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No.1 映像と脳科学


映像言語構造の上では、映像作品の最小単位はショットであるとされています。しかし、物理的に「1コマ」という場合は、1フレームというのが最小単位です。これはアバウトに言うとインターレース方式では「30分の1秒」で、プログレッシブ方式では「60分の1秒」となるのですが、いずれにせよ、目の前の景色を完全に連続して撮影されるわけではなく、エジソンのキネトスコープの頃から一貫して、「欠落」はあるのです。
 私たちはこの「欠落」をほとんど意識せず、連続した動きとして映像をとらえます。それはなぜか。欠落は細かいから気づかないだけなのでしょうか。

「少しずつ動きの違う絵を順に見ると動いて見える」という事実は、19世紀には知られていました。そして当初の学説としては「残像現象だろう」とされました。太陽の光を見ると、目をそらしても瞼に光が残るアレです。しかし、映画館で見る場合、それは影なんですね。暗い場面もたくさんあるし、どうも残像というには根拠が薄いわけです。
 で、研究が進んで、今では「φ(ファイ)現象」と呼ばれ、画面が瞼に残るのではなく、欠落を脳が補完しているという考え方が主流です。

一方、ショットとショットがつながって、別の意味を生むというモンタージュは、「認知バイアスの一種」とされていて、これもまた脳科学的反応であるとされています。
 企画制作する立場からすると、「4K60pは滑らかだから使いたい」という程度の認識ですが、いつの日か、脳科学の正確なデータに基づく「映像学」が表現理論とともに体系化されるといいなあと願っています。(2023年7月3日)

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