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TikTokでアマゾンの新型電動バンが話題――EVの新鋭・リヴィアンに特注した配送車が本格稼働

先ごろ、車のレビューで人気のTikTokのインフルエンサー、フォレスト・ジョーンズ氏がアマゾンの新型EDV(electric delivery van:電動バン)を紹介し、話題となっている。この電動バンは、米新興EVメーカー「リヴィアン・オートモーティブ(Rivian Automotive)」が、アマゾンと「安全性、持続可能性、快適性」をテーマに共同開発した配送専用車だ。本稿では、両社が手掛ける電動バンと、その背景となる環境問題への取り組みを取り上げる。

アマゾンは、2019年9月に環境団体のグローバル・オプティミズムと共同で、パリ協定の目標を10年前倒しで達成することを企業に奨励するイニシアチブ「The Climate Pledge(気候変動対策に関する誓約)」を立ち上げた。2040年までに炭素排出量の実質ゼロ化を目指すとし、同時に同社CEOのジェフ・ベゾス氏は、10万台の電動バンをリヴィアンに発注したとアナウンスしていた。アマゾンは、リヴィアンに巨額の資金出資もしている。

リヴィアンは、米国のミシガン州に本拠を置く2009年設立のスタートアップ企業で、テスラの次を狙うEVメーカーとして注目されている。リヴィアンCEOのR. J. スカリンジ氏は現在39歳で、MITで博士号を取得したエンジニアである。子どもの頃から自動車好きだったというスカリンジ氏は、地域の大気環境や気候変動などの課題に自動車が大きく関わっていることを知る中で、リヴィアン設立に至ったという。同社の公式サイトには「Vehicles made for the planet(地球のためにつくられたクルマ)」というキャッチコピーが掲げられている。同サイトの隅々から、製品づくりに対する姿勢もさることながら、社員の多様性や働き方といった環境づくりなど、企業としての在り方の中心に「持続可能性」があることが見て取れる。

同社が手掛けるEVは、ピックアップトラックやSUVといった車種だ。これらは、米国の乗用車市場で人気の高い車種で、市場の75%を占めるといわれている。一方、EVで先手を行くテスラは、スポーツカータイプに重きを置いているため、両社はEV市場を盛り上げる、いわゆる「良い競争業者」といった見方ができるだろう。

2030年までに10万台の電動バンを導入予定

さて、冒頭に記したティックトッカーがレビューし話題となった新型の電動バンは、まさにアマゾンが10万台発注したとするリヴィアンによるものだ。

@forrestsautoreviews

Amazon’s new EDV (electric delivery van) is pretty cool! Should Rivian make a consumer version of this van? 🤔🤷🏽‍♂️ #van #vanlife #amazon #EV #cartok #rivian #foryoupage #foryou #UltaBeautyForward

♬ Calm LoFi song(882353) - S_R

TikTok @forrestsautoreviews で「Amazon’s new EDV」と紹介され、「It’s Cool!(カッコいい)」など8000以上のコメントが付いた。さらに、9月27日現在で150万の「いいね」が付いている。

電動バンの特徴の一部を紹介する。

・大型画面を持つタブレット型ナビゲーションシステム
・運転席と助手席それぞれのエアコン、暖房、換気機能
・駐車スペースに止まると同時にスライドドアが開き、荷物に簡単にアクセス可能
・ドライバーが車両に接近したり離れたりする動きに合わせて、ドアが自動で施錠/開錠される機能
・自動緊急ブレーキ、歩行者警告、後方横断警告、車線維持支援、死角警告、車間距離制御装置などの高度運転支援システム(ADAS)を装備

アマゾンは、2019年のアナウンスから1年後の2020年に電動バンを早くも公開し、2021年にはプロトタイプ車を使用してのテスト配送を開始した。そして2022年7月、同年中にボルチモア、シカゴ、ダラス、サンディエゴ、シアトルなど全米の100以上の都市に数千台を導入するという、電動バンの本格稼働を発表した。10万台の導入については、2030年までに行うとしている。

アマゾンのYouTube公式チャンネル「Amazon News」でも、「Introducing the Amazon Rivian Van」と題した電動バンの紹介動画を公開している。

この動画によれば、43万個以上の荷物の配送と、延べ9万マイル(14万4000km)の走行テストなどを得て、さまざまな気候の中での車両性能、耐久性、安全性の微調整が行われたそうだ。ドライバーの快適性にもとことんこだわっており、そのためドライバーからのインプットおよびフィードバックも繰り返し行われたという。

また、アマゾンは「安全性、持続可能性、快適性」をテーマに開発されたこの電動バンの導入により、ラストワンマイル(物流拠点から顧客までの物流サービス)における脱炭素化に貢献し、「年間数百万トンの炭素」の排出を削減すると掲げる。

同社シニアプロダクトマネジャーのムスタファ・サミワラ氏は、「3年前には、このような何年にもわたる持続可能性を実現するレガシープロダクトが完成し、CO2削減を果たしながら荷物を配送できるようになるとは想像できていなかった。『The Climate Pledge』によって、さまざまな方法で企業が結びつくことで、大きな課題の解決が可能となる」と動画の中で告げている。

今後、環境問題をはじめとするSDGs達成に向けての企業のコラボレーションが、より活発になることを期待する。

文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員
トップ画像:Rivian Automotive

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