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読後本のレビュー

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読んだ本の感想などを書いています。
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記事一覧

『社会を結びなおす』 (本田由紀著)を読んで

みなさん、現状の日本についてどの程度知っていますか? 毎日生活しているのだから「そりゃ、わかっているよ」と思っていることでしょう。LINEやYahoo!のネット記事をチェックしているよとか、毎日ちゃんと新聞を読んでいますよとか、さらに経済雑誌などを丹念に読んで社会や経済動向を把握しているんだからと。 また茫漠と資本主義社会であるとか民主主義だとかそんな風に習ったことを思い出すかもしれません。けれども、私たちの社会構造がどのように社会学的に理解されているのかを知っている人は少

【Bookレビュー】:Humankind

歴史学者ルドガー・ブレグマン著作の『Humankind』を読みましたので、レビューします。サブタイトルは「希望の歴史」です。その名の通り、ここには人類の希望がある気がします。私達が如何に思い込んでいるのかを顕にし、実際にはヒトは協力的という事が様々な例示により繰り返し示されています。 感想を一言でいえば、「素晴らしい!ヒトの可能性がここにはある!」です。 ブレグマンもインタビューでいっています。この本が示しているのは、 「ヒトは本質的に善である」という事です。 個人的に

本レビュー『考えるナメクジ』

松尾亮太先生の著作です。ナメクジ研究者がナメクジの生体を語ってくれています。特に学習ができるという点と脳について大変興味深い本です。 あ、写真は紫陽花です。ナメクジは関係ありませんw 脳のことについては私もそれなりに詳しいのですが、ナメクジは全くのノーマーク。エリック・カンデルがウミウシの研究で連合学習の研究をしていたので、ナメクジも類縁ということで、それなりに凄いだろうとは想像していましたが、どうやらナメクジの方が賢いようです。 例えば、ナメクジは二次条件づけができま

『漂流』を読んで

吉村昭氏著作の「漂流」を読みました。夜読み始めて寝ようと思ったのですが、続きが気になり、半ば徹夜で明け方までかかり、一気に読んでしまうほど、面白かったです!! それなので今日はちょっと寝不足です。 以下に感想を書こうと思いますのでネタバレに注意してください。 漂流は文字通りの漂流です。船で外海に出て、不運にも流されてしまった人々の物語です。四国は土佐の船乗り、長平なる人物主人公で、なんと実話を元にした小説なのです。雰囲気としては司馬遼太郎的な感じでしょうか。司馬氏に比較し

三国志:悪とは何か?

いやあ、泣く子も黙る武勇伝ですね。ここの所、三国志にハマっていました。ここから劉邦に戻るという可能性もありますが、ひとまず区切りになったので、感想やらを書きたいと思います。以下にネタバレが出てきますので、三国志を読みたい人や、ドラマなどを観たい人は遠慮してくださいね。 さて、言わずとしれた三国志。後漢の末期から、晋が成り立つまでのおよそ起源後200年くらいの話です。日本では卑弥呼が出てきた少し前くらいでしょうか。魏志倭人伝とは、この三国の魏の国の書物ですね。漢という国が乱れ

ガンディー:『獄中からの手紙』

皆さん、ガンディーの事はご存知ですよね。インド独立の立役者であり、弁護士にして宗教者であり、なにより政治的な指導者でした。有名なのは非暴力・不服従です。捉えようによってはとても消極的な手段にも聞こえるこの思想ですが、その本懐はどういう事なのか、気になったので上記の本を読んでみました。 塩の行進後、インド政府は大衆を動かすガンディーを危険な人物として逮捕し、ヤラヴァダ−中央刑務所に収監します。時は1930年でした。その時、獄中から彼の集道場(アーシュラム)の人々に宛てた手紙が

『土偶を読む』:土偶の解釈

竹倉史人氏の著作『土偶を読む』を読んだので感想を。 一部の考古学者や関係者からはどうも批判的に見られているこの新刊ですが、私個人としてはとても面白いなと思いました。下記にネタバレを含むので、未読の方はご遠慮くださいませ。 さて土偶ですが、私が最初に土偶に触れたのは、三内丸山遺跡のものだったと思います。2012年に青森にドライブにでかけた時、看板を見上げていたら、そこに三内丸山遺跡と出てきたんです。もともと予定はなかったのですが、せっかくだしと足を伸ばした三内丸山遺跡、この

『爆撃』 ハワード・ジン著

noteの記事の初っ端として、これが良い題材とは到底思えませんがw、今日は岩波ブックレットの本を一冊紹介します。それはハワード・ジンの『爆撃』です。  アメリカに盲目的に親和性を抱く日本人が多いのはなぜか、考えたことはありますか? 日本人の心の根底には戦争に負けたという感情が無意識に存在します。直接体験したわけではなくても、文化として戦中・戦後の人々の中から出てくるエートスによって今もそれを引きずっています。敗戦によって日本はガラッと状態を変えたわけですが、それは表向き。実

「僕らはそれに抵抗できない」

アダム・オルター著作の「僕らはそれに抵抗できない」を読みました。これを踏まえて「行動嗜癖」について書こうと思います。 行動嗜癖とはどんなものか分かりますか? 依存症とか中毒と言えば、少し理解が容易いでしょうか。薬や酒、タバコなど嗜好品など、快楽を生じさせる物質に対して依存が起こる事は広く知られています。しかし、現代では必ずしも、これらのような物質的なものだけでなく、特定のサービスや行動そのものに対しても、依存する事が分かっています。そのような特定の行動に依存する事を「行動嗜

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「人間とは何か」:マーク・トウェイン

「ハックルベリー・フィンの冒険」で有名なマーク・トウェイン。彼が晩年に書いた一片の小論である「人間とは何か」を読んで、なるほどとおもったので、感想を書いてみます。 哲学書でよくみかけるダイアローグ式の話になっていて、老人と若者がでてきます。若者が常識者として、老人が真理探求者としての役割をもち、老人が人間の心性について、根幹を説くという話になっています。命題を提示するだけではなく、数多くの例証が取り上げられ、命題に対する論拠としています。おおよそ、マーク・トウェインの思想と