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宅配便ロッカー活用による処方薬受け渡しサービス普及への期待

新型コロナウイルス感染症によるパンデミック以降、感染防止のための接触回避を考慮した新たなサービスが広がりを見せている。今回は、コンビニエンスストア設置の宅配便ロッカーを活用した「処方箋医薬品受け渡しサービス」に注目した。

米国では、コロナ禍でのオンライン診療と併せてニーズが高まった「オンライン薬局」が急速に拡大している。アマゾン・ドット・コムの「Amazon Pharmacy」をはじめ、医療保険のユナイテッドヘルス・グループやウォルグリーン、CVS/ファーマシーといった大手ドラッグストアチェーンなどが、医薬品のオンライン受け付けから配送までを行うサービスを展開する。また、配車サービスやフードデリバリーを手掛けるウーバーも処方薬の配達サービスに参入している。

コンビニエンスストア内の宅配ロッカーを活用

日本では、宅配便ロッカーなどを活用した処方薬受け渡しサービスが動きだしている。現在、川崎市内のセブン-イレブン17店舗では、同店舗に設置されたオープン型宅配便ロッカー「PUDOステーション」で処方箋医薬品受け取りサービスが行われている。これは、セブン-イレブン・ジャパン、アインホールディングス、ヤマト運輸、Packcity Japanの連携により、2月14日から6月30日までの期間、実証実験となっている。

PUDOステーションを手掛けるPackcity Japanでは、薬局店舗内外に設置する「お薬ステーション」の本格運用に20201年から着手している。混雑した待合室などで待つことなく非対面・非接触で薬を受け取れ、24時間受け取りが可能な場所もある。該当薬局が近くの人は便利だろう。コンビニエンスストア内に設置の宅配ロッカーであれば、場所の便宜性や通勤・買い物途中など自分のタイミングで処方薬を取りにいけるために時間の有効活用にもつながり、さらにメリットがありそうだ。

今回の実証実験えは、薬剤師による服薬指導(対面もしくはオンライン)のあと、薬受取り場所として“セブン‐イレブン店舗の宅配便ロッカー“ を選択 、ヤマト運輸または薬局スタッフがロッカーに薬を納品する仕組みとなっている。

ファミリーマートでも日本調剤と連携し、横浜市内のファミリーマート4店舗で認証機能付き受け取りボックス「KEY STATION」を活用した処方薬受け渡しサービスの実証実験を2021年7月に行っていた。同4店舗でのサービスは終了しているが、同年12月から川崎市の武蔵小杉駅周辺の日本調剤6店舗が近隣の対象ファミリーマートと共にサービスを開始している。

本格的なオンライン服薬指導に向けてのルールづくりへ

また、政府の動きも気になるところだ。というのも、処方薬受け渡しのコンビニエンスストア内の宅配ロッカー活用については、薬局以外の「薬の販売や陳列、配置」を規制する医薬品医療機器等法の観点から、自治体でその見解が分かれていたという背景がある。これにより、宅配ロッカー利用の処方薬受け取りサービスに消極的だった自治体もある。

紹介した実証実験は、パンデミックをきっかけにした「オンライン服薬指導」が特例措置として可能になり、その後の規制緩和の議論の中で進んできたものだ。そして、今後、その実績や規制改革実施計画等を踏まえて、薬機法に基づくルール改正について議論されていく段階だ。

2022年1月、政府の規制改革推進会議は、医療・介護・感染症対策ワーキング・グループを開催し、この中で「コンビニエンスストアなどに設置している宅配ロッカーでの処方医薬品の受け取りに関し、厚生労働省がガイドラインなどで要件を明確に定義する」とした。品質管理や個人情報保護策など安心して便利なサービスが使えるように国全体での取り組みが進み、その普及の後押しとなるよう、今後に期待したい。

文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員

編集:タテグミ
記事内画像:セブン−イレブン・ジャパン 、2月14日のプレスリリース 
トップ画像:iStock.com/StudioU

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