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2024年4月締め請求書のお手紙

私たちデザインモリコネクションは、陶磁器デザイナー・森正洋さんのデザインした製品の卸売を主な活動としていて、毎月、お取り扱いいただくショップのみなさまへ請求書をお送りしています。
ふと思い立って、2021年9月分から、請求書を発送する際、お手紙を同封するようにしました。その時々に思ったことなどを書いています。何を書いたか保管しておく意味もあり、noteに置いておきます。
請求書をデジタル化した方がいいんだろうけど、その場合、こういうお手紙をどういう形でつけたら良いのか、悩ましいところ。


4月13日(土)は久留米のシューズメーカー・ムーンスターの創業 150 周年記念イベント「オープンファクトリー」に物販テントのひとつとして参加しました。検品ではじかれた「ミニカップ」や、同じく検品ではじかれた「ユニバーサル多用深皿」の柄入りなどを販売し、たくさんの方に購入してもらえました。朝からとても賑わっていて、陶器市を思わせる忙しさでした。

妻には製品の選定から手伝ってもらい、当日も妻と子と一緒に行き、手伝ってもらいました。会場に後から来た子が、私が製品を販売している様子を見て「とと(父)、しょっきやさんだったの?」と言っていて、「そうだよ、食器屋さんなんだよ」と答えたのですが、後から思うと、「食器を売る仕事をしているんだよ」「食器を売ってみんなに喜んでもらっているんだよ」と言えば良かったかなと思いました。というのも、こどもに「仕事」「活動」について話す時に、「○○屋さん」のような「職業」という枠組みで伝えない方が良さそうだなと思っていて、それについて少し考えてみます。

そもそも自分自身がこどもの頃、「仕事」について「職業」という枠組みで考えていて、教育がそうなっているのか、そうなっているんでしょうけど、その弊害として、仕事について、いまある「職業」の中から選ぶ、という感覚で考えてしまうことがあるかと思います。「何の仕事をする?」という時に、まわりにある職業を見渡して「○○屋さんになる!」というように。それよりも、まず「自分は○○をしたい!」「自分は○○をするのが楽しい!」というものがあり、ではそれを仕事に落とし込んだら(他の人にも喜んでもらえる形にしたら)どうなる?という形が良さそうです。加えて、「相手の必要を満たすこと」「相手に喜んでもらうこと」が、対価を得るという意味での「仕事」の条件かと思われるので、そのへんも伝えたいところです。もちろん、言葉で伝えるより、そのように私自身が振る舞うのが、いちばん伝わりそうですが、なかなか難しいことでもあります。

ついでに言えば、「必要を満たす」「喜んでもらう」「課題を解決する」というあたりが「仕事」だとするならば、それらの行為とお金を交換するだけでなく、互いに必要を満たし合うこともあり得るなあと思います。単純な物々交換もあれば、課題解決の交換もある、というような。これは友達・仲間同士でいつもやっていることですね。先日、粗大ゴミに出すために、タンスを家の内から外へ運んだのですが、消防団の友達に手助けを頼みました。お礼にお金や商品券を渡すのは他人行儀だしそもそも受け取らない。それに、家ではあまり飲まないから酒もいらないと言っていたので、ちょっとしたお礼として飲み物2杯分のスタバのデジタルチケットをLINEで送りつつ、「恩に着る」、つまりいつか恩を返すね、と伝えています。

こどもから、なぜ仕事をするの?と訊かれたら、お金をもらうためだよ、お金がないと何も買えないでしょ、と答えてしまいそうになりますが、ぐっとこらえて、生きるための必要(衣食住プラスもろもろ)を満たすためだよ、と言えたら良いなと思います(あるいは、自分とみんなの「嬉しい・楽しい」を増やすためだよ、というのも「社会」と「幸福」という視点が入っているので良いかもしれません)。

自分で、自分が生きるための必要(衣食住プラスもろもろ)を満たせるのであれば、それは自分の必要を満たすための「仕事」だし、それができない時は、自分のできることで誰かの必要を満たしてお金をもらい、そのお金と引き換えに誰かに自分の必要を満たしてもらうことになり、それもまた「仕事」ということになります。さらに、仲間内で助け合うように、お金を介さずに必要を満たし合うこともできる。

必要を満たし合うのに、必ずしもお金は必要ではなくて、田内学「きみのお金は誰のため」にもあるように、お金は「仲間」以外の知らない人に自分の必要を満たしてもらうためのものなんですよね。お金を発明したことで、「人と人が必要を満たし合うこと」が仲間内の範囲を超えて拡大することができたので、その意味でお金は大事です。しかし、「人と人が必要を満たし合うこと」よりお金が大事ということでもない。そのあたりのことも、これから10年くらいかけて、こどもと一緒に考えていければ面白そうです。

2024.4.30

デザインモリコネクション有限会社
小田寛一郎

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