OZ's BROADWAY THEATER ながぐつをはいたネコ

食わず嫌い。

これも照れなんでしょう。
30年以上お芝居に携わってきて、ミュージカルというものを観たことがありませんでした。

お誘いをいただいて、今日初観劇。

OZ's BROADWAY THEATER ながぐつをはいたネコ
10/23,2021

結論から言うと、楽しかったんですよ。
すごく純粋に。
今まで観なかった、むしろ避けてきたのは何だったんだろう。
食わず嫌いはただの思い込みだと今になって気づきました。

例えばね。

「君への熱い想い」「誰かのために」
僕には苦手なセリフだったりします。
僕が口にすると、間違いなくウソになっちゃいます。

もちろんお芝居は千差万別、僕が属する会話劇の世界でも数え切れないくらい、いろんなタイプのお芝居があります。
平然とこの種類のセリフを口にして、ちゃんと成立させるお芝居もあったりします。
僕にはムリ、というだけの話です。

恥ずかしいんですよ(笑)。照れ、ともいえます。
直接表現では全体のバランスを崩す、と計算することもあります。
自ずとできるだけ間接表現で、絡め手で、外堀を埋めるように伝えることになります。


でね。

今日拝見して。
初めてミュージカルというものを拝見して。

「君への熱い想い」「誰かのために」
これ、この僕の苦手なセリフ、避けて避けて避けてきたセリフ、思いが、ダイレクトに伝わってくる。

これはどうしたことだろう。


ごくごく単純な結論、芝居歴30年にしてミュージカル初心者の結論。なので理論や深い考察に基づいたものではありませんが。
「歌には、ダンスには、感情/感動をダイレクトに伝えるチカラがある」

ミュージカルと会話劇、どちらがいいという話では決してなく。

でも、観てる側をノーガードにしてビシビシとストレートを叩き込まれる感覚。
この楽しさは新鮮だったなあ。

常々「楽しむのはお客さん。僕らじゃない。」と言い続けてきました。
でも一方で「お客さんに楽しんで貰うためには僕らが楽しまないとね。」とも言い続けてます。
演者さんが楽しんでる姿が、何のフィルターも通さずに見える。

重ねて、「どちらがいい」ではありません。
見え方の違い。

でも少なくとも、この見え方を教えて貰ったのはすごく嬉しいこと。
誘ってくれた葵ひなたさんに感謝。見せてくれたOZのみなさんに感謝。

ここまでを総論として、ちょっとだけ各論に入ってもいいかなと。「上演時間は50分」と聞いて、「集中力を保って観るにはいいランタイムだな」というのと、「50分で果たしてどれくらいの中身があるんだろう」という二つの感想を抱いて本番に突入。
「観やすい」タイムであったのは確かです。
で、「中身」の懸念は杞憂でした。
「誰かのために」「愛情を」。
ごくごく簡単にまとめてしまうと、この二つに集約されるかな。
この二つを伝える手段としてスリムに絞っていくと、ちょうどこの尺で纏められるんだな、というシンプルイズベスト。
誰もが誰もを大切に思って、愛情を伝えるために何をするか、懸命に知恵を絞ったプロセス。
結果、誰もが(魔王はともかく)幸せにそれぞれの途を歩むことができる。

何て素敵なお話だろう。

この素敵なお話を、なんの飾りもなく届けてもらえたのは多分、歌やダンスの持つパワーなんだろうな。
演じられているキャラクターや、そのキャラクターを演じるキャストさんが羨ましくなるくらい、愛に溢れている。
愛のお零れを頂戴した、そんな感じ。

つまり、良い。
いつになく快い気持ちで帰りの電車に乗れた。

ご多分に漏れず、延期延期でようやくたどり着いた公演。
ここまでの心労は推し量るしかないのですが、僕たちが味わっているものと大きく違わないことと想像します。僕らがそうであるように、堪えて堪えて、今日にたどり着いた。
率直にそのことに敬意を表します。
たどり着いてこれを見せてくれたことに感謝します。

次は2月だそうです。
僕の本番と被りそうな危惧があるのですが、タイミングさえ合えば。

楽しみにしてます。
畑は違えど同じ表現者として、心から応援しています。

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