弁護士からクリエイターへ本当これだけは伝えたい-「無断での二次利用を防止したい」という思いを実現する方法

こんにちは。
デザイナー法務小僧運営弁護士の田島・宇根です。

デザイナー法務小僧では、Twitterもしているのですが(@designer_kozo)、二次利用に対するクリエイターの思いを綴った↓のnoteが昨日話題になっていましたね。

・・・この悩み、イラストレーターさんにとっては、あるあるですよね。
我々も、日々ご相談をお受けする中で、二次利用に関するご相談は多くお受けしているので、このイラストレーターさんの思いもよく分かりますし、クライアントもイラストレーターさんもお互いが気持ちよく仕事ができるような関係性を構築することは、そこで生まれる作品にとっても、とても望ましいことです。

しかし!
このクリエイターさんによる純粋な作品への思い、特に「無断の二次利用を止めてほしい」という思いは、法的な観点からみると、きちんと事前に合意しておかないと実現できないこととなります。

そこで、どうすれば、無断の二次利用を防げるのか、どんな合意をしておけばこの思いを法的に実現できるのか、を弁護士の目線から少し解説しようと思います。

※ここでいう「法的に実現する」とは、いざというときに法律の力を借りて、強制的に実現できる状態にするという意味です。国によって作られた法律が強い強制力を持つのは当たり前ですが、お互いが事前に約束をして「契約」したという状態にした場合にも、法律がその内容を強制的に実現できるように力を貸してくれるわけです。

1.例えばの事例問題

クライアントのウネ株式会社社長のウネさんがイラストレーターの田島さんのところにやってきました。

ウネ社長
「今度発売する新サービスに使うキャラクタービジュアルを制作してくれないかな? 今ってあらゆるサービスがコモディティ化している時代でしょ? だから、新サービスのイメージを担う魅力的なキャラクターを作って、新サービスを宣伝させることで差別化を図りたいんだ! そのキャラクターを、まずは新サービスのwebサイトやSNSに掲載する。人気がでたらキャラクターグッズを商品として販売するなんかもいいかもしれない。もちろんお金は払うよ! だけど、まだ会社にあまりお金がなくて、キャラクタービジュアルの制作にかけられるお金は10万円くらいしかないんだよね・・・。どうかな?」
イラストレーター田島
「(さすがに10万円は・・・。いつもはキャラクタービジュアル制作には30~40万円くらいもらっているしなぁ・・・。)キャラクタービジュアル制作もちろんできるよ!ただ、10万円はさすがに・・・。せめてその倍はもらわないと。」
ウネ社長
「そうだよね・・・。うーん、わかった。そこは社長である自分の給料を減らして、なんとか20万円だすよ!だからお願いできるかな?」
イラストレーター田島
「(20万円でも安いんだけどなぁ・・・。まあでもウネ社長とは長い付き合いだしなぁ・・・。もしキャラクターを二次利用するってなったらそこで追加でもらえばいいか。なんかグッズにするとか言ってるし、人気になること期待するか・・・。)しょうがないなぁ。ウネさんとは昔からの友達だし、ここは特別に20万円でやりましょう!その代わりキャラクターが大人気になったときは頼みますよ~期待してるからね!」
ウネ社長
「ありがとう!絶対人気キャラクターにするよ!じゃあ、よろしく~」

今回の制作業務にあたって、二人で交わした会話はこれだけです。
※()のところは心の声で表には出していないので、そのつもりで!

