#旅先での出会い

2020年7月6日 01:42

みんなで「書く」ことでつながったり、楽しい習慣になったらいいな。

そんな企画に賛同したメンバーで、毎週テーマに沿って投稿しています。
参加したい方がいましたらコメント欄にてご連絡ください。

今週のテーマは「 #旅先での出会い」です。

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コミュ障でも、旅はする。
ふれあい旅とか、地元の人の人情だとか、TVのロケみたいに「いやぁお母さん、僕ねぇ北海道から来たんですけど、このあたりって何が有名なんですか？」「お父さん、このしらす丼絶品ですねぇ！…え、これお父さんが朝獲ってきたの？」的なやりとりなんてできないけれど。
それでも、きれいな景色を見たり、おいしいものを食べたりしたい。
そして誰にも気を遣わず、自由気ままに動き回りたい。
だから、僕がどこかに遠出をする時は決まって一人だ。
いわゆるソロ充ってやつ。

2014年8月のお盆休み。僕は埼玉県秩父市にいた。
それは、その年の3月にノリと勢いで東京行きのチケットをポチってしまったことに端を発する。
僕は明確な目的を決める前に東京行きを決めてしまった。

さて、東京で何をしようか？

数多ある観光名所や名店を差し置いて、真っ先に浮かんだのは
「アニオタ×ソロ充×旅行＝聖地巡礼」という図式。
アニメの舞台になった場所に行って、その世界に浸りたいと、2011年に放送された「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」の舞台である秩父での聖地巡礼を目的の一つにした。

あの花-1

到着するやいなや、レンタサイクルで自転車を借りいざ散策。あの花クイズラリー開催中ということで、アニメには出てこない秩父のおすすめスポットなんかも回り、「あの花」の世界観を、秩父を満喫していた。

とある神社の前を撮影し、線路沿いを進んでいた時のこと。
突然おじさんが声をかけてきた。
「アニメのアレで回ってるのかい？」
「はい、そうです」
「ああ、そうかい。ここはSLが走るからそれもぜひ見てってね。あと15分後くらいかな。ここ通るから」
「そうなんですね、ありがとうございます」

それは知らない情報だった。白地に青赤緑のラインが入った西武鉄道の電車や話しかけられた線路沿いは作品中に出てくるが、SLはアニメには出てこない。

走るSLを見る機会なんて北海道ではないこと。少し気になったのでその辺で時間をつぶして15分後に戻ってることにした。

すると…

遠くから迫ってくる黒い塊。鉄道オタクではないものの、蒸気の音や迫力のある光景に感動を覚えた。教えてもらわなければ、知らずに終わっていた、いや、もっといえば、見ずに一生を終えていたかもしれない。
撮り鉄になるんじゃないかというくらいSLの雄姿を写真に収めた。

SLの余韻に浸りきってから巡礼を再開。グッズを買ったり、アニメのオープニングに出てきた公園に行ってみたりしていると、ポツポツと雨が降ってきた。次いつ来るか分からない場所。多少の雨なら続行しようと、雨の秩父をうろうろするも、雨足が次第に強くなってくる。身体も冷えてきてこれ以上はキツいと、一旦雨宿りをして雨が弱くなったら再開しようと、観光名所の一つで休憩処にもなっている「ほっとすぽっと秩父館」に緊急避難する。すでに全身はずぶ濡れ、髪の毛からは水滴がぽたぽたと滴っている。その光景を見た秩父館のおばちゃんが、
「どうしたの？そんなになって。傘持ってなかったのかい？」
と驚いた表情で話しかけてきた。
「いやぁ、自転車に乗ってたので。クイズラリーでまだ答えを探せてなくて、粘ってたらこうなっちゃいました…」
と申し訳なさそうに僕。
するとおばちゃんは、
「ちょっと待ってて」
と店の奥に行き、少しして戻ってきた手には、クイズラリーで正解するともらえる、非売品のクリアファイルが。こんなになるまで頑張ったんだから、答えなんていいからいいから、と言って僕に差し出してきた。
それと、手にはもう一つ。
水色のタオルだった。
「ほら、風邪ひく前にこれ使って髪の毛とか拭いて」

なんと優しい人なのだろうか。
コミュ障の僕には全く縁がないと思っていた旅のふれあいも、人情もそこにはあった。
この旅行の中でいちばん人の温かさに触れた瞬間だった。

この旅行中、あの花のグッズも含めて色々なものを買ったが、その時にもらった、名入れの、水色のタオルが最も大切なものになった。
今でもそのタオルは使うことなく大切にしまってある。

あの花-2