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全国の「こども食堂」を地図で検索――共通フォーマット&オープンデータ化で活用促進

「こども食堂マップ」は、全国各地のこども食堂を検索できるウェブサービスだ。地図や地名から、こども食堂の数や場所、実施内容について調べることができる。こども食堂を必要とするすべての人々が容易にアクセスできて、さらに情報を充実させるために、データ収集の段階から工夫を凝らしている。

幼児から高齢者まですべての人々の居場所

こども食堂は、子どもが1人でも利用できる無料または低額の食堂で、社会福祉的な取り組みとして全国に広がっている。「みんなの食堂」「地域食堂」といった名称で呼ばれることもあり、運営者もNPO法人や地域のボランティアなどさまざまだ。ほとんどの食堂では幼児から高齢者まで幅広く受け入れており、子どもの居場所・多世代交流の場・地域コミュニティとしての役割を担っている

認定NPO法人の全国こども食堂支援センター・むすびえ(以下、むすびえ)では、こども食堂を必要とするすべての人が容易にアクセスできるように、2020年7月から全国のこども食堂の情報を「こども食堂マップ」として、教育系のITベンチャーのガッコムとともに開発・提供している。ただし、これまでは詳細な住所や実施情報まではカバーされておらず、食堂の有無を小学校区単位で示すのみだった。

3116か所のこども食堂を地図上に表示

2022年4月22日、こども食堂マップはリニューアルを行い、こども食堂を必要とする人々がよりアクセスしやすいように、こども食堂の名称、掲載元のリンク先、住所などの詳細情報を提供できるようになった。また同日、こども食堂マップ開発の関係者による記者発表会も開催された。

現在のこども食堂マップは2022年1月時点の情報に基づいており、むすびえが把握している全国6014か所のうち、半分強に当たる3116か所の位置を調べることができる。

地図や地名から検索対象の地域を絞り込む
こども食堂の数が多い地域ほど色が濃く表示される


地図は「都道府県」>「市区町村」>「学校区分」と細分化されていく


学校区レベルでは、こども食堂の位置(赤いごはんマーク)が表示される
青い学校マークの下に付いている数字は、その学区内にあるこども食堂の数


こども食堂マップの情報は、学校情報サービス「Gaccom(ガッコム)」の一部としても提供されており、学校の関連情報としても表示される(赤い囲み)。そのため、学校のことを調べる目的で訪れた人がこども食堂を知るきっかけにもなっている

各都道府県やその社会福祉協議会、地域ネットワーク団体がウェブで公開している情報が基になっており、市区町村以下や実施団体が独自に公開している情報は対象外としている。

これは、こども食堂によっては、さまざまな事情から場所や開催情報を広く公開していないケースもあることを考慮したため。

むすびえでは、公開しても問題ないとしてこども食堂マップへの登録を希望する場合は、都道府県に登録するように呼びかけている。

オープンデータ化でさらなる広がりを期待

こども食堂マップのリニューアルにあたり、こども食堂の活動や利用をさらに広げるために取り組んだのがオープンデータ化とそのための共通フォーマット策定だ。

こども食堂マップで利用しているこども食堂の情報を、オープンデータとして二次利用可能な形で提供できれば、第三者によるサービス化やそれによるこども食堂の認知・利用拡大、さらに情報の登録・更新のモチベーション向上も期待できる。

実際、こども食堂マップのためにデータを収集・整備する中で、形式が不統一で扱いづらかったり、古い情報のままだったりするケースが少なくなかったという。

オープンデータ化と共通フォーマット策定は、社会課題をテクノロジーで解決するシビックテックに取り組むアイパブリッシングが行い、「こども食堂の共通データフォーマット」としてテンプレートデータを公開している

データセットとして名称や住所、連絡先、参加条件、開催日時、緯度・経度、URLなど、約50項目が含まれている。再利用による広がりを考慮すると、コンピューターによる判読・処理のしやすさも重要だという。

すでに埼玉県が共通フォーマットを採用して情報提供しており、今後は全国の都道府県に対しても採用を働きかけていく。データの更新は年1回程度が目標だという。

データ活用のアイデアやスキルを持っている人には、ぜひこのこども食堂オープンデータを使った便利で画期的なサービスを考えてほしい。

共通データフォーマットに含まれる各項目の説明
共通データはExcelやCSVなどの一般的な形式で作成できる

「ぐるなび」や「食べログ」のような役割を

記者発表会では、むすびえ理事長の湯浅誠氏、ガッコム代表取締役社長の山田洋志氏、アイパブリッシング代表取締役の福島健一郎氏が参加し、それぞれが担当した取り組みについて説明を行った。

最後に、本稿のまとめとして、湯浅氏の言葉を紹介する。

デジタル庁が創設されるなど、さまざまな情報をデジタル化することで、市民の利便性や生活の質的向上に資するようにと唱えられている。

こども食堂の情報がデジタル化され、オープンデータとして二次利用可能な形で自治体に持ってもらえると、それを使った市民サービスでの活用が期待できる。

現在の6014か所のうちの3116か所という数字が増え、新しい情報に更新されるように、オープンデータ化を働きかけている。

「ぐるなび」や「食べログ」を見ると、一般的な飲食店は網羅されている。しかし、こども食堂がどこにあって、いつやっているのか、多くの人は知らない。今回の取り組みで、もう少し情報が行き渡るといいと思っている。

世の中のデジタル化は、公共施設から進められる。こども食堂は、公益性のある活動ではあるが、民間活動でもあるため優先されない。放っておくと後回しになりそうだが、行政としても忙しい。そこで、我々でもできることとしてデータフォーマットを策定した。

湯浅誠氏
(左上から時計回りに)むすびえの湯浅氏、ガッコムの山田氏、アイパブリッシングの福島氏


文:仲里 淳
インプレス・サステナブルラボ 研究員。フリーランスのライター/編集者として『インターネット白書』『SDGs白書』にも参加。

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