さて、ウネ株式会社の新サービスは、キャラクタービジュアルの可愛さも相まって爆発的にヒット!
ウネ株式会社は、ここが商機とばかりにキャラクタービジュアル自体を使用したグッズ販売をするようになりました。

ウネ社長
「(自分の給料下げてまで、このキャラクタービジュアルの制作費に回したんだから、その分、グッズ販売で回収しないと!)」

イケイケのウネ社長、このキャラクタービジュアルは自分がお金を払って制作してもらっているので、キャラクタービジュアルをどう使おうが自由だと考え、友達のイラストレーター田島さんには何も相談もしていませんし、もちろんさらにお金を払う必要があるとはこれっぽっちも考えていません。

ウネ株式会社従業員
「これってグッズ販売にあたってイラストレーターさんに連絡しなくていいんですか?」
ウネ社長
「大丈夫、大丈夫!最初にお願いしたときに、グッズ販売まで考えていることはイラストレーターにも伝えてるから!ばんばん売っていこ!」

後日、田島さんは、店頭で自分が制作したキャラクターのグッズが販売されているのを目撃しました。

イラストレーター田島
「(あれ、これってウネ社長にお願いされて作ったキャラクターじゃ? 二次利用するときは頼みますよ!って言ったのに、何の相談もなくグッズ化するなんて・・・)」

・  ・  ・

以上、どうでしょうか。
こんな簡単にキャラクターがヒットするわけないなどという声も聞こえてきそうですが、そこは置いておいて、よくありそうな事例ですよね…
実際にこれに似たようなケースのご相談というのはかなり多いです。

さて、この場合、
イラストレーターの田島さんはウネ株式会社社長のウネさんに対し文句を言うことはできるのでしょうか? また、ウネ株式会社は法的に問題のあることをしているのでしょうか?

2.答え

さあ、↑の問題に対する法的な答えはどのようになるでしょうか?
テレビであればCMに入りそうなところですが、すぐ答えにいきましょう。

イラストレーターの田島さんからすると、無断で二次利用をされたので、追加でフィーを請求するなりしたいところですよね。ましてや、友達価格で安いフィーで請け負っているので、何らかの請求をウネ株式会社にはしたいところです。「普通に考えて、自由に二次利用をしていいとは一言も言ってないし、二次利用の際に追加でお金がいるのは常識だろう」とイラストレーター田島さんは考えています。

しかし、
法的に言うと、田島さんはウネ株式会社に対し、二次利用をやめろとは言えないし、追加でお金の請求もできない可能性があります(ウネ株式会社は法的に何も問題のあることはしていない、という結論になる可能性があります)。

ここで可能性と書いたのは、最終的には裁判になって裁判官がどう判断するかわからない状態(勝つか負けるかわからない状態)であるということです。
なーんだ、裁判になったら、イラストレーター田島が勝つ場合もあるんじゃんと思うかもしれません。しかし、実際には、この「裁判になるまでどうなるかわからない」という状態が大問題なわけです。

裁判になったら勝つかもしれないし、負けるかもしれない、これはウネ社長もそう思っています。いやむしろウネ社長は、まず間違いなく勝てると思っているかもしれません。そうすると、裁判をせずにウネ社長に二次利用をやめさせることや、お金を払わせることはまず無理です。
こうなったら田島さんとしては、ウネ社長に二次利用をやめさせる、又は、追加でお金を払わせるためには裁判をするしかありません。
でも、裁判をするとなれば、時間がかかる、手間がかかる、弁護士に頼むならお金もかかる、そもそもそれだけ苦労しても勝てるかわからない、何なら負ける可能性だって十分にある。そんな精神的不安を抱えながら、日々の制作業務もこなさなければならない。裁判は相手が争うケースであれば、少なくとも半年から1年はかかります。

以上のように、「裁判になるまでどうなるかわからない」状態とは、こうしたリスクを残した状態であるということです。

では、イラストレーター田島さんとしては、このようなリスクを未然に防ぐためには何をしておけばよかったのでしょうか?

