっは」」
「逃げるぜ、タケ」
「あいよ、アニキ」

と、まぁ 快刀乱麻の如く片付いたわけでは ありませんでしたが ひとまずの事件解決なのでしょうか?あの代官(騙)とその長男は 近いうちに 皇都からの使者がやってくればそのまま司法によって裁かれることになるようです。

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