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ある救急医の備忘録 カルテ6 / 再会

いつもと変わらない夜。
いつもと同じように救急搬送依頼の電話が鳴る。

XX年YY月ZZ日 22時

「65歳 男性 窒息の方の受け入れをお願いします」
「心肺停止です」


15分後に到着し、救急隊から申し送りを受けた。
近くのいくつかの医療機関に受け入れを打診したものの 「対応困難」などの理由で断られ、当院搬入までに 1時間近く要していた。

状況は厳しかった。

友人と飲食店でお酒を飲みながら食事をしている時だった。
急に机に突っ伏した。
友人は酔って寝てしまったものだと思い、しばらく様子を見ていた。
20分くらい経過して呼びかけてみたが反応がなく、呼吸をしていないのに気づいた。
店員さんを呼び、救急要請してもらった という経過だった。

救急隊到着時は心肺停止状態だった。
呼吸を確保するために口を開けたところ、3~4㎝大のタコの刺身があった。
それを取り除いた後、救急搬送した。

当院到着時も心肺停止だった。
気管挿管して呼吸を確保し、胸骨圧迫を継続した。
ルートを確保して強心薬を投与した。
これを4回 繰り返した時、自己心拍の再開を認め、自発呼吸も再開した。

ただ経過時間が長かった。
血液検査ではかなりの異常値を認め、撮影した頭部CTでは脳に酸素が送られていなかったことによる障害を示唆していた。

今後の経過を家族と話し合うために 救急車に同乗してきた友人から話を聞いた。

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