3.無断の二次利用を防ぐために

3-1.まず結論

まず端的に答えをいえば、「二次利用をする際には別途相談」、「二次利用は別料金」とお互いに事前に合意をして「契約」したという状態にしておけばよかったということになります。
事前に合意をして「契約」をしたという状態にしておけば、裁判になった場合に勝つか負けるか分からないなんて状態にはなりません。

ここを、詳しく見ていきたいと思います。

3-2.前提知識

まず、前提知識を少し整理したいと思います。

イラストレーターの制作物をクライアントに利用させるパターンとしては、法律的(著作権的)に見ると、①著作権の譲渡をするパターン、②著作権の譲渡をせずに利用許諾をするパターンの2種類があります。
この2パターンの特徴は、分かりやすく記載すると、以下のとおりとなります。

①の譲渡パターン:
イラストレーターに著作権は残らない。クライアントは原則二次利用し放題。
②の利用許諾パターン:
イラストレーターに著作権が残る。その著作権に基づき、クライアントの二次利用をコントロールできる(一次利用と二次利用の線引きの決定や、無断での二次利用をやめさせること、二次利用を認める代わりにお金をもらうこともできる)。

3-3.契約の重要性

さて、以上の前提知識をもとに、↑の事例問題をもう一度、見てみましょう。

イラストレーターの田島さんとウネ株式会社社長ウネさんは、「今度発売する新サービスに使うキャラクタービジュアルを20万円で制作する」以外の条件については、何ら合意していません(ウネ社長はグッズ販売の可能性を匂わせてはいますが、その点に対し、明確に合意してはいませんし、イラストレーター田島さんもいろいろと思ってはいるものの、それらを表には出さず、キャラクターが大人気になったときは頼みますよという曖昧な言い方しかしていません)。
つまり、ウネ株式会社がイラストレーター田島さんに制作してもらったキャラクタービジュアルを利用する方法として、①のパターンなのか、②のパターンなのか、②のパターンだったとしても一次利用として認めた範囲がどこまでか、明確に事前に合意していない(なんら契約していない)こととなります。
よって、イラストレーター田島さんの心の中の思いにもかかわらず、ウネ株式会社のグッズ販売という二次利用は法的に問題がない可能性があるということになります。
では、イラストレーター田島さんとしては、どうしておけばよかったのでしょうか?
繰り返しになりますが、それは、案件を受ける段階で、①のパターンなのか、②のパターンなのか、二次利用は自由にできるのか、一次利用と二次利用の線引きはどこか、二次利用にお金はかかるのか、など明確に合意をしておけばよかったということになるのです。

少し応用編
①のパターンなのか、②のパターンなのかなど、明確に合意していなくても、法的には、最終的にどのような内容の合意だったかを判断をする必要があります(最終的には裁判において裁判所が判断します)。
この場合は、例えば、「通常よりフィーが安いのであるから、著作権譲渡なわけない」、「依頼の際にグッズ販売についても話していたから、そのことは20万円に織り込み済みで田島さんも認識していたはずだ」など、問題となる取引にまつわる様々な事情を集めていくことにより、当事者間の合理的な意思を推測していき、どのような内容を合意していたのかを判断することとなります。

4.勉強した上で、もう一度、例えばの事例問題

さあ、ではイラストレーターの田島さんが、↑の勉強をしたという前提で、もう一度、例えばの事例問題を見てみましょう。

ウネ社長
「今度発売する新サービスに使うキャラクタービジュアルを制作してくれないかな?・・・(省略)・・・もちろんお金は払うよ!だけど、まだ会社にあまりお金がなくて、キャラクタービジュアルの制作にかけられるお金は10万円くらいしかないんだよね・・・。どうかな?」
イラストレーター田島
「(さすがに10万円は・・・。いつもはキャラクタービジュアル制作には30~40万円くらいもらっているしなぁ・・・。)キャラクタービジュアル制作もちろんできるよ!ただ、10万円はさすがに・・・。せめてその倍はもらわないと。」
ウネ社長
「そうだよね・・・。うーん、わかった。そこは社長である自分の給料を減らして、なんとか20万円だすよ!だからお願いできるかな?」
イラストレーター田島
「(20万円でも安いんだけどなぁ・・・。まあでもウネ株式会社社長とは長い付き合いだしなぁ・・・。もしキャラクターを二次利用するってなったらそこで追加でお金をもらえばいいか。なんかグッズにするとか言ってるし、人気になることを期待しよう。二次利用でお金をもらうには、著作権譲渡せずに利用許諾のパターンがいいな。)ウネさんとは昔からの友達だし、ここは特別に20万円でやりましょう!その代わりキャラクターを使用できるのは、新サービスのWebサイト、SNSにおいてだけで、それ以外に使う場合には、事前に僕に連絡してね。」
ウネ社長
「ありがとう!絶対人気キャラクターにするよ!じゃあ、よろしく~」

話合いの結果、キャラクタービジュアルの使用条件は以下のとおり、決まりました。
①20万円の対価で許諾する使用範囲は、新サービスのWebサイト、SNSにおいて使用するのみ。
②それ以外の使用をする場合(二次利用の場合)には、事前に著作権者であるイラストレーター田島の許諾を必要とし、その場合の追加費用(ロイヤリティ等)は都度、協議の上定める。
2人は、このやり取りを忘れないよう、後日、LINEのやり取りで上記条件を改めて確認しました。

さて、ウネ株式会社の新サービスは、キャラクタービジュアルの可愛さも相まって爆発的にヒット!
ウネ株式会社は、ここが商機とばかりにキャラクタービジュアル自体を使用したグッズ販売を検討するようになりました。

ウネ社長
「(田島さんと約束したし、グッズ展開するうえで相談に行かないとなぁ。)」

上記の事前に合意していた条件に沿って、ウネ社長はグッズ販売を始める前に事前にイラストレーター田島さんに相談し、追加の使用料(ロイヤリティ)等を協議の上、キャラクターのグッズ販売を開始しました。

ウネ株式会社従業員
「これってグッズ販売にあたってイラストレーターさんに連絡する必要あるんですか?勝手にやってもいいのでは?」
ウネ社長
「いやいや、二次利用の範囲については事前に合意してるんよ。にもかかわらず、グッズ販売なんか勝手にやったら、うちの契約違反やし、裁判起こされたら確実に負けてしまうよ笑。」

後日、田島さんは、店頭で自分が制作したキャラクターのグッズが販売されているのを目撃しました。

イラストレーター田島
「(お、一番目立つとこに置かれてる!このまま順調に人気になるといいなぁ!)」

・  ・  ・

いかがでしょうか?
このように、事前に少し話し合いをしておくだけ法的にどうなるかわからないという不安定な状態を無くし、トラブルの芽を摘むことができます。
ぜひこのnoteをご参考いただき、日々の制作活動にお役立ていただければと思います。

ちなみに、↑の使用条件に関する事前の合意は、万一裁判などになったときの証拠とするために形に残しておく必要があります。
もちろん一番いいのはきちんと契約書を作成しておくことですが、見積書等に記載して事前に合意したことがわかるようにしておくことなどでも最低限はクリアです。
このあたりの詳しいことや、その他事前に話し合っておきたい事項については、以下のnoteをご覧いただければと思います。

応用編
ここまで分かりやすさを重視し、①のパターンなのか、②のパターンなのかで区別し、②のパターンのみ無断の二次利用を防止できるかのような説明をしました。
しかし、厳密には、①のパターン(著作権譲渡のパターン)でも、話し合いで合意さえできれば、無断の二次利用を防止することはできます。
著作権譲渡をしてしまうともう何も言えないと思われている方が多いですが、著作権譲渡をする際に、「著作権譲渡はするけども、こういう使い方をするときは別途お金払ってね」、「こういう使い方はしないでね」、「勝手にほかの人に著作権の再譲渡とかしないでね」など条件をつけることはできます(ただし、この場合の効果は債権的効果しかなく、②のパターン(利用許諾のパターン)の効果(物権的効果)よりも弱くなります)。

5.少し宣伝

デザイナー法務小僧ではトラブル対応のほか、日々の制作活動・ビジネスに伴走する法務サービスもご提供しておりますので、良ければ、こちらもご覧いただけますと幸いです。


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